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最初の出会い


[20100718]





いつもお世話になっているコーヒーショップとは別の場所で
海岸沿いの遊歩道が見渡せるテラス席に座って海を見ていた
時間は夕方だがまだ十分明るい
珍しく今日は風が吹いて外にいても心地が良い

このとても気持ち良い風が
久し振りにコーヒーでも飲みながら外を眺め
考え事でもしてみようという気にさせた


テーブルの上にはオマニコーヒーが
目の前には数枚のポストカード
横にはポケットサイズのイスラム教経典コーラン
























ホテルから歩いて行く場所といえばここら辺だとスークくらいしかない
昨日もスークに立ち寄って周辺を歩いてみた


20100718 (2)


裏道は強い太陽の光を思いっ切り反射する白壁にぎゅっと囲まれている
所々に砦の跡がせり出していたりする


20100718 (3)


珍しいのか、途中途中道行く人々に絡まれ
汗だくの手を握り合い、だらだらの服で抱き合ったりして
満身創痍になりながら帰路についた


その道すがら、ガラス張りで
本来僕には縁の無いような絨毯屋の前で、ふと足が止まった
入り口の外にポストカードが並んでいたのだ


20100718 (5)


日本へ送るポストカードを選ぼうと
よく観光地のお土産屋さんで見かける
そのくるくる回るラックを回していた


『結構いいのあるじゃないか』


ポストカード選びは意外と時間がかかる
送る相手を想像しながら、あーでもない、こーでもない
でもそれは楽しい時間でもある

そんな事をしているとついつい長居してしまって
何度も何度もラックを回転させてしまう



ラックの前のちょっとした段差に腰を掛けている男性が居た
始めは通行人がそこで少し休んでいるのかと思った

オマーンでよく見る光景だが、道端で数人が固まって話をしている
井戸端会議のような感じだが、日本と違うのは
それが全て男性であるという事


だが、店先に長く座っている彼はずっと独りで黙ってのんびりしていた
ここの店員だろうか
何となくこのまま無言で居続けるのもきまりが悪いと思い

「ポストカード一枚いくらですか?」

と聞いてみた
やはり店員だったみたいで

「1枚100バイサだよ」

何だか商売にはあまり力を入れていないのか
それとも何か他に大事な事柄があると言わんばかりの、
ポストカードの値段なんていくらでもいい、といったような、
ふわふわ飛んでいってしまいそうな返答だった


「思ってたよりも安いね
 すごくいいポストカード一杯あっていいよ!」

そう答えてからまた僕はラックをくるくると回し始めた

このまま会話が終わってしまうかと思っていた所に
意外にも彼がまた話し掛けてきた

「どこに送るんだい?」

「日本にいる友達に送るんだよ」

さっきの少し素っ気無い態度とは違って
僕に少しでも興味を持ってくれたようで
何だか嬉しくなった

きっとそれが返答に表れていたのかもしれない
それとも始めからこう聞くつもりだったのか
彼はその直後にこう聞いてきた

「彼?彼女?」


驚いて、彼の方に振り向いた
その時彼の顔を始めてじっくりと見たかもしれない

彼はトーブもオマーン帽も被っていない
でもあごひげをたらふく生やし、その目は優しく笑っていた


「『彼女』、だよ、、
 僕は日本を離れてから一年ちょっと経ったんだけど
 実はその間に色々とあってね、、」


自分でもびっくりするような返答をしていた
そうしたら彼は


「そうか
 実は僕もそういう事があってね、、」




気が付くと僕達は店先で一緒にオマニコーヒーを飲みながら話していた
目の前の海岸線を眺めながら
通りすがる人々を眺めながら













ジャヴィッドはインド西部のカシミール出身だった

カシミール地方といえば日本では
インドとパキスタンの領土問題で有名な場所だが
彼曰く、

「あそこは、ヘブンだよ」




彼は友達の絨毯屋さんを手伝う目的でオマーンにやってきた
その時、ずっと付き合っていた女性と離れる事になった

「離れてしまうのは、本当に難しい事だ」

二人は結局別れる事になってしまったのだという

「男は夢見がちで、女は現実的だ」

なんて彼が言い出した時などびっくりした
なんだか日本で友達と話しているみたいな錯角を覚えた

僕達は男女の難しさをひとしきり話すと
今度は人生観に話が移っていった

歳もお互いに近かった事もあって共感出来る所が多々あった
二人で「わかる!」、「そうそう!」なんて言い合った


場所や環境だけではない
やはり何か共通する人間的な部分が誰しもあるんだ
そう強く思うのと同時に一つの疑問がふと沸いた


彼はイスラム教徒なのではないか

僕はずっと宗教について知りたいという想いがあった
世界は日本で感じている以上に宗教間の溝が深い
と、言われているが、実際その距離感は人の思考にどれ程影響があるのか

こうやって沢山の事に共感できている
その中で、宗教はどこに存在しているのか

こうやってジャヴィッドとは共感できたからこそ
聞いてみたくなった事が沢山出てきた

「答えたくなければ答えなくてもいいから」

そう前置きしてイスラム教についての話を聞いた
彼はやはりイスラム教徒だった
そして彼に話を聞こうと思った僕の直感は正しかった










彼の出身地カシミール地方に住む人々の90%以上がイスラム教徒
だからこそヒンドゥーを国教とするインドと
イスラムを国教とするパキスンタンとの間で領土問題が発生している

そんな中で彼は生まれながらにしてイスラム教徒だった

彼は中学生くらいになるまでその事に疑問を持たなかった
一日五回の礼拝も昔から家族がやってきた事なので
日常の事として自分もやっていただけだった

ただそのうち、

「何で僕はこんな事をしているのか
 何故神はアッラーで、アッラーでしかあり得ないのか
 そうであるのに何故世界には数々の宗教が共存しているのか」

と思うようになっていったという
きっと反抗期のようなものだ


心理学的にもこれぐらいの年齢は
『自分とは何者なのか』というのを考え出す時期らしく
何事にも疑問を持ち始める

自分にもそんな経験があるだけに
それはまたしてもすごく共感出来るポイントだった


彼の中でこの疑問はどんどんと大きくなっていき
そうして彼はイスラム教から一旦離れ他宗教の事を勉強し始めたという

特にキリスト教にユダヤ教

大学での専攻も宗教学を専攻し
沢山の本を読んだという


そしてその後やはり彼は昔馴染みのイスラム教の良さを捉えて
イスラム教へと原点回帰し、今に至るという

結局同じ所に帰ってきた訳だが
彼の言い方を借りれば「前とは全く違う」という
他宗教を知った上での選択であるし
他宗教の存在やそれぞれの良さを認めた上でのイスラム教徒だ、と


この『選択』というのがきっと大きいんだと思う

生まれた頃から日常としてやってきた事と
目の前に選択肢が置かれて自らに課すのとでは










自分の深層心理の中に刷り込まれている数々の習慣に対して
完全なる客観性と批評を加えるのは殆ど不可能に近いけれども

それでもその努力をする、つまりその問題を
自分の目の前に引っ張り出す行為だけでも評価されるべきだし
大きな意味をもたらすと思う


その意味とは
選択肢を選択肢として捉えるという事

選択肢は本来、選べる事が出来るという意味において
対等な位置付けにあるべきだから


さあ、最寄の駅に着いて家に帰る
コンビニに寄ってジュースを買っていくか
バスに乗り継がずに歩いて帰ってみるか
友達に電話してみるか

一見全く同列に感じられないばらばらな選択肢達だけど
どれも選択として可能な事
この時、自分が絶対にしないだろう出来事も出そうと思えば出せる
それを言い出したらキリが無いから選択肢として出していないだけ
という訳ではない
考えに現れないという事は既にその時点で取捨選択がなされている
とも考えられる


『無限の可能性』というけれども、それと選択肢は違う
選択肢は可能性ではなくて実現性だ

目の前に現れた選択肢達は
内容の前に対等に「選択する」、「選択しない」
の二択の天秤に載せられているだけな筈












選択肢の捉え方が変われば
その命題に対する考え方も変わる


ジャヴィッドの宗教に対する熱はイスラム教に戻ってからも
収まっていないようだった

ユダヤにキリストにイスラム教の関係性
そして歴史を丁寧に教えてくれたあと
彼は僕に言った

「日本の宗教観はどう?」

僕は仏教と神道について少し語ったが
説明できているとは言い難かった

でも彼の好奇心は強いらしく
どんなに僕が迷いながらゆっくりと話しても
じっと待って話を待った

「僕は仏教にもすごく興味がある
 知っているかい?世界で一番教徒が多い宗教は仏教なんだ」

その話は本当かは知らないが
彼の好奇心は強かった


結局僕は店の中に通され
奥の事務所にまで通され
コーヒーを飲みながらあっという間に5時間は話していた




次の日も訪ねて僕達は話した

僕は尚吾に借りていた仏教の英訳本を渡した
彼は本当に嬉しそうに全てのページをコピーした
そして彼はお店の上にある自宅に案内してくれ
またコーヒーを飲みながらコーランを見せてくれた
そしていくつもあるコーランの中から小さめの物を僕に渡して

「是非、とって置いて下さい」

と、くれた






彼に一番聞いてみたかった事を
事務所に戻ってコーヒーを飲みながら聞いてみた

「あなたの日常の中に宗教はどれだけ関わっていますか?
 例えばちょっとした日常の中の選択
 今日はスーパーに買い物に行くかどうか
 友達と会うべきかどうか
 車を買うかどうか
 大学に行くかどうか
 彼女と結婚するかどうかまで」

彼は言った

「毎日、毎瞬間、いつもいつも考えている訳では勿論無いよ
 遣りたい事をその瞬間直感でやっているつもり
 そしてふと神に、アッラーに感謝するんだ
 生活は生活、その時にアッラーをいつも感じている訳ではない
 行動としては自分を信じてやっている」

僕の印象としては
彼の考え方、現実に対しての振舞い方は
宗教観に無頓着と言われる日本人
その中にいると自分でも思っている
そんな僕と殆ど変わらないような気がした

「一番大事なのは自分がどう生きたいか
 どの宗教も共通する部分がある
 宗教は中身というよりもまずは全体として
 ただ、どう生きるかの見本であるという事」

驚いた事に僕と同じような宗教に対する感覚を彼が持っていた
その事をイスラム教徒のジャヴィッドから聞くというのは
不思議と新しい事に気づかされたような気分になった






何時間も何時間も話をした
最後にお礼を言う

「沢山の時間を割いてもらって有難う
 とても為になった
 むしろ何でこんなにしてくれるんだい?
 大事なコーランまでくれるというのは」

僕はおぼろげに

「どういたしまして
 喜んで貰えるのが一番ですから」

なんていうような返答が返ってくるのを想像していたのだが
そうではなかった

「これが自分の役目だと思っているから
 自分が得てきた知識を伝える事は必要な事だ
 喜んで貰えたなら良かった
 僕もこうして伝える事が出来た事が嬉しい」

今まで長く宗教について話してきたけれども
不思議とこのセリフに一番宗教臭さを感じた


20100718 (4)




























ジャヴィッドと話した沢山の出来事が頭の中をぐるぐると回っていて
ぼーっと海を眺めている

飛んでいってしまいそうな意識を留めるかのように突然大音量で
一日五回の礼拝の前にモスクから流されるアザーンが流れてきた
あっという間に夜の暗闇はやってきた

僕は手紙をノートに挟んでたたみ、
代金を置いてコーランを持つ




中東にやってきた

強い宗教観をもったイメージの中東
触れた事の無い、ずっと知りたかった事の一つ、イスラム教
それを一カ国目、最初に出会った人にここまで教えてもらった

これに関しては確かに感謝してもいいかもしれない




『アッラーは唯一偉大である』

コーランの始めの文章を繰り返し流すアザーン




きっと僕はこれからも宗教をこれ以上自分には受けれ入れる事はないだろう
でも知るというのはそれとは違う

ジャヴィッドのように

もともとイスラム教徒であるのと
キリスト教を知った上でイスラム教を選択するという事



選択するという事
知るという事
共有するという事



20100718 (6)









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欠かせない


[20100716]




朝の寝起きは気分が良かった
音のしない静かな場所だったからよかったのだろうか
すぐに起き上がってコーヒーでも飲もうとロビーへ向かう

ロビーには笑顔を絶やさない
昨日と同じトーブを着たお兄さんが挨拶をしてくれる

朝八時

これでも久し振りの早起きで気持ちは良い具合に上り調子
太陽の光もしっかりとガラスからロビーに注いでくる




昨日、ビールもどきを買った売店へ向かう為に力強く扉の取っ手を掴む
さあ扉を動かそうとする時、
不穏な気配を感じてうきうきだった足が一瞬止まってしまう

ただ今日はそれに躊躇しないくらいの寝起きだったみたいで
一瞬の後に身体は力を押し出して扉を開いた






さっきの気配の正体が一気に身体を包み込む










アツイ!!









独りで叫んでいた

とんでも無い熱気が身体を包み込む
そこらじゅうから泥を投げつけられているみたいに
身体は一気にひるむ


まだ朝の八時、、

どんな太陽してるんだ、と見上げようとするが
もう顔を上げる事も難しい

海岸を横目に見ると、昨日見たキングの船が霞んで見える
砂が原因なのか暑さの陽炎の為なのか


20100716 (1)


でも、こんなんでへこたれてはこの先どうするっていうんだ
と、奮い立たせて何とか前を見るがなかなかしっかりと出来ない
ふらふらな身体に大きく揺れる視線
そんな中に突如人だかりを見つける


何かにすがりたかったのか
売店には行かずに、人だかりがある建物へと向かう

冷房を期待したのだがその建物はドアも窓も無かった
けれども日差しを避けられるだけ全然涼しく感じた
そして別のアツイ活気がそこにはあった

魚市場


20100716 (4)



中東の優等生と言われるオマーン

けれども昨日からホテル周辺で見かける人たちは
誰しも強気な顔立ちと屈強な身体という感じで
何だかイメージと違っていたのだが
どうやらその理由はこれだったようだ

沢山の海の男達が行き交っていた


20100716 (3)



市場という活気はやはり良い

のだが、すぐに喉の渇きを覚えて退散
当初の目的の売店へ向かう事に



日本で言うコンビニのような売店を
オマーンでは『コーヒーショップ』と呼ぶ


20100716 (6)


オマーンの国民的飲料である、コーヒーにサフラン等を入れるオマニコーヒーや
紅茶、食べ物にスナックに軽食も食べられる
ちょっとした市民の憩いの場所だ

僕が行った時も数人の男達が椅子に座ってサンドウィッチらしきを食べていた

まずコーヒーを頼む
それからお腹を満たそうと僕は目の前に座っている海の男に
今まさに出されたサンドウィッチらしきを指差し

「これは何?」

と聞いてみた

そしたら男は無表情な顔を全く変化させずに
おもむろにそれを掴むと無言で僕に差し出した


『やる』


と、



強気な顔立ちに屈強な身体の中で目が語っていた








戸惑いながらも受け取ると
同じ物がまた彼の前に置かれた

「僕達は二つずつ頼んでるから気にしないで食べなさい」

隣に座っている若干スリムな男が言ってくれた


二人共つなぎを着ていていかにも海の男という感じ
スリムな彼が、

この食べ物は『シャワルマ』という豆をすり潰して揚げた物で
中東では野菜と包んでよく食べられているんだ

という事を教えてくれた


20100716 (5)





お腹も満たされて宿に戻る

普通ならこれからさあ散歩だと行きたい所だが
なにせ、暑い

昨日ロビーのお兄さんに聞いた所によると
昼の一時から四時まではほぼ全ての店が閉まるという
活動するなら四時以降にしておきなさい、との事

この暑さなら、納得だ











ホテル内のパソコンを使ったり荷物の整理をしていたら
窓から差し込んでくる光が弱まってきた

早速近くにあるという『スーク』へ向かう
アラビア語で商店街を指す


20100716 (8)


商店街といってもどちらかというと
最近出来たショッピングモールのような出で立ちで
天井の装飾などはとても綺麗にされていた


20100716 (9)


物も沢山あり、恵まれている印象を持つ
中にはシルクロードの中継地点として発展した中東の象徴
ゴールドのお店もよく見かけた


20100716 (12)




そんな中にアバヤを並べたお店があると、つい立ち止まってしまう
そしてアバヤのお店が立ち並ぶ隣に必ずある対照的な色とりどりのお店


20100716 (10)


僕は知らなかったのだが、
どうやらあの真っ黒のアバヤの下で
みなこんな派手なドレスを着ているようなのだ


20100716 (11)


みんなではないかもしれないが注意深く見てみると
何度か黒いアバヤの袖の下に赤や黄色い色を覗かせている人を見かけた

何とも大変だ
こんなに暑いというのに重ね着とは、、









一通り回ると日も随分と弱まってきている
が、日本の真夏の昼間くらいの温度はありそうだ

まだ暑さに慣れてないようで身体はすっかり疲れている
もう帰ろうと海岸沿いの遊歩道を行く


昨日とは違って明るい海岸線
白い建物の背中に沢山のごつごつした岩山が見える


20100716 (2)


砂漠のアラビア半島
国土の殆どを砂漠気候に覆われているオマーンだが
オマーンらしい景色とは、実はこの灰色の山々である

そしてその山のてっぺんには所々に砦の跡
そして現役の砦が至る所にある


20100716 (7)




石油ルートの世界的に重要なポイント
いわゆる『湾岸』の出入り口、ホルムズ海峡を抱える場所

数々の事件に戦争を目の前にそして実際に通ってきたオマーン

中東の優等生と言われるまでの平和を勝ち得るには
やはりこういう物とは切り離せないのだろうか

そういう世界なのだろうか












と、考え出すも、まとまる様子も無く
冷房を求めてすぐに部屋へと戻った

一度体験してしまった冷房
とりあえずオマーンでの生活に冷房は欠かせないのは間違いないようだ





焦点の移り


[20100715]




外に飛び出すともう辺りは真っ暗
なのにやはりずしっとくる空気
すぐさま汗が肌を埋め尽くす

事前に調べた限りでは空港から市内まではタクシーしかない
そんなバカな話はないと思っていたが
既に暗いという事もあってそのままタクシーで

政府管轄なので値段表記も行き先によって明記してある
値段交渉も勿論そこには存在しない


懐かしいトヨタのカムリに乗り込む
だが、そのカムリは東南アジアで見てきた
年代物の角ばった輪郭ではなく流線型だ

中はしっかりと冷房が効いていて
ソファもどこも破れていないしクッションもふかふかだ

走り出すと心地良いリズムで振動がやってくる
日本の高速を思い出す
しっかりと真っ直ぐにならされたコンクリートの道
等間隔にやってくるオレンジ色の街灯

追い抜いたり追い抜かれたりする車
BMWを見た以外は大体が日本車のようだ

その奥に見える町並み
二三階建て以上の建物は見当たらない
ずっと平らな土地が続いている

夜のハイウェイ
たまに大人しい町並みを突然打ち破る大きな物体が
緑色にライトアップされたモスクが通り過ぎて行く







事前に調べていたホテルに泊まる

オマーンの物価は高い
宿も選択肢が少ない

独りになったばかりなので、始めに甘えちゃいけないと思い
周りにあるホテルも回ってみたがどこも同じ値段かそれ以上

仕方無く始めに行ったホテルへ


中は冷房がしっかりと効き
シングル部屋に入るとシャワートイレは当たり前
ガラスの付いた大きな机にテーブル、そしてテレビまで


20100715 (1)





落ち着くとまずいと感じて荷物を置き
すぐさまロビーに戻って受付に向かう
やはりトーブにオマーン帽を被った優しそうな男がこちらに笑顔を向ける
言い忘れたがタクシーの運転手もしっかりと同じ格好だった

今日一日何も食べてない事を思い出して
オマーン料理はどんなかを聞いてみた


「オマーン料理などというものは無い
 ここにあるのはアジア料理だ
 インドやトルコやオリエンタル、それらのミックスだよ」


そうか、全く新しい場所にやってきたという高揚感に隠れていたけれども
ここはそれでもアジアなのだ





すぐ近くに美味しい魚料理を食べさせてくれる所を紹介してくれた





20100715 (4)



絶対に高いけれども、一度それを聞いたら
欲求は止まる事を知らない

とりあえず行くだけ、、
となって、まあ5分後には僕はそのお店の席に座っていた

中東にやってきた
それを祝して今日はぱーっとやろう
そう言い聞かせてしまったら、余計にエスカレートしてしまうもので


僕は店の人にすぐ戻るから、と言い残して向かいの売店へ
自然とお酒を探している自分がいるのに気が付くが
そういえばここはイスラム圏ではないか

自分の行為に笑いそうになった時に
なんとビール瓶らしき物を発見
聞いてみるとまさに『ビールもどき』という事




瓶を持ちながら店を思い切りよく出た
どんどんほぐれていく緊張感を感じながら戻ると
トーブを着ていない三人組の男が隣のテーブル席に座っていた

自然と始まった会話
インドから出てきたという若者三人
僕がちょうど今日インドからやって来た事を伝えると
こちらのテーブルにやってきた

インドの南の方にあるキャラという町からやって来た彼等
自分達の町の良さを語る顔はすごく嬉しそうだ


20100715 (2)




やっぱり南インドも回りたかったな

そう思うのと同時に
近くの国と国はお互いに影響しあっているんだという事を強く感じた


日本に居る時
例えば東南アジアやインドの話は自然と入ってくる
身の回りにもよく人は居て触れる機会がある
けれども中東の話となるとどうしてもニュースからたまに入ってくるだけで
自ら求めていかないとなかなか入ってこない
この差はイメージを形作る時に大きく影響する

それは何も日本が閉鎖的と言っている訳ではない
距離的に近い、というのは重要な意味があるのだ、と


インド洋を渡ってきた僕が中東で始めて出会ったのがインド人であった事は
日本からはっきりと見える世界から離れて
その外側にある、また別の世界にやってきている事を如実に感じさせてくれた



僕のテーブルにお皿が次々にやってきた
その量は僕の想像を超えていた

バターライスにサラダに魚に

四人で一緒に食べてもいける量
頼む前に始めから出会ってたらよかったね
そんな事を言い合うも既に時遅し
彼らも同じものを別で頼んでいた

といっても大食いで昔は通っていたのだ
そんな僕が一日何も口にしていなかった
そして久し振りの魚を目の前にして後悔する訳が無い

キャラ出身の三人組が自分達のテーブルに戻ってから
僕は一心に食べ続け綺麗に食べあげた



20100715 (3)







大満足でシェフにお礼を言い三人に別れを告げ
目の前にある遊歩道を散歩する事にした

このエリアの名前の由来にもなっているコルニーシュ
アラビア語で海岸沿いを意味する
黒い海の上に大きな船が停泊している
キングの船だそうだ


20100715 (5)




タイルがしっかりと敷き詰められ
綺麗に湾曲した海岸線はオレンジ色の光に浮かび上がる
テーマパークのような装飾をされた街灯の下を
綺麗に手入れされた車がひっきりなしに行き交う
日本の横浜かどこかに戻ったかのような錯覚がする


20100715 (6)





向こうから三人組の背の高い男達がやってくる
みんな暗闇に浮かび上がる真っ白なトーブ
さっきの錯覚をおちょくるように
男達は当たり前のように僕に目もくれずすれ違う

彼等の後姿を追おうとおもむろに振り返ると
視界の端に大きな建物が入ってくる
白い壁に青い色
そこに細かい白い模様がびっしりと描かれている

モスクだ


20100715 (7)




無意識に足が向く




こんなにまじまじとアラビア文字を見たのは初めてかもしれない
よく欧米人が漢字を見て「beautiful!!」と言っているのを
半分共感しながらも、はっきりとその気持ちを理解していなかったが
残りの半分の気持ちを今感じた気がする

優れているとかいないとか
読解出来るとか出来ないとか
良い悪いとかではなくて

純粋に綺麗だと思った
見惚れてしまった




兎に角静けさと暑さが覆っていたコルニーシュに似つかわしくない
人々の囁き声が集まっているのに気が付いて視線を落とすと

モスクの前に沢山の人達がいる

白い塊とその隣にはそれに対をなすように黒い塊
白いトーブを着た男達とアバヤを着た女性達
二つは相容れない色の様にはっきりと場所を違えて集まっていた


20100715 (8)






ここは横浜でもインドでも無い

当たり前だけど中東のオマーンの首都マスカット




そういう実感が沸いてきた




幕開け

[20100715]







『デリー発シャルジャ経由マスカット行き』






並ぶ単語がもう心を躍らせる


デリーの空港で朝5時前の飛行機を待って出発
二時間弱のフライトなので急いで疲れを取る為に寝ようとする

と、僕の隣では既に愛二は目を瞑っていた




愛二はとりあえずトルコへ向かう
違うルートを選択した筈だったが彼の飛行機は

『デリー発シャルジャ経由イスタンブール行き』

飛行機のチケットを取ったタイミングも行き先もばらばらだったが、
何のイタズラかシャルジャまでの飛行機が一緒で、しかも隣だった


何だか決意の後だけに拍子抜け?
それとも次への興奮を共有できるから嬉しいか?

というのを感じる間も無く
無事に次の道に乗った安堵感とインドの疲れでころっと寝てしまった






振動で目が覚めると既に着陸態勢に入っていた
急いで窓の外を眺める

外は雲とは違う薄黄色で覆われていて何も見えない
それが砂だというのをすぐに理解するには
寝起きの僕の頭には少し時間が必要だった

色の濃淡の変化がこの飛行機が前に進んでいるのを伝えてくれる
たまにうっすらと淡い部分が光を伴う時がある
目を凝らせて見ればそこに可愛らしい四角い家々が

明らかに今まで見てきた景色とは違う


どうやら違いを感じる時はハッキリと見える必要は無いようだ






飛行機から降りて建物までのコンコースを渡る
密閉されている筈の空間なのにずしっとくる空気の重さを感じる
窓からは強い太陽の日差しが差し込んでくる


人々がいそいそとコンコースを歩いて行き
出口で沢山の人が係員の周りに集まっている

「トランジットの人はこちらです!」

大声で叫ぶ係員にどっと人々がなだれて行く


ここシャルジャは七つの首長国が集まったUAEの中の一つ
ドバイの隣の首長国である

最近日本でも話題になっている格安航空会社の総称LCC
今回僕達が利用したアラビア半島の一大LCC、Air Arabia の拠点で
沢山の人がここを経由してアラビア半島に散って行く

僕もフラフラしながらチケットを見せ
その流れに押し流される



行きかけてふと思い出す
愛二のイスタンブール行きの飛行機は半日後なので
彼は一度空港を出てドバイを見てくると言っていた

という事はこの流れには乗らずにイミグレーションに向かうという事で
という事はここでもしかして別れなのか?

行きかけて振り返ると愛二は違う方へ向かっている


急いで声を掛ける


「じゃあ、また」






たった一言

寝起きに慌しさ
いきなり襲われた暑さの火照り

別れは突然やってきて
そしてあっという間に通り過ぎていった


















変な緊張感のほぐれもあって、一度寝るスイッチが入ると止め処ない
マスカット行きの飛行機を待つ数時間もベンチでひたすら寝て待ち
飛行機の中も寝続けた

寝過ぎてぼーっとする頭



に、突然






「Hey, My Friend!!!」







大声で呼ばれてはっとする

僕はイミグレの列の先頭に立っていて
声のする方を見ると陽気に白い歯を見せる係員が
大きく手を僕の方に振っている

「welcome to Oman!」

耳にがんがん響いてくるどころか空港中に響くのではないかという声
でも不思議と嫌な感じがしない

彼がまさにネットで見たオマーンの男性が被るという
円柱形の刺繍が入ったその名もオマーン帽を被り
白いガウン、『トーブ』を着ていたからだろうか

意識と一緒に眠ってしまっていた期待が
むくむくと起き上がってくるのを感じる



「welcome to Oman!」

去り際にもう一度彼は言ったけれども
その言葉は僕の背中を追いかける形になった

僕の足取りはすごく軽く
飛び跳ねるように出口へ向かっていた




期待を胸に


[20100714]



やってきたチベット難民キャンプは
僕達には楽園のようだった


キャンプといっても町のようになっていて
入り口にはきちんとゲートが設けられ
『チベットコロニー』と書かれている


SDIM5473.jpg



町の周辺は壁で囲まれその内側は全く違う世界があった

地続きですぐ外には全くもってインドが広がっているというのに
あんな簡単な壁でこうまでハッキリと世界観が変わるなんて


SDIM5478.jpg




町として発展しているといっても
認められた空間が限定的にあるだけなのでさすがに宿の数も決まっている
選択肢は限られていて外の宿と比べると高い

他に選択肢は無いので
その中で清潔感のある所を選んで三人で泊まった



そこはもうホテルと呼べるような場所で
ロビーは広々としていてソファがありレストランも併設され
部屋には電話が付いていてルームサービスまで頼める

いくら選択肢が無かったといっても
なくなくそうしたという感じは全く無く

「まあ、しょうがないから、、ね、折角だし、、」

なんていう流れで、
段々と気持ちが、縛りを解いて大きく拡散していく


そして僕達はそこに理由をつけるように
インド最後というだけでなく
オッキーとの別れ、そして愛二との暫くの別れをする為に
ここでの時間を思いっ切り楽しむ事にしたのだ


SDIM5480.jpg





そう、実は僕はここデリーを最後に暫く愛二とルートを別にする

これが決まったのは一ヶ月半程前
まだインドに入国する前のネパールはカトマンズに居た時だ

こんなに早く行き先が決まっている事は殆ど今まで無かった
しかも何が起こるかわからないインドでそれを決める
なんて思ってもいなかった

インドのビザは半年近く取れる
普通ならあくせくせずまったりじっくりとインドを回っていくものだが
僕は入国前にリミットを設定ししかもたったの一ヵ月半という期間だった

それをする事になったきっかけは愛二がアイルランドに飛ぶ決意をした事だ



僕達は貧乏旅だしなるべくなら出来る限り沢山の場所を通って行きたい
そう考えていた

勿論それは基本的な考え方だから
何か求めているモノがあれば例外もありうるし
それに飛び込む勇気や決意の方をこそ大事にすべきとも考えている

愛二はそんな決意をして随分と前にインドの後
飛行機でアイルランド入りする事を決めていた

今まで地道にバスなどでひたすら進んできた流れから急展開
一気にデリーからイスタンブール、そしてロンドン経由でアイルランドに入る
ユーラシア大陸をひとっ飛びする



さて僕はどうするか



三人で自由に好きな所を回りルートを決めていく、
のはいいのだが、さすがに全くこのままバラバラになってしまうのもおかしい
なるべくなら話し合って話し合って
そしてみんなでの旅を形作っていきたい

だって、それなら最初から独りでよかったのだ

なのだからせめてルートについても愛二が決めた期間分は
僕も予め予定を立ててみてお互いの歩む道を作り上げようと思ったのだ



愛二はアイルランドに少し滞在した後に
かっ飛ばしたトルコにヨーロッパを見る為に戻ってくるという
話し合いの結果、二ヶ月後にトルコのイスタンブールで落ち合い
共にヨーロッパを回ろうという事になった

目標はイスタンブールに八月の末に落ち合う

それをまず決めた



それまでどう進むか



自分の好奇心と向き合う
三人で向き合っている時とはまた違う
いつも以上に内面との対話

行動する時に僕の中の好奇心が示す方向を見定め
自分自身で評価して決定まで下す

選択肢は必ず何個か用意されているはずだから
どれか一つを選ぶ為にいくつかは
僕が自分自身で出した選択肢のあらを探さなくてはならない

その行為こそ難しい

僕の今一番信じている筈の好奇心を少なからず否定するのだから




僕の目の前には大きく三つの選択肢が出された

一つはインドからパキスタン、イランと進んでトルコまで
地続きのユーラシア大陸を陸路でしっかりと進んで行く

一つは飛行機で中東まで飛び
アラビア半島を回りながら北上してトルコまで行く

一つはヨーロッパまで飛んでしまって
じっくりと回りながらトルコまで南下する




それぞれ僕の好奇心から生まれた選択肢

旅といえばやはり陸路じゃないか
地道になめるように国々を見て行きたい
影響し合っているおしくらまんじゅうのこの世界を感じる為には

いやいや僕の頭の中にまだまだ謎のベールに包まれているアラビア半島
その世界を素通りする訳にはいかない
知識の暗闇の部分に光をあてようとするのが今回の一つの目的な訳で

といっても思い切りも必要だ
今まで日本を出てきてからまだアジアという大きな枠の中にしかいない
様々な種類の文化を見たくて出てきたその求める心はもうはち切れそうだ





その中で僕が出した結論は

飛行機でデリーからオマーンのマスカットまで飛ぶという事




アラビア半島を回ってトルコまで
人生で初めてじっくりとイスラム文化圏に飛び込む
そして砂漠に灼熱の太陽





決まってしまえば、もうそれ以外あり得なかったというような安堵感
何故あそこまで考え込んでいたのか不思議なくらい


結局好奇心などは僕の心の中の衝動のようなもので
方向性というよりも力の大きさだけ持っている

好奇心に言葉を添えた時点でそれは理屈になってしまうのだ

考え方次第でどの出来事に遭遇したとしても
良くも悪くも捉えられる事を知っているのだから

その好奇心の大きさに見合った理屈を自分に与えてやればいい
言葉を添えてあげればいい
その為に言葉をこねて頭で考えればいい

そうすればその時の好奇心は満足してくれる
好奇心は期待に姿を変える





僕は中東の優等生といわれるオマーンに行く事にした




灰色に多い尽くされた町
黄色く広がる砂漠
巨大なモスク
男性の白いトーブ
女性の黒いアバヤ














タイへ向かうオッキー
アイルランドへ向かう愛二


翌朝みんながそれぞれの場所へ



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僕達はそれぞれの期待を胸に






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    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


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