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ABC -トレッキング四日目-


夜中までずっと降り続いていた雨は
規則があるみたいに朝しっかりと止んでいた

外に出ると今までよりも随分と暗い
そして空が今日はぐっと強く濃い蒼だ

暗いのは周りの山々がすぐそこまで迫ってきているから


20100521-1.jpg



下を見ると霞んで山々が重なっている
いつも眺める山の景色とは違う

あれらは実際に僕の足で歩いてきた山々である
それを思うと達成感だろうか光る黄色の液体が心になだれ込んでくる


20100521-2.jpg





目指すはさらに上


20100521-3.jpg






上はごつごつとした岩場が切り立っていて
その向こうにある筈の目的地は今日は見えない


でも今日はそんな雪山が見えていなくても
闘争心のような興奮が沸き立ってくる

この岩山の裏側に確かにその存在感を感じる







今日の出発は遅く、八時






山の天気は前にも書いたように
朝、澄み渡る


折角ABCに行くなら
朝にその雄姿を眺めたい

だからあと少しの距離だとしても
折角だからABCに一泊しようという事になった

だとしたらもうすぐそこ
もう今までみたいに半日も歩く必要は無い
じゃあゆっくり出発しよう、と






でも僕の心にはもう火がついてしまった

そして最近の癖で朝にはもうしっかり目が覚めてしまっている

荷物も詰め終わり
朝チャイもしたし柔軟もした
もう身体も心も準備万端

前日に心配した心にあったクールな部分も
不思議と今は影を潜めている



お兄さんは途中で出会った
同じグルン一族のトレッカー女の子二人組みとダイニングで話している
どうやら一緒に行く事になりそうだ

びっくりする事もないのだが
ネパールの人も観光でトレッキングをしたりする

よく道をすれ違ったりした



ただ僕はいてもたってもいられず
ロッジの外で山を見上げながら
たまにまた柔軟をしてウロウロしていた


そんな僕の横を先に出発したトレッカー達が
どんどんと下から登って来てそしてさらに上へと通り抜けて行く

シヌアで出会ったベルギー人カップルも
初日から所々で出会っていたハワイの女三人組も

そんな姿を何もせずに下から眺めていると
本当にソワソワしてくる




やっと八時になって出発する




今日は僕達三人だけではなく
さらにそのグルンの二人だけではなく
さらに欧米人が二人にそのガイドが一人という
総勢8人でロッジを出発する

レディファーストで僕達が一番最後に歩き出す





ロッジを出るといきなりの急な岩場


20100521-4.jpg





さっき見えていた切り立つ岩場を
直線で登って行く様な急な坂


ただそれは長くは続かない


20100521-5.jpg





それを登り切ると




そこにはとんでもない景色が待っていた



つい立ち止まってしまう

その景色はまさにそんな所


20100521-6.jpg




その岩場は後ろにあるこの景色を護る為にあったような
多分ここが神聖な空間への扉だったんだ

びっくりするような空間がそこにはあった


20100521-7.jpg











子供の時から山の足は何処にあるんだろうか、と疑問だった

『山の足』だなんて子供の発想だから
一体何を指しているのか自分でもよくわからないのだが
子供の時に一度しっかりと言葉にして思ってしまっただけに
ずっとその言葉は僕の中にあった

もう26になった僕は本気でその答えを探す事をとうに止めてしまっていたが
今ふとその答えはここにあるのかもしれないと思った


20100521-9.jpg





『山の足』という言葉の印象から
何となく麓にあるような感じがする

勿論探していた子供の僕もそう思っていた
でもそこには何も無かった


日本で山に行った時


電車からでも車からでも始め遠くに山を見る
山の稜線をはっきりと確認できる

でも頂上から視線を落としていって
そうすると段々と木々が山の表面を覆いだして
山全体が木々に覆われているなら段々と側にある山々に覆われだして
いつの間にか稜線は掻き消えている

もっとはっきりと見たいと思って近くまで行くも
そこには街があったりして建物で見えなくなり
頂上の少しの部分しか見えない

じゃあもっと近づいてみようと思って麓まで行き登山口まで行くも
その時には山の頂上は全くの上にあって
それがさっきの山なのか判断が出来ない

そこが『足元』と言えなくも無いけれども
どうしてもそれを実感するには登山口からの景色では物足りないし
何だか違う気がした

どの山の足だかもわからない
というよりこれが足?
いや足ってもっとどっしりとしていてすべてを支えるもので
あんな大きな山を支えるにしてはこのちっちゃな登山口の頼りなさそうな事

木々に覆われた中に隠れるようにしてある登山口
ここが足なのか?






ここの景色を見ると何だかその事を思い出す


20100521-8.jpg







山の大きな大きな存在感がすべて詰まっているような景色






先の道を歩くハワイ女三人組が見える

その小さい事




そして再び視線を上げると

山の大きい事





山の全身が見えている





そんな気がした




下に流れる川

そこから伸びて伸びてそのまま伸び切って辿り着く頂上





山の足はここにあったんだ





子供の頃、『山の足』を想っていた時
すごい不安な気持ちになってそれを想っていた

不安というか不安定というか

山というものを捕らえる時に
頭が見えて横に広がる胴体が見えて

あんな大きな身体をして何で足が無いんだろう
足がなきゃあんなどっしりしてられないだろうに
でも何で見えないんだろう

そんな想いがきっと『足』を探させていたんだと想う




『山の足』を探していたと思っていた僕は
実は『山の全身』を見たがっていたんだ




上から下まで一つの山




今ここから見えているのは一つの山というよりは実際には上のある部分なのだが
それでも頂上から下る稜線がしっかりと
地面まで続いているのが見える点で『山』だった

僕の疑問の答えだった



トレッカーの小ささと山の大きさの対比が
その答えをさらに強固なものにしてくれる







僕の朝からの興奮はさらに増してくる






前に歩いていた欧米人が僕に道を譲ってくれた

アリガトウを言って前に進みだす

後ろを歩くお兄さんに愛二を気にしながらも
僕の足は止まらない

どんどんとその『足元』へ繰り出したくて
疲れも忘れて進んで行く





気がつけば随分と前に見えていたハワイ女三人組に追いついている

彼女達も僕に道を譲る

何だかみんなが僕の興奮を理解して
前へ前へと後押ししてくれているみたいだ





今日の道はたまにのアップダウンはあるけれども
それでも平坦に近い

そんなのは抜きにしても足がずっとフル回転していて
疲れを感じる暇を与えない

いつもよりペースは速い気はする
息は上がってきている

でもそれでも足は止まらない





ふと小さな丘を登り切って後ろを振り返る




やっぱり小さくトレッカーのハワイ女三人組が見える




愛二達がやってくるのをそこで待つ間また大きな景色を眺める

息は上がっていて心臓も早く打っているけれどもそうじゃない
心の中が爆発しそうなくらい興奮している
それを抑えるのが大変だ
足が前に行きたくてうずうずしている


そこで待ったのは10分かもしれない5分かもしれない

でも兎に角長く感じた


向こうのブッシュからみんなの姿が確認できると
僕は早速踵を返してまた進み出した











あっという間に次のMBCに辿り着く

マチャプチュリ・ベース・キャンプ
通称『MBC』


20100521-10.jpg


人生で始めてのベースキャンプ


そこは想像していたテントがずらっと並んでいるモノではなくて
今まで通ってきた山のロッジと同じ感じだった


特に幻滅もしない
まあこんなモノだろう


と思ってしまうのは
別にそのMBCがさびれている感じだからではない

その裏にあった景色がまた凄かったからだ


20100521-11.jpg






マチャプチュリとはアンナプルナの周辺にある山の一つ
別名フィッシュテイルと言って頂上付近が魚の尾びれのように見える
切り立った6000m級の山である

アンナプルナとこのマチャプチュリが
ポカラから眺めて見える自慢の景色

このマチャプチュリのベースキャンプなのだが
実はまだ誰も登頂に成功した人がいないという
ハードな山である


20100521-12.jpg









そのMBCに到着してみんなを待とうと思う





そこで休憩を終えた欧米人のトレッカー集団が
今まさに出発せんとしている



僕はこの先の道がどうなっているのか確認するつもりで
荷物をほどかずにその集団の後ろについて行く

とそこには緩やかな道が続いている



足に相談してみる

足はまだまだ全然余裕だと答える



むしろ止まるとこの勢いが止まってしまって
もう金輪際こんな大フィーバーはやってこないように感じた




みんなには申し訳無いと思いつつも
このままの勢いで行く事にした




僕の前には欧米人グループのいくつかの背中が見える
そしてその奥にはいくつかの丘が続いている


追いついては立ち止まりまた歩き出す
するとまた追いつく


何度目かの丘を乗り越えて
グループが立ち止まって水を飲み始めた

そして後ろを振り返って何事かを話し合っている



僕はその横を通り抜ける



そのグループのネパール人ガイドと
通り過ぎる時に少し会話した

その時に自分の息が想像以上に上がっている事に気が付いた



そろそろ一休憩しようか



頭にはさっきの欧米人達がある
彼等の視線の先が気になっている自分がいる



次の丘を登り切ったら休憩しよう



そうやってそこに現れるだろう景色を
想像しないようにしないように
興奮を抑えて一気に登り切る







丘からの景色は







そんな想像しなかったお陰か
膨らみきらなかった興奮を思いっ切り引っ叩いて
引きずり出すようなどでかいインパクトを持っていた


20100521-13.jpg





なかなかそこから後ろに向き直ってまた歩き出す事が出来ない

僕はリュックの帯を解いて杖も置き
そこで暫く山を眺めた









グループが僕の横を通り過ぎて少ししてから
僕はまた歩き出した


でもさっきの景色が忘れられなくて名残惜しくて
何度も振り返りながら歩いて行った


また見たくなって僕はだだっ広い丘のようになっている所を見つけて
道を外れてそこに登って行った

丘の上からの景色はまた僕を興奮させ
そして今度は安心させた

グループはその丘を迂回する様に向こうの方に列を成して歩いている







満足してそのまま道に戻ると
僕はグループの前に立って歩いていた







程無くして大きな岩が道の側にあるのが見えてくる

近づいてみるとそこには

『ABC 1 HOUR AHEAD』

と書いてある


その岩の背景に雲に隠れた雪山がいる


20100521-14.jpg







もうすぐそこ


そこまでやって来た






持っている杖を思いっ切り前に突き刺して
息が上がっているのもお構い無しに休憩無しでまた進み出した





あのポカラから

山のずっと向こうに
雲のずっと上に見えていた

本当の山に

今着こうとしている






独りで大きな草原を
周りを山に囲まれて歩いていると

何だか元気が出てくる







視界の開けた所で夜空を見上げそこに満点の星が見えていたりすると
何だか凄い恐怖感に襲われる時がある

宇宙というトンでも無くデカイモノが
その存在を包み隠さず僕の前に姿を晒してきていて
僕の小ささを分からせようとしているような気になるのだ

しかもその宇宙は実は全部を見せているようで
ほんのちょっとしか見せていない


大人が赤子をひねる


まさにそんな感じで

「ほれほれ」

とやられているような気になる
それが漠然とした到底敵わない恐怖感となって
心を鷲掴みにしてくる








こんな大きな山々に囲まれていると
そんな畏怖の念が湧き上がってきそうだが

長い間見えなかった山の全身を見た僕は
そんな山々が今や僕の背中を押しているように思えてしょうがなかった









そうやって








僕は遂にこの足でABCに辿り着いた


20100521-15.jpg





山の足に僕は辿り着いた











ロッジまでの階段を登り切る
最後の石段



最後の段のすぐ側に見晴らしのよさそうなベンチがある

荷物を置き杖を置く

座って眺めるとそこには今まで通ってきた道が
やっぱりしっかりと自分の足元にまで続いていた


20100521-16.jpg







3時間のトレッキング終了
ABC泊

4130m地点


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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
    now : Quito ( Ecuador )
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