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3380-クライミング2日目-

20120301







ベースキャンプ前のキャンプ地コンフルエンシア



ここを通る登山者は必ず入山許可証のチェックと
常駐の医師によるメディカルチェックを受ける事になっている

前日に一般的な人達よりもずーーっと到着が遅かった僕達は
医師に翌日の朝にメディカルチェックを受けるように言われた
その時刻朝8時


ちなみに今日のトレッキング予定は
今登山中一番距離が長いというベースキャンプまでの20キロ弱

昨日のトレッキングよりも距離が長く
そして最後に『勇敢な谷』という名がついた
如何にも辛そうな急斜面を登る


初日の一番勢いがある時に見事に自信を打ち砕かれた僕達は
完全にビビって朝一で出発しようとしているので
メディカルチェック後にすぐに出発出来るように
朝6時起床して朝食を済ませ
パッキングもある程度済ませておく

だって昨日の登山口からここコンフルエンシアまでの
平均所要時間というのが4時間というところを
僕達は8時間かかったのだ

そしてこれから行こうとしているBCまでは
平均所要時間8時間という
果たして僕達は何時間かかるだろうか



20120301 (1)


















、、と、云う僕達の緊張と不安

なにものもこれを解消する事が無いと思っていたが
なんと医師によって解消された



勿論彼の『治療』によるものでは無い

もし治療であれば
僕達の自信まで雲散霧消する事など無かった



















医師は終始険しい顔をしていた


表情が緩む時があるとすれば
それは苦笑いする時だけだ






まず昨日の経過を説明するのだが
平均の倍以上の時間がかかった事実を相当重く受け止めている

言い訳になるしかないのは分かっていたのだが
やはり荷物が重いという事は自業自得であって
どちらにしろ彼の心配の種は順調に育っている


「君達、経験も無く、そしてこの状況だよ
 ここからBCまでは昨日よりも距離が長くて辛い」


それでも行くのだ、

自信はすでに全く消え失せてはいるのだが
そうバカの一つ覚えの様にただ僕達は繰り返す


「ここから進路を北東にとるとフランシアという山がある
 そこからはアコンカグアの有名な南東壁を見る事が出来るし
 そこも4000m以上はあるから十分楽しい登山になるぞ」


ここで進路変更?
アコンカグア断念?

いや、まさか!?
プライドはすっかりズタズタだけれども
意地だけはまだ巣食っているらしい


「でもねぇ。。」


医師は本当に困り顔だ
とりあえず、という感じである機器を取り出した
指先にはめて血液の水分量をチェックするものらしい

まずは愛二がはめる


ピピピ、、


という音
ただでさえ険しい医師の顔が更に深みを増す

どうやら本来すぐに数値が表示される筈の液晶盤に
エラー表記が出るらしい
僕達の心拍数は一気にあがる


医師は機器をこすってみたり愛二の手をこすってみたり
機器の電池を変えてみたり最終的には機器を予備のに変えたり
色々試してみてようやく数値が表示される




83




「ウーム、、」

次は僕の番
無言で医師は僕を手招きする





86




「ウーム、、」


医師は口を開いた


「今日はここにもう一泊しなさい
 ここから先に行く事は私が許可しません」






















なにーーー!!!








話によればこの数値が90以上ないと
先に進められないという


そんな馬鹿な!

絶対に僕達を先に進めない為の口実だ!!

いや、確かに自分達自身、心配な面は多々あるけれども
ほぼ有志で受けているような印象のこのメディカルチェックで
ボクシングみたいなドクターストップが存在するなんて信じられない






しかし、医師はなおも僕達を追い詰める



「君達、昨日水をどれだけ持ってきた」


事前にネットや登山レンタル用具店の人に言われた通り
一人4リットルの水を担いできてきた

登山では気が付かない内にどんどん身体の水分量が失われてしまうので
沢山水を飲まなくてはいけないという
特にアコンカグアは乾燥地帯にあるので余計らしい
それが一日4リットルという数字


「一人4リットル持ってきました」


久し振りに堂々と言える、という感じで
誇らしげに喋る


「それで、どれだけ摂取した?」


ん、、
えー、、

実際1リットル程しか登山中
僕達は結局摂取していなかった


「それじゃダメだ、全然ダメ」


また思いっ切りカウンターパンチ
もうこちらはボロボロである

ドクターストップかけた医師自身が
なぜ僕達をここまでおとしめるのであろうか
もう泣いてしまいたい























結局僕達はコンフルエンシアにもう一泊
する事になってしまった

ただでさえ素人であるので上に行くまでに時間が掛かってしまう
天候が安定しない今
アタックの予備日を余計に取っておきたい中での
この仕打ちはなかなか僕達には堪えた

いやむしろ、このまま登山を進められるかも怪しい


今日中、身体を安めると同時に柔軟や体操をし
そして兎に角水を飲みまくる事

そうして夜にもう一度血液中の水分量をチェックして
それからまた次の判断をするという








トボトボとレンジャー室からパッキング途中の
僕達のテントの元に向かう

空っぽのテントにくしゃっとした僕達の荷物は
余計に僕達の悲しさを助長する



何だかぼーっとする感じ

たった一日だけだけれども初めての登山が始まったという緊張感と
想像以上の体力的疲労が僕達に急に睡魔を起こさせる



昨晩のいつ振りか記憶に無いくらい久し振りのテント泊
十分に寝れたというには程遠い

今やっと太陽が山の上に顔を出して熱を身体に与え出している
僕達は半分ヤケもあったかもしれない
仕舞った寝袋にマットを出して再び寝る事にした



20120301 (4)





































夜は寒くて寝れないテントであるが
昼は逆に熱を思いっ切り太陽から貯めてしまって
熱くて仕方が無くなる

昼前にのそのそ起きだすと汗びっしょりだ



昨日使用した既にトンデモ無い異臭を放っている
靴下を持って外に出る

コンフルエンシアには山を水を引いた場所があって
そこで水を汲む事が出来る
という事は洗濯も出来てしまう

乾燥しているという事と日差しが強い事も相まって
あっという間に一時間もせず乾いた



20120301 (5)








ちなみに水汲み場近くには粋にもベンチとテーブルがあって
僕達はそこで昼食を作ってのんびりする事にした

まだまだ今回の登山行の食事に慣れていない僕達
昨日の夕食は本当に酷かった
だってなんと僕達、塩を持ってくるのを忘れたのだ


塩なんてどんな料理にも欠かせない
いや美味しいどうこうの前に
ナトリウムは摂取しなくてはいけないミネラルである

それをこの先厳しい登山を二週間も塩無しで続けるなんて
素人の僕達でい垢?剖蜘海靴浸�造任△?

そりゃあ医師にボロクソ言われてしまう

と云っても今更取りに帰る訳にはいかない
僕達は試行錯誤をして今ある食材で
やりくりしなくてはいけないのである


という訳で後半の登山の為に残しておこうと思っていた
コンソメを早くも使用する事に

ただのコンソメパスタなのだが
前日の夕食と今日の朝食が不味過ぎたのだろう
相当美味しく感じられてしまった

きっと山にはまったら
食事にお金がかからなくていいだろうな
下界の食事がどんなものでも美味しく感じられてしまうだろう



20120301 (7)











食事が済むと今度は身体を動かしてみようという事になる

半日身体を動かしていないだけで
すっかり重たく感じる

明日の予行練習という事で
昨日の半分くらいの荷物をリュックに詰めて
目の前の丘を登ってみる



いや、辛い

すぐが切れてしまう



何だか、もう自信を維持する気ももう起きないらしい
スグに二人して弱音を吐く

ただ、丘の上からの景色は
10分ちょっとで登ってみた割りにはなかなか眺めが良くて
僕達の山への意欲を留めるのに充分だった



20120301 (3)





















丘を降りてまたベンチにてくつろぐ

さて何をしようか
昨日までテントを張っていた数組は
既に出発していて誰も居ない

暇を持て余すようにしてベンチで日向ぼっこ
一体僕達はここに何しにきたのだろうか
なんて事は考えてはいけない筈だが
どうしても考えずにはいられない



ふと、一人誰かが歩み寄ってくる
大きな荷物を持っても切れ切れ

どうやら上から降りてきた人らしい


「上は天気が悪くてね、アタック断念して降りてきたよ
 次の機会かな」


もう自分の中で沢山の時間を悔しさに充てて
納得の出来る答えを探したのだろう
その言葉には妙にサバサバした印象が強く押し込まれているようだった





程無くしてまた一人がやってきた


「アタック挑戦したんだけどね、上は強風でダメだった
 すごいぞ上の風は、風100mはある」


もともと人懐っこい、友達の多そうな人だが
が大きく切れてしまって身体が辛そうだ
もっとゆっくり話してもいいというのに


「いや、本当はBCから一気に登山口に降りて
 今日中にバスにのってメンドーサに戻ろうと思っているんだけどさ
 すっかり寝坊してしまって、、」


登山口からメンドーサに戻るバスは一日に3本しか無い
しかも最終便は登山口に停らず3キロ先の町にしか停らない

それはつまりやっとこさ登山口に帰りついても
そこからさらに道路を歩いていかなくてはいけない
という事になってしまう


この時間に彼はここにいるという事は
間違い無く彼は最終便のバスになってしまう
いやむしろその最終便も
道路を歩いているうちに抜かされてしまうかもしれない

彼はそれを理解しているようだが
何故かここから急ごうとしない
何よりも相当疲れている


彼の姿は僕にはとても興味深く写った
将来の自分の姿を投影しているのだろうか

失敗したとしても初めてアタックに挑戦した人間に出会う事が出来た
そして彼は今、長い日々と道中を経てこうして僕達の目の前にいる

登山が好きと自ら言う彼が心身共にかなり疲れているのだ


すっかり緩んでいた僕の心は
一気に引き締められる感じがした
























夜のメディカルチェックの時間がやっとやってきて
僕達は緊張の面持ちで向かった

さあ、という感じで彼は例の機器を取り出す

例によってまた反応が悪くて
ピピピという音を鳴らす




95




愛二が安堵の表情を
次は僕の番

ピピピという音と共にすぐに表示された数字





89





、、89!!
まずい!

いや、1くらいならさすがに勘弁してくれるんじゃないのか
しかしこの医師の事だからやっぱり厳しい事を
言ってくるかもしれない

そんな事を一瞬で考えていると
なんと数字が変化していく






、、90、、





、、91、、

















無事に僕達はハードルをクリアして
医師の通行許可を得る事が出来た

それにしてもこの数字の変化は不思議だった
どうもこの医師が操作しているのじゃないかと
思えて仕方が無かった



ただ、この医師

僕達が無事に数字をクリアしても
やっぱり安心した表情は見せてくれない

荷物のチェックだの
やっぱりまずはフランシアに登ってから考えた方がいいだの

と言ってくる


僕達を心配して言ってくれているのは勿論
承知ではあるのだが



医師はレンジャー室に僕達を連れていった
そこにはレンジャーの他に
今日トレッキングで登ってきた女の子達4人組が
楽しそうに笑い合っていた

屈強のレンジャー達も男達である
やはり僕達と女の子では扱いが違うのは仕方無いか





その暖かな輪の中に白ひげをすっかり蓄えた
仙人のような人が居て医師がその人に何事かを聞く

どうやらここの登山者をサポートする企業の人らしい
その人にロバの手配を頼んでいる





他の山にもある事だがアコンカグアには
登山口からBCまでロバで荷物を運ぶというサービスがある

僕達も最初はそのサービスを使うつもりだったが
準備がバタバタしてしまって後回しにしてしまったら
手配出来なかったのだ

「男なら何の手伝い無く登るのだ!」

なんて言い訳じみて言い聞かせていたが
昨日の限界越えの登山行にすっかりネをあげてしまって
ロバをここで手配出来るならしようという事になった



20120301 (6)






が、





なんともそのロバが高いのなんの
一日60キロからで125USドルという事


くそー!足元みやがってー!!


勿論そんな大金持っている訳も無く僕達はロバを諦め
また素人らしくガチンコで明日勝負する事にした
















やはりレンジャー室から自分達のテントまで
トボトボと歩いて行くと後ろから医師が声を掛けてくる


「本当に行くのかい?」


さすがに同情の色が見える表情
僕達の返事は勿論イエスだ

どうであっても、そうでしかない


「気を付けなよ
 グッドラック」


色々とやりあっただけに
最後のグッドラックのセリフは
十分心に沁みるモノだった



20120301 (2)

























アコンカグア登攀2日目
コンフルエンシア (Confluencia) : 3380m , stay


aconcagua2.jpg




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750-クライミング1日目-

20120229










僕は本当に朝が弱い
意思の問題であるのは十分承知である


旅中は値段が安い早朝のバスも結構あるので
思った時間に起きれるかどうかというのは大事である

日本に居る時、朝早い時などは
徹夜して何とかこなしていたような人間の僕としては
とても困った事になる

だって大体朝早く起きる必要がある時は
ハードな移動の日だったりするので
しっかり睡眠をとって体力回復の必要がある

そして何より、もう自由に徹夜が出来る歳でも無いのだ




今回に関してもそれは云える




僕の人生にとって前代未聞の登山
結局パッキングに時間が掛かってしまって
2時過ぎに就寝し4時過ぎに起きる

たった二時間睡眠の上に早朝起床


何とか起きる事が出来たのだが
それはいつもの様に愛二のお陰だ

今までなんとか起きてこれたのは
多分に一緒に旅をしてきた愛二のお陰
愛二は朝ちゃんと起きる


今旅中、何度もバラバラになったりしてはいるけれども
色々な場所を愛二と一緒に旅をしてきた
様々な所に行くのだから沢山の困難もあったけれども
助けてもらった事は多々ある

そうやって色々な所に挑戦してこれたのも
愛二と居れたという事は間違い無くあるだろう






去年お互いがカナダに出稼ぎに行く時に
バラバラになってから僕達の旅の状況は大きく変わった

カナダでの滞在期間もバラバラになり
先に出発して中米を回ってきた愛二
そして僕はと云えば遅れて出発
さらにはジュンコというパートナーが出来
去年までの旅のスタイルとは大きく異なった






そんな中で迎えた本当に久し振りの二人での『旅』


アコンカグア登攀





間違い無く今旅一番の挑戦
それは愛二がいるという安心感もあったであろう

様々な挑戦をしてきて
大きな事故や事件も無くこれまでやってこれた

そんな経験が次なる大きな挑戦を可能にした

















そんな訳で僕達は不十分な睡眠でありながらも
無事に起床し朝の5時過ぎに宿を出発

優しい宿のお父さんはわざわざ起きてくれ
「無事を祈る」という言葉を残して見送ってくれた




まだまだ外は真っ暗である
街中も静かそのもの

そんな中、二つの黒い塊がのそのそと動いている

間違い無く端から見たら
人間が歩いているようには見えなかったであろう

その歩みはまさに亀のようであり
バックパックは今までで最大に膨れ上がり
入りきらなかった寝袋やテントなどが外にぶら下がっている



まだ南米の夏といっても晩夏の3月で早朝だ
乾燥地帯のメンドーサはそれなりに寒さを感じるのだが
宿を出た時点で既に背中を汗が流れる

荷物の重さをキチンと図った訳では無いが
間違い無く30キロ後半はあったであろう
体感的には40キロと言いたい所だ

そんな重さのリュックなんて持った事が無い
いや、むしろバックパックが
想像以上にスゴイ代物であったという事に
感心したくらいである


とはいっても、
そんな事を思う余裕があったのも最初の数秒だ
二つの肩にかかる重さはまさに岩を背負っているようで
僕の思考を一気に踏み潰してしまう







平坦な道を歩いているというのに
既にトレッキングポールを両手に持って歩く

二つの細い足だけではさすがに支えきれない






何とかいつもの倍の20分弱で
バスターミナルについた頃には
汗びっしょりで息も上がっていた


「果たしてこんな荷物で登山が出来るのか?」


平坦な道ですらこんなに大変なのに
傾斜を登るのである

勿論道は街中のように整備されている訳でもないし
さらにはどんどん高度は上がって
空気が薄くなっていくのだ




もう現実とやろうとしている事のギャップが激しすぎて
どうなっているのか判断が冴えない



睡眠不足だからだろうか

経験不足だからだろうか

体力不足だからだろうか




全て当てはまるような気がするが
ひっくるめてしまえば


無知だからだろう




何をどう判断していいか解らない
状況が自分が今まで経験した所からかけ離れすぎていて
想像力が追いつかない

そしたら判断どうこうでは無い

どうしようかオロオロしている間に時は無情に過ぎていく
判断を放棄した僕はもうその時の流れに乗るしかない


















真っ暗のバスターミナルに
少しくたびれたバスが入ってくる

登山口まで行ってくれるバスだ

このローカルバスに乗って
僕達はこれから4時間弱揺られる





途中下車なので少し心配ではあったが
周りを見渡せば大きなリュックに
トレッキングブーツを履いた数人が集まってきていた

同志だろう


安心して乗り込み
そして座った瞬間に僕達は
そのまま眠りについてしまった
























それでも僕には少しの緊張感を
ぬぐい去る事は出来なかったらしい


途中何度か目が覚める


まだまだ外は暗い
静まり返ったバスの中に規則正しい音が伝わってくる

どうやら雨が降っているらしい



雨の中の登山とは、一体どうすべきなのだろうか



やはり疑問だけが出てきて
答えを心は出そうとしない

緊張感によってとめどなく溢れてくる疑問
それに対する判断を全てほったらかしにするから
頭の中はどんどんと散らかっていく


そんな頭から目をそらそうと
カーテンの隙間から外に視線を向けると
暗闇の中に青黒い山の稜線の影が続いていた
























パッと目が覚めるとバスの中は
すっかり明るくなっていた

周りを見渡すと沢山の山々が一本の道を取り囲んでいる
というより山しか無い



山は日本のように緑に覆われていない
コンクリートの道のすぐ傍から
赤茶けた土が延々伸びて山頂まで続いている



それにしても圧倒的な存在感である

バスが今走っているこの場所が
既に2500m位である
その場所からさらに大きく空を削っている

一体何メートルの山だろうか

ここから見える山々全てが富士山より高いのだろう


そしてここから見える山々全てよりも
アコンカグアは高いのだ




























おもむろにバスが急停車する

外から見える景色は変わらない
『山々』だ


降りると小さな建物が目の前に建てられている
どうやらチェックポイントらしい

同志達が黙々とバスのトランクから
重たそうな荷物を引きずり出している




何の名残惜しさも無く
バスは潔くこの場を去っていく

いや、他の人達からしたら
何の意味も持たない場所だろう

強い風が吹き抜けるそんな寂しい場所だった


20120229 (2)






建物の背景にやはり赤茶けた岩山が覆う

そしてその向こうに
雪を頂いた山が乗っかっている

あれがアコンカグアだろうか


いくら登山口にやってきたとしても
それはどうもいつも下から眺める山と同じで
いまからその山に向かって歩いて向かうなんて
やはり現実感がわかない


実感としてあるのは
その吹きさらしの場所で強風にあおられ
肌に鳥肌が立っている事だろう


まだ初日で標高も低いのだから
そう思って防寒具をかなり溜め込んでいた僕達は
いきなり装備の再点検をやる事になってしまった

アウターを引っ張り出す


こんな場所でここまで寒いとは、、



20120229 (1)















登山口にあるチェックポイントに乗り込む


「では、ここに名前を書いて」


レンジャーの人が手際良く説明をしてくれる
久々に流暢な英語を聞いた

登山中のゴミを入れる袋を手渡される


「今週末まで山頂の状況は強風で少し雲が出ているわ
 でも、日曜日が過ぎれば予報では一週間天気は持つわね」


数多くのクライマー達を相手にしてきているのだろう
クライマー達が気になる事や注意点を
こちらが聞かずとも一通り教えてくれた

その対応は
僕達を一介のクライマーとして対応してくれている感じがして
緊張もし、そして少しくすぐったい感じがした


全くの素人であるにもかかわらず


でも、


登ろうとした時点で

この登山口にやってきた時点で






僕達はクライマーである事には違いないのだ







責任と権利はもう僕達の手の中にある




























ただ、やはり初心者

『グッドラック』の言葉を頂いて
僕達は潔く歩きだしたにも関わらず
すぐに後ろからレンジャーに呼びかけられる


「違う違う!!そっちの道じゃない!!」


間違ってトレッキング用の道を行ってしまった僕達であった






「大丈夫かよ、お前ら、、」



登山口に居たレンジャー達同様
そう突っ込んだでしょう、今これを読んでいるそこのあなた

その感想は間違いありません

僕達自身もすぐにそれは思い知るのです










登山口のすぐ先は車で来た人達用に
少し上に駐車場があり
そこまではなんとコンクリートの道を行く事になる


やはりのっそのっそと歩く僕達
完全に視線は足元

ただ立っているだけでも辛い背中の荷物
傾斜もあって、もう僕の頭と地面はくっつきそうなくらい


必死にトレッキングポールを前に踏み出すも
下がコンクリートだから乾いた音を上げて跳ね返される

プハっと水面から顔を出すようにたまに顔を上げてみると
さっきから景色が5センチしか進んでいない


そして後ろから快適な顔をした
車に乗った人達が通り過ぎていく

みんな余裕で、

「頑張れよー」

みたいな感じで手を振ってくる


勿論全然対応出来ない





ああ、前にもこんな状態の時あったなあ
そうだ、マラソンの時だ

マラソンの30キロ地点あたりの
かなり限界だった時の状態だ




まだ車で5分そこらの距離

出発してまだ30分くらい
あっという間にその状態になってしまった

アコンカグアの頂上を目指すどころか
トレッキング、いやハイキングですらままならない
一体それでは何しに来たのであろうか


山を見る余裕すらない
このまま、ただ腰を悪くしただけで
帰る事になってしまうのか

いやあ、もうこの距離で帰るのすら辛い




僕の気持ちはあっという間に
僕の姿勢と同じ様にみるみる萎えていく















やっとこさちょっとした広場に着いた


聞いて笑うなかれ
それはまだ出発地点ともいえない場所

コンクリートの道が終わった所である


そこにはきっと何かあった時
一直線にアコンカグアまで飛んで行く為の
ヘリポートがあった

そこにどうしても目がいってしまう




「休憩!!、、、ハアハア、、」



二人して荷物をドサッと地面に投げ出す
座り込む

ここまで一時間弱くらいであろうか
しかし、進んだ距離はきっと1とか2キロ程度、、



「飯にしよう」



気が付いたらもう昼時
きっと食事を食べていないから力が出ないんだ

色んな事に理由を求めようとする






いや、それにしてもだ



こんなペースで本当に大丈夫だろうか


ふと見ると
バスで僕達の前に座っていた二人組が
前を歩いて行ってしまっている

荷物を置いた僕達を見て声を掛けてきた



「おーい!君達
 道はそっちじゃなくて、こっちだぞ!」



勿論僕達は大声を出す事も出来ず
そして立ち上がる事も出来ず
何とか手を上げるに留める

それにしてもまた道を間違えているとは
自分でも呆れてしまう


20120229 (3)







僕達はレンタル用具店で言っていた話を思い出す




どんなルートにスケジュールで進めていくのか

僕達は全くの素人だから
自分達のペースなど知る由も無い

ただ、この登攀のキッカケを作ってくれた
タイヘイ氏に貰った情報しかない





タイヘイ氏は初日に登山口 (Horcones:2980m) から
ベースキャンプであるプラザデムーラス (Plaza de Mulas:4270m)
まで行っていた

僕達も現役バリバリのタイヘイ氏の体力はあるとは思っていないが
何とか頑張ればそこまで行けるのではないかと思っていた

ちなみにその登山口からベースキャンプまで
距離にして27キロ弱、そして高度差1400m



さて、僕達は今お昼時にまだ登山口を出て1キロちょっと






登山が始まってしまえば
朝に感じていた現実とやろうとしている事のギャップ
一気にとは言わないにしても
徐々に解消されていくだろうと思っていた

なのにどうだろう

そのギャップは広がるばかりではないか



とりあえず今日中にそのベースキャンプに行く事を諦める事が
ここ登山口から1キロ地点にて早々に決定された

僕達はその中間地点にあるキャンプ地
コンフルエンシア (Confluencia:3380m) に
とりあえず目的地を変更する事にした



20120229 (5)












と、




いっても、だ







1キロに一時間かかっている僕達が
中間地点といっても10キロ先に目的地を変更したとして
果たして辿り付けるのか

本来、元気一杯のこの出発直後のペースがこれだ
いや、既に元気一杯には程遠い




といっても、それ以前にはもうキャンプサイトは無い

兎に角進むばかりである


20120229 (4)























それからは必死である


必死な時ほど

歩き方はメチャメチャになる


余計に疲れる



20120229 (6)




30分歩いて5分休んでいたのが

20分歩いて10分休み

15分歩いて15分休み


、、



気が付いたら歩いている時間よりも
休んでいる時間の方が長くなってしまった



日が傾いてくる

寒くなってくる



20120229 (7)





荷物を放り出してうずくまると
衝撃的な睡魔が襲ってくる

これが山である


「寝ちゃダメだ!!」


ってヤツだろうか

いや、それってもっと高所で
頂上付近で吹雪の中で行われるべき事であって
こんな登山口付近で吐かれるセリフでは無いだろう、本来は



という訳で、僕達は
本当に寝てしまう事もあった









途中何度も人に抜かれた


赤い服を着たレンジャーに先導された
女の子三人組に抜かれた事もあった


「頑張って」


そう優しさで励まされただろうけれども
僕の心はその優しい風にすら見事に崩れ去る


ネパールのアンナプルナのトレッキングでは
これでもかなりの速いペースで登った僕達である

その自信はすっかり飛び散っている






考えれば惨めになるばかりなので
僕はいつの間にか考える事もしなくなってしまった

相変わらず背中の荷物達は減る事が無いので
肩は潰されたまま
そして僕の視線はどんどん地面に近づいている

そんなだからやっぱり山の景色など
眺めている余裕は無い







無心というよりも
散らかった心の中をヤケになって
蹴散らすように乱暴にしながら力を振り絞る


それでも太陽は無残にも
僕達の歩く谷を囲む山の向こう側に行ってしまって
いよいよ最悪の自体だけが現実味を帯びてくる

極めつけはさっきの女の子三人組が
登山路の向こう側から帰ってくるのが見えた時だ

彼女達は日帰りのトレッキングで
僕達をさらっと抜かした後に
コンフルエンシアまで行って引き返してきたのだ


こんな惨めな事態が
ついこの間まで『男のロマン』を語っていた男に
降りかかるのだから
あまり大きな事は言わないモノである
























ようやく真っ暗になる直前
夕方の6時に


やっとこさコンフルエンシアに辿り着いた



20120229 (8)






僕達は無事に着けただけでも
奇跡の様に喜び笑顔を見せ合ったモノだが

決まりであるコンフルエンシアに居る
ドクターに健康チェックを受けている時




「君達、登山口からここまで一日かかったの!?!?」




苦笑いの後に

次の日の登山を禁止され
ここで一日安静にしているように言われてしまった








頂上を目指すなんて、、

という感じで近くの
別のトレッキングルートを勧められたのは言うまでも無い






20120229 (9)

















アコンカグア登攀初日
メンドーサ (Mendoza) : 750m - オルコネス (Horcones) : 2980m , (BUS) 5 hours
オルコネス (Horcones) : 2980m - コンフルエンシア (Confluencia) : 3380m , 8 hours


aconcagua1.jpg









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    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


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