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小世界



明日には香港を出る
予め中国元から替えていた香港ドルはもう200香港ドルしかない
一応もしもの為に残りの中国元を持ってきてはいたが
まずはこの200香港ドルで遊ぼうと考えていた

冗談で旅の資金を稼ぐんだとは言っていたが
全然ルールもわからない場数も踏んでいない
この小心者には当然無理だと思っているので
ただ遊べればそれでいいと思っていた

だから逆にたった200香港ドルで遊ぶ事にすら
どのタイミングでやりだすか決めかねていた
遊ぶというのはつまりはバックを考えていないという事で
そんな生半可なつもりでやったらすぐにとられてしまう
ギャンブルはそんなに甘くない事くらいはわかっているつもりで

どうやったらこの200香港ドルを賭けて
満足いくように遊べるか
その分を有効に使って時間を過ごす事が出来るか
つまり200香港ドルを賭けて一瞬ですられてしまっては
満足感も何も得られずに終わってしまう
それに怖がっていたのだ




そんな下らない考えは蝋に絡め取られたのか
いつの間にか消え去っていて
その時が来るのを待ちに待っていたかのように
100香港ドルが勢い良く手元から飛び立っていった

ディーラーは投げ入れられたお札を簡単にチェックし
二枚の小さなチップをあっけなく渡してくれた
一枚50香港ドル
僕は大事そうに取り上げると
しっかりと確かめるように手に包み込む

さっきと立っている位置は変わらないのだが
テーブルが随分と大きく見えて
随分とさっきよりも近く感じる


昔バスケ部にいた頃
ずっとベンチにいてコートを眺めていた所から
実際にコートに立って試合の中に身を置くと
その試合のスピード感とコートの広さが
ベンチから眺めている時よりもかなり早く大きく感じる時のようだ


今この「大小」の行われている
小さな世界の当事者になったのだという実感が湧いてくる



そんな少し心に動揺がある僕に警鐘を鳴らすように
サイコロの踊る音が耳に届く

意識を集中させてさっきみたいに
次に続く写真を想像してみる
もうその時には疑う事もしなくなっていた
僕はその学校で習わなかった新しい軸の存在に
まさに賭けていた

けれども上手く映像が結びつかない
さっきまでゆっくりと選んでいたと思うのだが
同じように選ぼうとすると
あっという間にディーラーが銀の籠を開けようとする
慌てて選ぶとその映像は断絶する

時間が早く進んでいるような気がする

若しくは意識の魔法が解けて
周りの流れが堰をきったように
どどどっと流れ出したのか


頭の中で連続で3回外してしまった
手の中のチップは溶けた蝋によって
よく転がる

このまま賭けてもしょうがないのか
でも一度やってみない事には始まらない
僕には今二枚のチップしか持っていない
一度間違えたらすぐに崖っぷちだ
でもこのままいたらあっという間に時間は進んでいって
何もせずにチップをまた札に換えて帰る事になる
そんな惨めな事はしたくない

焦りは次の焦りを生み出す

完全に地に足がついていないのが自分でもわかった
それでも久し振りに活発に動きだした頭は
そのまま勢いで身体を動かそうとしてくる


なんとか耐えていた手は
数回後に愛二が賭けたのにつられて
チップを手放していた

当然のようにそのチップは帰って来なかった
皮肉な事にその映像は見えていた
そして崖っぷちになってしまった僕のこの状況も

このままだとそのままもう一枚も吸い込まれてしまいそうで
そして全然あり得そうで

そこまでいって落ち着こうと
さっきの事を思い出す
じっと
兎に角テーブルを眺めていた時の事を



さっきの流れをもう一度探す



今回はたまたま取り込まれたさっきとは違って何とか意識的に探してみる


ここのテーブルはとてもイヤらしい動きをしている
「大小」のテーブルには一台ずつ液晶が付いていて
最新の17回の履歴が載っている
そこにはサイコロの目と大か小かが一目見てわかるようになっている

ここのテーブルはよく大が続いたり小が続いたり
随分と偏った目の出方をしていたのだ
果たしてそれがディーラーの意向によるモノなのか
本当にたまたまなのか

すごくイヤらしい
イヤらしいのだが何だかすごく気を引いた
そういえばここのテーブルを選んだのはそういう理由だった


故意であってもサイコロはただの物であっても
勝手に自分の中で擬人化し
みなの考えも相手が考えそうな理由を付け与えて
僕の頭の中に世界を形作る

そうするとすんなりとさっきの光の流れに飛び込めそうだった

だってもともと光のグラフの関数も
ここのテーブルの中僕の中でしか通用しないものだと理解したからだ
であれば個性的な人の方が把握しやすい


それはサイコロの出方でもあるし
参加している人もそうである


このテーブルが僕にとって良かったもう一つの理由は
参加している人の中にとても目立った特徴的な人がいた事だ

よく肥えたおなかを抱えたその男は奥さんと思われる人と
一枚1000香港ドルのチップを何枚も持ち
豪快に賭けていく

なくなれば躊躇無く1000香港ドル札を出す
勝つ時はごっそりと持っていく
そして掛け方が堅実というよりは
自分の賭けどころを信じているような
大穴であっても
力強く決心するようにチップを叩き付けるのだ



テーブルよりも前に周りを観察する

サイコロの踊り
二人の夫婦の遣り取り
まだまだ成りたてのぎこちない動きが残るディーラー
隣で自分のラッキーナンバーなのだろう
友達同士で楽しそうに笑いながら数字の「14」に賭け続ける
中国人の20代
数回「大」か「小」が続くと外からおもむろに賭けるおじいちゃん

この世界の登場人物が揃う
おぼろげにこのテーブル世界の裏側に流れているシステムが浮き上がってくる
凝視しているとまた身体から蝋が溢れてくる
そうすると周りからも蝋が溢れて繋がっていくのが見える



そうやってテーブルへとやっと意識を移す
テーブル全体を覆ってきた蝋の部屋の中に入っていく

このテーブル以外は全く違う世界が動いていて
それとは完全に隔離されて影響されない状態で
あるここでしか通用しないルールによって時が刻まれているような気分になる

さっきと違って心が落ち着いている
始めはまだサイコロの目を確認する時間までに間に合わなかったが
だんだんと追いついてきた


じっくりとテーブルと今度は周りの登場人物を観察する


そうして棚の中にある写真の中から一枚を選び出す

5回連続で正解したらこの最後の一枚を投げ入れようと考えていたけれども
そんな事言わずにしっくりときた時にしよう
もう確率などは考えるまい
僕はこのテーブル世界のルール
そして光の関数に賭けたのだから





次に投じたチップは無事に帰ってきた
その時は純粋に嬉しかった

でもなるべく身体を動かしたくなかった

蝋で囲まれたこの世界が少しの動作で崩れてしまいそうだったからだ
さっき眺めていた無変化な人々の顔を思い出す






そこから一進一退を繰り返した
ただ無くなる事は無かった

尚吾に話しかけられた時
始めに100香港ドルを替えてから既に二時間が経過していた

光の関数の精度はだんだんと良くなってきたのか
じりじりと手の内にあるチップは増えてきて
今5枚になっていた

何度もテーブルと手の内とを往復したチップ
ただ一度に精神が頂点まで集中するまでに時間がかかる為
知らぬ間に随分と時間が経っていた

二時間と言えば
帰ろうと思っていた時間を既に一時間過ぎている事になる
さすがに帰らなければならない



最後の一賭けをしていこうと何故か思った
今まで一枚ずつ賭けていたのを最後に二枚賭けようと

今日のまるまるの自分を試してみたかったのかもしない
次へつなげる為に何か強い衝撃が欲しかったのかもしれない

今一度集中しようとテーブルへ目線を近づける
何度かサイコロが騒ぎそろそろ行こうかという時に
例の大富豪がチップを使い果たして
1000香港ドル札を大量にテーブルに出してきた

一枚一枚チェックするディーラー
大きく中断された場は熱が冷めて
外の世界と溶解しだしているのがわかる



再開されるも
さっきまでの空気はどこか外へと流れ出てしまった
もう元には戻れない気がするし
そんな時間もない

でもなんでか二枚賭ける事だけはしなくてはいけないような気がして
一枚でもよかったのだが二枚を最後に
えいやっ
という感じで賭け
そしてその二枚は見事に帰って来なかった




歩き出すとすごい疲労感が襲ってきた
でもそれは開放感も伴っていて
随分と気持ちが良い


あの小さな世界での活動は
たった二時間だったけれども
新しい世界に自分が生を受けそこで成長し
世界のルールを知って活動し
そして世界の終わりを迎えると同時に
その世界での人生が終わった

一生を生きたような達成感があった





あの小世界はなんだったのだろう


前に何処かで見た気がする


この世界は物理世界である
ただ今解明されている物理は今知っている世界で通用するだけの話である
今までの経験則から導きだされた結果を整理して
関数が作られているのであって
その外の世界で通用する訳ではない

人間が新しい宇宙を開拓していけばいく程
物理は変化していくもので
今この世界のルールは絶対ではなく
むしろ全世界的には間違っているという


あのテーブルには
未だ人間が整理出来ていないルールがあった
新しい世界だったのだろうか



結局100香港ドルは50香港ドルのおまけ付きで返ってきた

200香港ドルでどれだけ遊べるか
そんな不安をしていた自分があほらしいくらい
時間を忘れて新しい世界をじっくりと覗いて帰ってくる事が出来たようだ




20100113-4.jpg


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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


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