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パソコン・デリー・ミンチ

[20100708]


さて、一体どのように書くか今日という日を


慣れてきたこの旅
出来てきたリズム

それが崩れたといってもいい







いくらデジタル時代、情報化社会といっても
すべてがそこに集約されているとは言わない



でも、









パソコンが今の僕達から無くなるというのは
なかなか、、









パソコンの中には写真や書類が入っている訳だ
記念というだけではない
出来る限り荷物をコンパクトにしたい僕達は
ほぼすべてのモノを重さの殆ど無い
デジタル情報に出来るというこのツールを最大限に利用していた訳だ

お陰で重たくなる紙やノートを少なくする事が出来ていた





為に、




ほぼ全てを同時に失う事になったのだ





バックアップを全く取ってなかった訳では無い
外付けのハードディスクを買ってそこにある程度はデータを入れていた

でもそれは膨大な量になるであろう
写真の置き場所としてまずは考えていて
まだバックアップ用としては使っていなかった

台湾で一人一台のパソコン体勢になってから少し経ち
このインドにいる間にしっかりと整理して
その後でバックアップを取るつもりだった





その矢先だ

まさにもうすぐインドを発つ
そこが言ってみれば整理をする当面の目標であって
そこに向けてデリーの日程も長めに取ったのだ





まさかこんな事になるとは

























この日はオッキーと三人で外を出歩く事に
データ整理で殆ど宿に篭ってパソコンをかちかちやっている僕達
さすがにデリー観光は一度はしなくてはいけない

既にデリーを知り尽くしているオッキーの案内の元
地下鉄に乗ったりして昼間いろいろな所を回った




そして夕方宿に戻る




日差しでぐったりしていた僕は宿の近くに見つけたとびきり安く旨い
マンゴージュースを飲んでから帰るといって二人と別れた

氷を混ぜてシェイクされたきんきんに冷えたジュースを飲んで
頭がきーんとなるのに身を委ねて少しリフレッシュ
そのまま気持ちのいい感じで宿に戻る


路地に入り看板と扉の取れてしまった
事前に知っていないと分からないような入り口へと入っていく
照明など付いていない暗い階段を上って僕達の宿へ

一階分上ると警備と使用人としてオーナーが雇っている
まだ中学生にもならないくらいの子供が寝るベッドが現れる
その子供はいつも無口で話しかけても殆ど反応が無い
肌の色は浅黒く、白いしっかりと見開かれた眼がすごく強い

かといって仕事が雑な事は無くいつも忙しそうに何かをしている
途中オーナーに呼ばれるとすぐに向かう
オーナーには随分と忠実なようだ
というかオーナーにしか忠実ではなさそうだ
他に泊まっているどの人にも彼はなついている様子は無い

夜はベッドの目の前にあるシャッターが閉まっていて
その子供を起こして中に入るのだが今は開いているのでほっとする


ベッドの隙間を通って中庭へ出る
中庭の左手には二つのトイレシャワー
その隣はいつも開きっぱなしになっている部屋
オーナーの身体が随分と大きなお母さんがいる部屋

お母さんは基本的にいつも宿にいて、動くのが辛いのだろう
基本的な事は殆ど使用人にやらせて常にその部屋のベッドに横になっている
そしてただ起きたり寝たりを繰り返しているように見える
でも語り口調はとてもしっかりしていて、そして優しい
一家を常に見張り、見守る、肝っ玉母さんという貫禄
家宝なのか寝そべっていても常に短刀を肩から提げている

その隣にはキッチンがあるが殆どの場合鍵がかかっている
そこから部屋が順々に並んでいる
オッキーはその内の一つに泊まっている


僕はそんな中庭を横目に右にまた続いている細い階段を上って
上階にある僕達の部屋に向かう

そこが最上階なので日差しは一杯に受ける
なかなか熱くて大変だが開放的でいいといえばいい

階段を上り切ってここにある二部屋を繋ぐ廊下に出る
廊下の欄干にはいつも大きなシーツが部屋の前に掛かって干されている
欄干の上から覗けば下の中庭とオーナーの部屋がよく見えるが
それがある事によって部屋からはあまり見えない


僕がまだ口の中に残っているマンゴージュースの味を楽しみながら
その廊下までやってくると何故か愛二がドアの前に立っていた

その様子は『ただ突っ立っている』という感じだった
不吉な印象さえ与える

ただそんな印象はなかなか現実の自分に動揺させないようになっている
それは今まで生きてきた処世術のようなモノか
あまり驚かないように
いちいちやっていては身が持たないし、何より相手に隙を見せてしまう
そんな卑しい処世術
それは時に反射的な行動力を削ぐ

今度の場合もそんなちょっとした印象はすぐに葬り去られ
「鍵忘れてった?」
なんて言いながら愛二に近づいていく


近づいていくと壁に隠れて見えなかったドアが見えてくる
いや正確には緑色に少し傾いたドアが見えてくる筈なのに
見えてきたのは部屋の中の景色


ドアは開いている


ドアは開いているのに中に入らずに
その正面で突っ立っている愛二

明らかに不自然な光景
またさっきの不吉な印象が心に戻ってくる
でもこびり付いた処世術がそれにまだ抵抗する

またいつもの愛二のおどけだろう
そんなふうに捉える


「なになに、どうしたのさ?」
「いや、帰ってきたらドアが開いてた」
「ほんとうに??」
「そんでもってパソコンが無い」


そこで部屋を覗く
部屋一杯に面積を取っているダブルベッド
そして唯一の机の上には沢山のペットボトルに本やらが乗っている

さて僕達は今日パソコンをどうしたんだっけか
そういえば今日は面倒くさがったのかすぐに帰るつもりだったのか
パソコンをしっかり切らずにそのままベッドの上に放置して
外に出てしまったのを思い出す

もう一度何も無いベッドを見る
初めて見た時は何も不自然ではなかったそのベッドが
すごく不自然に見えてくる

二つの黒い塊が確かにそこには無かった



「え?ほんとうに??」


と愛二に聞いている間もまだ殆ど信じていなかった
さっきの印象はまだ心に到達していない
心は愛二がどこかに隠してちゃかしているのだと
そう信じている



「いやいや、まさか」



全く表情を変えない愛二
何かハッキリと確信を得るまでは絶対に信じない!
そんな意固地な心



















二人でオーナーの所にまずは向かう
オーナーはびっくりしたように声を上げた


「まさか!」
「今までそんな事は一度もここではなかった、、」


そして僕達は警察を呼びたいと申し出た
すると予想外の返答がやってきた


「警察を呼ぶのはよしなさい」


いや、予想外ではあったけれども
僕が想像しているこの事件の予想を組み替えれば十分理解できる返答だ
ここはインドであり、僕達は旅行者だ
何があってもおかしくない

オーナーは続けた


「インドの、特にデリーの警察は酷い
 やってきたらただただ時間を浪費して結局何もしてくれない
 待たされるだけだよ
 私に知り合いの警察官がいるからそっちに連絡してみよう
 そしたらすぐに来てくれる」


もうほぼ間違い無い
すぐさま出てくるこの話
きな臭いにも程がある

僕達がそれでも警察を呼びたいといっても
向こうも丁寧ながら段々強く否定してくる

向こうに警察の知り合いが本当に居たとしたら
実際にここで僕達が強引に警察を呼んでも
その警察は丸め込まれてしまう
そして少なくともここの宿の協力が少しでも必要なのだから
ここは乗らない訳にはいかないのかもしれない


頭がぐるぐる回る
何かすぐにでも前に進もうと焦っているかのよう

状況が変われば、色んな登場人物が現れれば
もうちょっと全体像が見えてくる
まだ全然見えない
その前にまだ実感が出てこない

状況の変化によって
何とか今だに届いてこない不吉の印象を実感として組み込みたかった


















別の所に買い物に行っていたオッキーが戻ってくる

事情を説明しながら段々と思い出していく




出る前につけたドアの南京錠
あれは僕達の持参の南京錠
そういえばここにチェックインする時の事を思い出す


最初に宿の中を案内してくれたのはオーナーの息子という人
日本で働いていた事があったとかで日本語が喋れる
だからか日本人と分かると兎に角よく喋る

ただ多くは営業に関する事で
ミクシィをやっているか
コミュニティがあるんだ
インドのコミュニティに是非ここの宿の事を書き込んでくれ
そんな事まで言ってくる


その彼に部屋に案内された時
最初ここの宿の南京錠を渡された
でも彼はその時に

「知ってるとは思うがインドはとても危険だ
 だから僕達ももしもの事があったらなかなか責任は取り切れない
 みんな自己責任だ
 だからもし自分で信頼する鍵があればそれをつける事をお勧めするよ」



そして今日そのつけていた僕達の南京錠はどこかに無くなり
ドアは開いていた




















息子が夕方になってやってきた
彼もまずこう言った


「こんなことは今まで一度も無かった」


そしてお母さんと同じく友達の警察に相談する
そのメリットを延々と喋ってきた


「僕も一度家を荒らされた事があって
 その時被害届を出したのに全く相手にしてくれなかった
 結局何もしてくれないまま終わってしまったんだよ」


その話の途中にお母さんに呼ばれて行く


「知り合いの警察官に連絡が取れた
 しかも上官だよ
 ただ、ちょっとお金がかかるんだよ、、
 それは覚悟してね、、」


お母さんは上官という時に肩に二本の指を乗せた
賄賂という事なのか
お母さんは1500ルピーというトンでも無い額を言った
いや、そんなお金は払うつもりは無い
そうすると息子の方がやってきて僕達の後ろから言う


「これがインドなんだ
 インドの警察は腐敗しているんだよ
 しょうがない」





















お母さんの準備が出来て外に向かう
知り合いの警察官に会いに行く

外に出て1ブロックを回る
途中小さなお寺がありそこでお母さんは御参りした
僕達は外で待っていた


交番はすぐ近くにあった
照明は暗く三人の警察官が何事か喋りながら無線をいじっている
そこのベンチで待っているとある人が大きな音を出しながら入ってきた
中で喋りあっていた全員が一斉に起立する
彼の肩には二つの星が光っている

奥の部屋に消えて行きそしてその後をお母さんが
僕達を待たせたまま追いかけていく

しばらくして呼ばれる
大きなデスクの上に書類が雑に山積みされ
その中央に無理矢理に作ったスペースに大きなパソコンが置かれ
その光に照らされてしかめっ面をしたさっきの星二つの警官が座っている

お母さんはその隣のスツールに大きな身体を何とかおさめ
僕達が部屋に入ってくるのを見守っている

英語で座るように言われる
その英語はハッキリと発音されたが何だか急いでいるふうだった
星二つの警官の前にあったパイプ椅子にそれぞれ僕達は腰を下ろす


たった一言二言を話した後に僕達は外に出ているように言われた
お母さんと星二つ警官の話し声が聞こえてくる

そしてお母さんが部屋から出てきて僕達に囁く


「5000ルピーと言っている」


盗難届けに5000ルピー!?
ふざけるのもいい加減にしろ
むしろ払う事事態がおかしい
そしてそんなお金など持っていない

そう怒り気味でお母さんにいうと
彼女はまた部屋に戻って行った
二人が話し合っているのがわかる


戻ってきたお母さんの顔は少し疲れていた
そして笑顔を作って言った


「作ってくれるそうよ」


そして僕達に掌を出した























白い紙に何を盗まれたか
そしてどういう状況だったかを書かされた

予めお母さんに言われていた事を書く
お母さんはそれを監視するようにその時まで僕達から離れず
そして宿で待っているから、と一人先に帰っていった


僕達はその後一人の私服の男に連れられて
近くの警察署に向かった

警察署の待合室でしばらく待たされる


ぐるぐる回っていた頭に状況の中に
久し振りに訪れた休憩

その時に自分の心が不吉をやっと受け入れているのに気づく


お母さん、息子、警備の子供、警察、
欄干に僕達の部屋を隠すように干されるシーツ、
他の客が今日全て出払った事、


今までの登場人物達
出来事

それらがやっと心の中で引っ張り出されて
どうしてもそうなると愚痴っぽくなる

愛二と僕はその待合室でブツブツと喋りあった
そうする事しかその時は出来なかった
すでに手は打たれそれを待つだけだった


























無事に盗難届けが出され僕達はまた来た道を
私服警官の案内の下引き返す

お母さんに


「私服警官だというその人は警察署の後、交番まで届けてくれる
 そしたら自分達だけで帰って来るんだよ」


そうやって最後僕達に耳打ちしていったのだが
私服警官は結局そのまま宿までやってきてしまった

お母さんと息子は、お母さんの部屋で待っていて
私服警官の姿を見るとすぐに立ち上がって部屋に招きいれた
僕達もその部屋に一緒に入るように言われた

そこで何か話し合っている
お母さんに息子は恐縮しきっているようで
何度も頭を下げ、どうやら礼を言っているようだ

そしてその度に私服警官は言葉短く返している
ただなかなか彼は席を立とうとしない

しばらくして息子が僕達に言った


「500ルピー下さい」


言葉も出ない、、
しかし、一度開いてしまった財布はなかなか閉まらない、、
僕達の手から息子は乱暴にお金を奪い取ると
私服警官のシャツのポケットにやはり乱暴に突っ込んだ

ずっと静かだった私服警官は
急に活動的になってその手を押し返そうとする
息子はいやいや!というように首を振って
是非とっておいてください、というような事を言っている

私服警官の抵抗はすぐにやみ
では、遠慮無く、ありがとう
というように軽く息子に会釈し、すぐに立ち上がって宿を出て行った

その間、私服警官は一度も僕達を見なかった


























次の日、

部屋をキッチンの隣に移動した僕達を息子が訪ねてきた
また「ほんとうにこんな事は初めてだ」と言った後に


「インドは、そしてデリーは本当に酷い所なんだ
 経済発展はしているが、それが余計に酷さを増している
 周辺からどんどん人が集まってきていて
 まだ整備の整う前に物に人は溢れている」

「その為に物価は一年毎にすごい勢いで上がり
 年を追う毎に治安も悪くなっている
 そして警察も、、」



























デリー



いつの日か秩序という串がこのミンチの肉みたいな
ぐちゃぐちゃの中に通される事はあるのだろうか

いや、ミンチになった時点で
串を刺してしっかりと支える事はもう無理なのだろう

もうここはきっと骨までも一緒に潰されている
小さな軟骨さえも探すのは困難だろう









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Re: No title

一体この気持ちをどこにぶつけていいのやら、、
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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
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