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冷徹さ

[20100719]



オマーンに来てずっと脳裏を離れない絵がある


空港から今泊まっているホテルがあるコルニーシュまでやってくるタクシーの中
大きな幹線道路をすごいスピードで走る窓から見えた
夜の暗闇に、緑色に浮かび上がるドーム

時間にしたら一秒そこらにしかならないだろう
しかも100キロは出ていたタクシーからの眺めだから
しっかりと像を結んで見ていた訳ではない筈なのに
ずっと頭の中には静止したしっかりと輪郭を持ったモスクがある

右上の方に大きく光っていた満月に近い月もしっかりとある









既に四度夜をここで過ごした

物価が高いくせに
ただどこにも行かずに界隈をぶらぶらしただけだ
実は一番贅沢な過ごし方をしている

僕はそれでいいと既に腹をくくって荷仕度を済ませている
今日マスカット、オマーンを後にして
つい先日、急に全世界にその名を轟かせた隣国UAEのドバイへ向かう


うれしい偶然
ジャビットという友人と出会い
長く語り合い
人生で初めてコーランというものを直で手に取った
僕の好奇心は十分満足している


けど、

あの絵が頭から離れない

























最後の朝がやってきた



朝が苦手で、目覚ましがなかなか通用しない
そんな僕は、今日はしっかりと起きた


昨晩何度もモスクに行く為のルートを反芻し
ドバイ行きのバスの時間の前にどれだけの時間が取れるか
モスクの閲覧可能時間
モスクまでの移動距離
バス停までの移動時間

この時間までに起きないと不可能になる
そんなデットラインを考えるのではなく
ただ、ひたすら好奇心を埋める為に頭を回転させ
起きた時に行けるか行けないかを判断しよう
その為の材料だけ、眠たい頭でもすぐに引き出せるように
情報を寝る前に頭の一番手前に置いておく

そうすると、不思議とちゃんと目が覚めた










荷物をロビーに預けて
朝食を採る為にいつも行くコーヒーショップへ行った

同席した人が僕にサンドイッチを差し出してきた
結局ここに来て毎日遭遇する親切
僕はさすがに毎朝それをご馳走になる訳にもいかず
僕なりに丁重に断り、
自分でサンドイッチを頼み初めて店長にお金を払った

「まだまだここにいてのんびりしていきなさい」

きっと深い考えではなく
習慣として出た言葉かもしれないが
僕はそんな言葉に簡単に後ろ髪が引かれてしまった














ワゴン型の乗り合い型タクシーを乗り継ぎ20分程経つと
見覚えのある幹線道路にやってきた

平坦な土地を真っ直ぐに伸びる幹線道路
たまに通り過ぎていく歩道橋は
何も空を遮る物が無いこの景色の中でとてつもなく巨大に感じられる


その中のひとつのたもとに突然タクシーは停車した

満員の乗り合いタクシーの全員が僕の方を見る
一人だけ前を向いていた運転手が
バックミラーを覗き込んで僕を見る

「ここだよ」







クーラーの効いた車内から
相変わらず刺す様な日差しと潰される様な湿気の暑さの中に突然飛び出す
そうすると何だか放り出されたような寂寥感を覚える

歩道橋のたもとに立っていた白いクルタを来た男を一人吸い込むと
タクシーは急発進して行ってしまった

それがまた僕の寂しさを助長する























回りを見渡しても今までタクシーの中から覗いていた景色と変わらない
ずっと見てきた景色だから妙に既視感に捉われ
何故ここにやってきたかを見失いそうになる

とりあえず側に聳え立つ歩道橋に登ってみる事にした


階段を一段登る度に大きく息を吸い込む
あっという間に服はびちょびちょになり
口は開いたままになってしまう


最後の一段
手を膝に付きながら登り切って視線を上げる

そこには、視界が開けてもやっぱり真っ直ぐ伸びる幹線道路と
その隣にここらでは目立つ緑の一群と中から聳える白い塔に

そして

ドームが見えた


20100719 (1)















入り口に向かうと白人の二組のカップルがいた

女性二人はイスラムの教えにのっとって
私服の上から肌を覆い隠すグレーのポンチョを係りの人に借りて
彼氏達と笑い合っている

それを通り過ぎると
すぐに目の前にドームが現れた


20100719 (2)




大理石できっちりと整えられた庭園
その向こう側

圧倒的な大きさをしている訳ではないのに
肩に力が入った







進んでいくと廊下の入り口があった






壁、天井
全てがはっきりとした表面を持つ大理石で
限りない幾何学的完璧さを脅迫してくる

曲線までがあいまいな優しさを許さない


20100719 (9)



辺りはそれに影響されているのか
緊張感のある静けさが覆っている



進んで行くと壁に装飾や
天井に荘厳な木細工がアクセントを入れてくる

それを相変わらず完璧な床が見事に反射させている


20100719 (3)







国王がお金と時間を掛けて近年作らせたというグランドモスク
数年前に出来たばかりで
その完璧さ綺麗さはこのオマーンの中でさえ際立っている

周りを囲む回廊は、射し込んでくる日の光で
きちんと統制の取れた明暗を繰り返している


20100719 (10)


最も記憶に残っていたドームは緑色ではなく金色に施されていて
そこを覆うように格子がある
それは肋骨の中に心臓が安置されているような神秘さを持っていて
冷徹な印象を覆っていたこのモスクの中で
突然そこだけ熱い生物の鼓動を感じる


20100719 (11)



そう思ったら
何だかモスク全体が恐ろしいくらい思慮深い動物のように感じられてくる

ただ、その動物は遥かに人間より巨大で
全体を推し量るには恐れ多いくらいだ












大きな扉があった
靴箱にサンダルを入れて中に入る

すると気圧の違いが耳をキーンとうならせて
大きな空間の中にいることを認識する

天井など遥か上に位置して前を見ている僕には当然視界に入らないが
それでも端が眼に入るくらいのシャンデリアが空間の真ん中にいた

当然見上げる
こんなに大きなシャンデリアを見たのは生まれて初めてだった


20100719 (8)






僕はその空間の壁を伝って歩く

壁の装飾に触れながら歩いて正面に向かっていく


20100719 (7)





頭は何を考えているだろうか
何だか動いていない

『絶対』を見せ付けられている

そんな感じがする


止まった思考を補うかのように
無意識に手は物に触れるのだろう





入り口から一番遠い所にやってくる

そこにも少し小ぶりなシャンデリアがあって
壁が唯一凹み、一面装飾で埋め尽くされていた


20100719 (5)


近づいてみるとアラビア文字が潜んでいた
完全に文字と装飾が同一していた


20100719 (6)










確かに歴史が降り積もった
少しでも茶けた建造物の方が味があっていい

金閣寺よりも銀閣寺の方が歴史を感じるし人間臭さを覚え
身近な美を感じるかもしれない

でも、



人間は本当に美しいものには、
『黄金比』とでもいうべき整ったものには、
どんな理屈を持ち出してこようが結局太刀打ちできない

そんな弱さがあるように思う




嫉妬や憧れが生まれ、その完璧さへ向かおうと必死になるが
それは一種の夢であって理想であって
本気で手の届く場所ではない

結果論的に人は、個人では基本的に眺めているのである
しか出来ないのでは無いか

独りで完璧に近づけるには限界がある
だから人は嫉妬や憧れをある程度自分の中に収めて
その代わりに社会性を保っている






この建物には個人では成し遂げられない完璧さが
至る所から匂いたっている

きっとそれは強固な社会性によって
ある個人の特定の完璧さを大人数で追求できたか
それとも、共通の理念を持った人々を選ぶ確かな選別眼を持った個人がいたか


















兎に角

途方も無い気持ちで
僕はこの建物を歩いた



不思議だが
日陰でもずしっと暑いマスカットにあって
床はひんやりとし
涼しい風が吹き抜け
回廊でも暑さを感じない



それは完璧の冷徹さか



でも、








悪い気はしない




20100719 (12)













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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
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