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バスの終点


尚吾に肩を叩かれて起こされる
気がつくとバスの中に乗客は一人もいない
外を見ると見覚えのある建物が
数日前に通ったラオスとベトナムの国境だ

外に出ると冷たい空気が寝起きの身体に突き刺さる
遠くの景色は朝靄の中に隠れている


ラオスのイミグレへ向かう
寝ぼけた頭の中で昨日の国境越えにお金がいるという遣り取りの
彼の強い口調が反響している
彼の頭は熱によって発熱して真っ赤に燃え上がっている


建物までやって来て実際にパスポートを係員に渡すと
頭の熱は不思議と冷めていった
現実の冷たさが妄想を押しやったみたいだ
ただ朝の寝起きで火照っていたのか


あっけなく朱色のパスポートはスタンプを押されて返ってきた
他にある沢山の濃い緑色には青や緑のまだお札が挟まれて置いてある


国境を越えるとバスが4,5台停まって国境越えの人々を待っている
僕達のバスは一番先頭で待っている
後方の座席が無い所はすべてカーテンが閉められ
太陽の光の中でも怪しげな雰囲気を保ち続けている

全員が集まったからというよりは
スタッフの気が済んだという辺りでバスのエンジンがかかり
ベトナムの道を走り出す



窓から眺める景色は日本の山間部を見るようだ
ラオスへ向かう時のバスでは寝てしまっていたので気がつかなかった

山々がすぐ近くまで迫りその間を河が流れている
運びきれなかった石がごろごろ転がっている
山間に数軒の小屋が目に留まってまたすぐに通り過ぎていく
大小の洗濯物が風にたなびいている

ほんの一瞬通り過ぎていってしまう景色
そこにはちゃんと生活している人々がいる

バスが通り過ぎると
一台の自転車に集まっている歳がバラバラな
5,6人の子供達が笑顔で手を振ってくる



国境を越えてから何度か停まる事が多くなった
数十分に一度エンジンが止まり運転手が外に飛び出して行く
少しするとベトナムの軍服と思われるような制服を着た男と戻ってくる
警棒みたいなのでバスを叩いたり
トランクの中を開けさせたり
懐中電灯を持ってバスの中に入ってきたり
やっている事は様々だが
どうやら求めている物は同じみたいだ

ただもう顔見知りなのか何かあるのか
あんまり時間も掛けずに終わってしまう


この遣り取りを見る限り
ダンボールの無残な姿を見た時からの疑惑が
殆ど間違い無い確信に似たような想いに変わる



まあもう乗ってしまった
国境も無事に越えた
後はフエまでこのまま安全に何事も無く下ろしてくれれば

そう思ってこのバスについては頭の中では終止符を打つ事にして
外の自然に目をやった
そうしたらベトナムの振動は僕にはちょうど良いらしく
すぐに眠りについてしまった



次に起きた時にはレストランの前に居た
スタッフの人は円卓に呼ばれている
よく見ると乗客と思っていた人が次々と向かって行く
どうやら乗っている殆どがこの仕事のスタッフだったみたいだ

純粋な乗客は僕達と
日本人のおじいさんそして彼の里子というタイ人に
もう一人タイ人の仕事仲間という六人だけみたいだ

ようは僕達旅行者を乗せるのはあくまで小遣い稼ぎ
彼らにとっては空いたスペースを有効活用しているに過ぎない訳で
それはそれはサービスなどというモノは期待できる訳無い

さっき山間部を走っている時だったが
ふとバスの後ろを見ると
一人が僕と尚吾のリュックをベットと枕代わりに使っていた
怒った尚吾はそれを引き剥がしていたが
彼は何とも訳がわからないような顔をして
そこから動けずに暫くこっちを見ていた


レストランの椅子に腰掛けて周りを見渡すと
みんな豪勢な食卓を囲んでいる
キッチンから次々とお皿にてんこ盛りになった料理が運ばれてくる
大盛りのご飯のお皿がなくなりそうになったら
スタッフが下げてまた新しい大盛りを運んでくる


我らが運び屋家業の面々は
朝っぱらからビールを飲んで顔を真っ赤にしている
察するに仕事の山を越えたのだろう
言ってみれば仕事終わりの一杯か
それは美味しいだろう


事実バスに乗り再び走り出すと
ともともとひょうきん者で通っていると思われるやつは
もっと陽気になって赤い顔をぐっと近づけて話し掛けてくる

フエへ行くのか

そうだ

フエへ行くのか

そうだ

その後は何を言っているのか分からないが
兎に角親指を立ててグーっと言ってくる


暫くしてバスが大通りの真ん中で停まった
そして僕達は下ろされる
目の前にはバイクタタクシーの運転手が数人たむろしている
ここは一体何処だろうか
行政区分的にはフエなのかもしれないが
とりあえず街中では無い

下ろされたのはまさに純粋な乗客と思われた六人
それはつまりあのバスにとっては「お荷物」だった訳で
適当な場所で下ろされたのだ



バスは積荷を下ろすと軽快に走り去っていった



こんなバスのチケットが
街の一番のバスターミナルのカウンターで売られているのだから
今度行く人は覚悟した方がいい



こうやって僕達のラオスのアンダーグラウンドを通るバスの旅は
一応終わりを迎えた訳だがそれは純粋な移動の終わりでは無い
僕達はフエの街中にあるシンカフェのオフィスまで行き
今日中にハノイ行きのバスに乗り換えたいのだ

目の前にはバイクタクシーの運転手が
獲物を見るようにこちらへやってくる
何だかサファリパークの巡回バスから
食事の時間とでもいう様に檻の中に放り投げられたみたいだ


ここで降りてしまったからには戦うしかない
きっと何処かに有効な手段がある筈だ

先ず運び屋といえど人間だ
証拠に何も無い森で下ろさずに
一応の移動手段バイクタクシーがいる場所で下ろしている
ここからフエに行けないようなトンでもない所では無いだろう

そう思うと俄然やる気が沸いてきた
勿論腹が立つ部分もあるが
その熱がやる気に感化された


目の前のバイクタクシーの運転手達の
飢えた目を睨み返してやる


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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
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