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苦労人サノ氏

彼の家に着くと母親とそしてお手伝いさんの子供が一人
充分な広さの2LDKでバルコニー付き
サノさんの部屋にだけクーラーがついている

これはインドでは珍しい
基本的に冷房がついている部屋など無い
言ってみれば中流階級以上の家である事を意味しているが
さらにはサノさんがほぼ『日本人』になっているという事を表している

「もう冷房無しには考えられない」

日本で買ったジーンズにTシャツを着て
自分のベットにごろっとしながら言う

日本での仕事を一旦辞めて二ヶ月くらいの予定で
一度インドに帰ってきている最中なのだが
そんな彼は僕達と出会った時インドの水にやられてお腹を下している最中だった


一緒にレストランなんかに行った時も
僕達はメニューよりも先にグラスがやってきて
水が注がれるのだけでワーワーはしゃいでいたのだが
サノさんは

「この水は気をつけた方がいいよ」

なんて言ってそれを下げさせて
ミネラルウォーターを頼んで飲んだ


サノさんにはもしかしたら失礼な言い方かもしれないが
もう身も心もかなり『日本人』である


そんなサノさんだが最初から日本行きを目論んでいた訳ではない
実は始めは「日本なんか」よりもアメリカやヨーロッパに行くつもりだったそうだ
それが何で日本行きになってしまったか

その理由はある日本女性にある





サノさんはマーケットで有名人である

まず最初にサノさん自身に言われた事なのだが事実そうであった
客引きならまず殆ど知っているし僕達がマーケットに行こうとすると
日本人と認めた客引きはまず僕達を何処かの店に連れて行こうとするのだが
僕達が初めてでなく友達が居ると言うと必ず「サノさんか?」と聞いてくる

客引きだけではなくて
建物の外(ニューマーケットには大きな建物があってその中にお店が沢山あるのだが
その周辺にも屋台として沢山のお店が並んでいる)のお店のおっちゃんも
殆ど彼の事を知っている

それは彼がここで8歳の時から働いていたからだろう


よくお店には小走り使いとして小さな子供がいたりする
これはインドではよく見かける
道端で身寄りも無くぶらぶらしている子供が拾われたり
親戚伝いに呼ばれたりするらしい

そんな感じで彼はそんなに小さな時からここであっちこっちを走り回っていたのだ


実際サノさんのお店にも今可愛い男の子が同じ事をやっているが
彼はとても礼儀正しくプライドがある


20100612-3.jpg


写真を撮ろうとすると髪の毛をセットして
唇をきゅっと締めポーズを取る
写真をチェックして納得いかないのかほぼ必ず首を傾げて
今度は別の場所でポーズを取る

きっとサノさんの精神がいつの間にか浸透しているのだろう


男の子はとても子供らしく笑顔も可愛いがプライドをしっかりと持っている

サノさんが子供の頃マーケットで働いていた時の話を聞くと
今成功しているからさらに響いて聞こえるのだろうけれども
それはそれは強い願望を持って仕事に取り組んでいたのが伝わってくる


20100612-4.jpg


「僕は絶対に大きくなってやる」
「頭を使えば簡単に何でも出来る」
「今知らなくてもすぐに出来るようになる」

強烈な言葉がどんどん飛び出してくる

その頃は兎に角こなす事をどんどんこなして
貪欲に吸収して大きくなっていったようにみえる

サノさんを見て育っている男の子
サノさんもその男の子を可愛がっているようだった
自分の小さい頃を重ねて見ているのだろうか



びっくりしたのはサノさんが前に毛嫌いするように言った
その日暮らしの営業方法を昔彼がしていたという事だ

彼は言った

「当たり前のように嘘を言ってお客さんに売っていた
 でもあの時はそれでいいと思っていた
 今はもう思い出したくも無い」

その頃の営業成績はとても良かったらしい
本当に誰にも負けなかったのかもしれない

サノさんは使い走りから店を任されるまでになった
いや正確には店の少しの部分を借りて自分で商売を始めたのだ
勝手にその店の中に壁を作り新しい扉を作り商品を仕入れ
そうしてどんどんとのし上がっていったという

「どうせ、、」

と思いながら一度キリと思ってお客さんと対応していた
彼は嘘をつき続けそうして商品は皮肉にも売れていく

ただ彼を時たま罪悪感が襲う
それが歳を追う毎に増してくる


気が付いたら色んな事にがんじがらめになっている
罪悪感から解放されないけれども
だからといって毎日の繰り返しの商売を止める事も出来無い

きっとそんな毎日から飛び抜け出したくて
サノさんは海外に行く事を考え出したに違いない

勿論彼自身が言うようにもっと自分を大きな舞台で試したかったのもあるだろうが


20100612-2.jpg



そこで見えていた舞台はアメリカであってヨーロッパだったのだが
そんな大きな夢を持ちながらあくせく毎日を過ごしていた
16歳の時のサノ少年の前に日本人女性観光客がやってくる

サノ少年は初恋をした



、、

果たしてこんなに詳しく書いていいのだろうか、、
了承を得るのを忘れてしまったので詳しく書くのは控えておこう




サノ少年はここで日本に行く事を決意する


彼女に会いに行く為に




ただそれは残酷な夢だった




実際19歳で日本に飛び出してきたサノ少年は
泣きじゃくる彼女の顔に出会う

それは残酷な夢だ





きっと彼女は旅先での些細な事であったかもしれない

この間も書いたがサダルストリートを歩いていると
どれだけの日本人女性旅行者と関係を持ったかを自慢げに話してくる人が沢山居る

そういう相手ならいい
お互い様だろう
きっとお互いそういうつもりであろうし

ただここにはそういった人ばかりではない
というか当たり前だ、日本にだって世界中にだって色んな人が居る

サノ少年はまさにその犠牲になった訳だ





サノ少年はそこで思った

もう日本まで来てしまった
じゃあここで何かをするしかない

会社の面接に行く

まだその時は日本語は喋れない
それを言われれば
「今はわかりませんが覚えます」

その会社は機械を扱う所だった
それを言われれば
「今はわかりませんが覚えます」

自信にみなぎってそれを言った事だろう
そして彼は実際にそれを遣り遂げる



サノさんの今の給料はびっくりするくらいになっている
しかもこの世界に名高いニューマーケットに店を4つも持っている

一つはついこの間買ったのだが
そこにかかったお金を聞いて僕はさらにびっくりしてしまった
これだけあれば東京の都心にかなりいいマンションを買える
そんなのを四軒も構えているなんて
しかもすべて自腹一括だという







そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのバリバリの青年実業家まで上り詰めたサノさん

使い走りから店を持つまでになって
ニューマーケットでの成功のままその勢いで日本に乗り込んで
そうしてここまでやってきたのだろう






とそこまでで充分尊敬の眼差しであるが
話はそんなにギラギラの闘争心によって突き抜けるだけの話ではなかった





家でとても美味しいダルバートを戴いた後
満腹のお腹を投げ出しながら話している時だった

サノさんはビジネスの話から家族の話になって時間は過去にとんだ


彼は突然正座した
いつも相手の目を見て話すサノさんの目は中空を見つめている

彼の話は強烈だった


しかも一つきりではない
後から後からついて出てくる

悲痛な過去を持つ主人公が出てくるドラマ
その百科事典みたいなのがあってをそれをめくりながら
目に入ったモノを手当たり次第に喋っているんじゃないか
そんな気がしてくる程


『典型的な不幸な過去』


と書いてしまうとサノさんに申し訳無いが
こう書くのが一番判りやすい

きっとこう書くと判りやすいのだから日本においてはもう現実味の無い
虚構の中の一つの『型』になってしまっている訳で
今の日本ではほぼ起こりえないだろうし
そして観る聴く方もドラマの中の話として片付けてしまうような

そんな不幸




僕はもうその話を聞いている時は何も言えなかった




今までのビジネスの話などは
『信用』や『自信』や『関係』とか
そういう人であれば接するだろう言葉が出てきて
僕も想いを吐き出して会話をしていたけれども


彼のこの話は『会話』として成り立つには
あまりに僕の世界から離れていた


しかもタチが悪いのが(書き方が悪いが)









彼が僕と同い年であるという事だ








そうこれが僕の中で結局一番衝撃だった


サノさんがもうちょっと年上だったらもしくは年下でも

どちらにしてもそこで世界の断絶が
ある程度「しょうがない」として僕の中に捉える事が出来ただろう
でも同い年という事は全く同じ歳で大体同じ背丈で大体が同じ中に居る

彼が「僕が8歳の時、、」と言えば
僕の頭は勝手に僕自身が『8歳』の時を思い出す訳で
そしてこの場合、僕が8歳の時にランドセルを背負っていた
まさに時を同じくして彼はそれをしていたという事になる

直接的に僕の過去に結びついてくる
「しょうがない」というガス抜きは無く
モロに衝撃がやってくる

その衝撃自体も強烈だったというのに





僕は





恥ずかしかった







僕は『自信』がある程度なければ何事も成し遂げられないと思っている
なのでサノさんのその自信はとてもよくわかる

けれども蓋を開ければサノさんの『自信』は
僕が持とうと思って必死になっていた『自信』とは種類が違った
正確に言えば僕にとっての理想の『自信』であったけれども
僕には到底手に入らないとおぼろげに自覚してしまっていたもの

僕のはそうでなければダメだから無理にでもひねり出している
という『虚構の自信』だった
いや認識はしていたのだがもうこの世の中には
そんな虚構の自信しか存在し得ないとすら思っていたのだ


けれどもこんな所にあった

彼は成し遂げなければならない必然があったからこそ
そうやって実際に培ってきた『実質の自信』だった





一体僕はどうしたらいいんだろう




もうそこにはそんな『自信』を生み出す物は無い

ような気がする




というか恵まれた世界

勿論日本を含んだ意味での



そこにこんな『自信』が生まれる所は存在するのだろうか




何も『不幸』や『貧困』がすべての出発点と言っているのではない



『自信』を勝ち取るまでのプロセスが
きちんと日本にはあるのだろうか



そういう不安が僕の中に出てきた








僕はその時必死に頷くだけで

殆ど何も言えなかった



20100612-1.jpg





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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


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