前回東南アジアに訪れた時
チェンマイまで一気に北上してアユタヤは寄らなかった
勿論アユタヤの名前頭に入っていたし
バンコクのすぐ近くにある事
そしてチェンマイに行く途中にある事は知っていた
ただ一つに
カンボジアで出会った人達が先にアユタヤへ行っていた
感想を聞くと勿論良かったけれども
先にカンボジアのアンコールワット群を見てしまうと
その感動は弱いかもしれないと言う
そしてもう一つに
その時一緒に廻っていた友達
その知り合いがチェンマイにいてそこを訪れる予定だった
それならば長くそこにゆっくりしたい
けれども想像以上にそれまでもゆっくりとしてしまっていて
アユタヤには寄らなかった
そうやって名前は沢山頭に入っていたアユタヤに今いる
そんなアユタヤは自分にとって
人にオススメできる最高にイイ街だった
街中にはいくつかの遺跡が
石が積み上げられ
赤茶に乾燥しきって崩れている
その丸裸な時間の経過を晒している
栄華を誇った数百年のアユタヤ王朝
最後にはビルマに攻め込まれ
徹底的に破壊された
けれどもその姿は一つも無残ではなく
街の長老のように
激動の時間を随分前に経験して
今ではその雰囲気に重みのある身体でずっしりと街角に座っている
そして街のみんなを受け止めている
見守っている
しかし
前回友達が言ったように
その始めのインパクトはどうしても
頭のイメージにはアンコールワット遺跡群が出てきてしまう
でも
それでも僕はこの街が好きだ
この街をオススメしたい
どこまでもケチな僕達は
アユタヤを歩いて観光しようとした
タイの真昼間
強い日差しに最近の運動不足
最終的に歩きつかれて
一つ辿り着かないまま帰った
街の中心部にあるいくつかの寺院を廻った
あとは街の道をひたすら歩き続けただけだ
でも
それを補って余りある出会いがあった
昨日まずアユタヤ駅を降りて宿を探した
まずは川を渡らなくてはいけない
その方へ歩いていくとバンコクでも見た
チェーンの大手ホテルが見えてくる
当然泊まれないがその入り口にホテル併設の観光ガイドの小屋がある
そしてそこで呼び止められる
その人は兎に角よく笑う
ひたすら喋って
ようやくこちらに質問する
僕等が簡単に返答するともう爆笑だ
それにつられて僕達も笑ってしまう
そしてまたずっと喋って
結局近くにある新しいゲストハウスに案内される
何故かハイテンションの彼が電話で
ディスカウント交渉までしてくれた
自分のホテルの仕事はほったらかしで
そして何と同じ所にその人も住んでいるらしい
その日の夜に
泊まっているゲストハウスに併設のカフェレストランへ向かう
バンコクで見つけた旅のスタイル
それをここでもしようと
そうやって尚吾とコーヒーを飲みに出かけたのだ
ゲストハウスに泊まる時に世話をしてくれたお兄さんがいる
笑顔を絶やさない人だ
僕達を見るとすぐに満面の笑みで寄ってくる
英語が余り得意ではないのか
そんなに話さない
一言二言
そして動作でイスを勧めてくれたりする
言葉がないだけに
その笑顔と動作がその人の人柄を前面に押し出している
尚吾はホットコーヒー
自分はアイスコーヒーを頼む
そうすると何も言っていないのに
また彼がやって来る
手には中国茶のポットに小さなグラス二つ
そして軽いピーナッツのおつまみ
そしてフリーフリー
と言って笑顔で僕達のテーブルに置いていく
最終的にお金を払う段階になって
ホットが30バーツ
アイスが35バーツ
の筈が60バーツになってしまった
今日街を観光する為に歩き出した
昨日のホテルの前を通る
そうするとハイテンションの彼がまた座っている
こちらを見つけるとまた大声で呼びかけてきて
こっちに来いと言われる
また爆笑の連続だ
橋を渡る為に歩き出す
その袂まで来た時
後ろから見覚えのあるトゥクトゥクがやってくる
ハイテンションの彼の所でいつも話を聞いていたトゥクトゥクだ
何処に行くんだ
じゃあトゥクトゥクで行こう
一日三人で何バーツでどうだ
でも歩いて行く事をやめないで行こうとすると
結局タダで橋を渡らせてくれる
道を歩いていると
新しいトゥクトゥクに出会う
真っ黒なサングラスをかけた不適な笑みを浮かべるオジサン
さっきの人と同じ事を言う
どこに行きたいのか
同じく断って歩き出す
そうすると何故かオジサンが前に立っている
一日ここらの寺院を見て何バーツ
そうやってここのトゥクトゥク乗りの基本なんだろう
今度は使い古された何枚かの寺院が印刷されたポストカードを見せてくる
またいる事にびっくりしながら
やはり断って前へ歩きだす
暫く歩くと不適な笑みを黒いサングラスの下に作っている
あのオジサンが現れる
今度もやっぱりポストカードを見せてくる
ヤスイ
を連呼してくる
余り真新しい情報は提供してこない
もう繰り返しだ
小手先なんて俺には必要ないんだと言わんばかりの
押しの一手
もう笑うしかない
笑いながらやっぱり断り
これならもう追いつけないだろう
そう思って片道三車線の道を反対側へ渡る
その目の前にあった遺跡を見る
先にはもっとメインのモノがある筈だ
簡単に見て前へ歩き出す
そしたらまたいた
あのオジサンが道端に座ってこっちを見ている
いや完全に待っている
反対車線まできちゃえば流石に大丈夫だろう
そうやってみんなで言い合いながら
期待に答えてくれた事に少し嬉しくなる
ただこのまま今日は終わってしまうんじゃないか
そういう恐怖感も少し頭をよぎる
その人とは結局別の場所でもう二回会った
笑顔で話した
街中で出会ったまた別のトゥクトゥクは
最初は同じように一日何バーツ
どんどんと値段は下がって
最終的に近くのゾウに乗れる所までタダという話になる
結局トゥクトゥクには一度も乗らず
ゾウに出会って
下ネタばかり話すのに何故か日本の首相の名前を中曽根から安倍まで言えるタイ人に
麻生と鳩山の名前を教えて
歩き続けてぐったりして
最後はフェリーに乗って宿の近くまで向かう
身体中ベトベトで
喉はからからで
お腹はぐぅぐぅで
屋台でパッタイを食べ
タイのクレープをデザートに
部屋に戻ろうとすると
そこに宿の人が出てくる
手には鍵を持っている
今泊まっている所は目の前で工事してるしうるさいだろうから
別の部屋を用意しといたよ
もうエキストラのベットも用意してあるし
カーペットと荷物だけもって移ってもいいよ
そこからの方が景色もいいし
その部屋にはいつ移ってもいいし
今の部屋の鍵はいつ返してくれてもいいから
今無理を言ってダブルの一部屋に三人で泊まっている
そうしたら宿の人が不憫に思ったのか
ベットのクッションを一つ丸ごと貸してくれたのだ
その上宿代をディスカウントしている
なのに今僕達には二部屋の鍵がある
何とも戸惑いながらシャワーを浴びて
すっきりとして一日の締めとして
昨日のカフェへと向かう
今日はどんなサービスが出るんだろうかね
そんな冗談をいいながら行った
そうやってアイスコーヒーを頼んだ
そうしたら
同じく中国茶にピーナッツ
暫くしたら笑顔と伴にポテトフライが出てきた
流石に申し訳なくて
むしろ気分もよくて
久々にビールを頼んでみる事に
三人で一リットル
久し振りに瓶ではなくドラフト
すぐに飲みきってしまうと
彼がやってきて
満面の笑みで
空のジョッキを持って
サーバーを指差しながら
フリーフリーワンモア
と言ってさらに一リットル注いで来る
何なんだ一体ここは
このカフェは
この街は
この時間三人から笑いが絶えなかった
こんな人達がいる
それって街にとって本当に財産だな
それだけで街の印象はがらっと変わってくる
いやそれを育んだこの街の魅力なんだろう
23:30閉店のカフェ
そのお兄さんは友達と楽しく飲み
僕達も空間の一角を共有してその時間を楽しみ
結局1時までいさせてくれた
笑顔でサンキューを言う彼に
そんなこっちのセリフです
そう思いながら軽い足取りで部屋に戻る
そしてもう1泊する事を心で考える
文ちゃん
磯ちゃん
アユタヤ最高だよ