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そして拾う神あり

[20100710]



事件があってからも数日はその宿に泊まり続けたが
勿論居心地が良い訳も無く一刻も早くその場から離れたかった
正直を言えばインドがもうお腹一杯だった

先日書いたように僕達のインド滞在は既に決まっていて
特にインドに執着しなくなっているのに加えて今回の事件だ

もう完全に僕達のインドに対する気持ちは折れてしまった




無事に盗難届けも手に入り
インド後の旅へ向けた荷物整理も一通り済んだ
きっとインドがこれからの旅の中で一番物価が安いだろうから
ここで色々と買い足そうと思ったのだ

新しく買ったいくつかの物をリュックにつめると
ネパールで整理して少し余裕の出来たリュックは
元の巨大な大きさに戻り重さもずしっとくる

前かがみになりながら後ろを振り返る余裕も無く宿を後にした
きっとそれは重さのせいだけでは無かったかもしれない



オッキーと三人大きなリュックを背負って
相変わらずの暑さと雑然さに渦巻いている街を歩いて行く

行き先は決まっている











オッキーとネパールのカトマンズに居た時に随分とお世話になった物がある
それがチベタン

チベット料理である


東南アジアのカッとする料理
それを食べ続けていた僕達
そんな中、やんわりとした日本を含む
東アジアのほっとする味を思い出させてくれた料理

ネパールはチベットに近い事もあって沢山のチベットレストランがあった
そこに三人でよく通っていた


今、またその安らぎを求めて








デリーの郊外にあるというチベット難民キャンプ
その存在を教えてくれたのは
またしても僕達の南アジアの先生オッキー


チベット難民キャンプといっても既にその歴史は長く
しっかりとした町として発展しているらしい
そこには宿も勿論あるという

もう今回はインドに未練は無い
残り数日、そこでぬくぬくとしようと
完全に折れてしまっている僕達の心はすがるような気持ちでそこへ向かう



ただ弱った気持ちは物事をすんなりと進めるには力が足りなすぎた











最寄りと思っていた駅で降りる
そこから歩いて十数分という前情報

貧乏旅行の僕達は気持ちが折れていようと荷物が重かろうと
条件反射で歩いていく事を選択する

駅前に出るとトゥクトゥクの運転手がやってくる
当然断り、逆に場所を聞く
運転手は乗せたいのだろう


「そこは遠いから乗りなさい」


といつものように言う
それをいつものように無視し
その場所までの方向を聞く


相変わらず聞く人聞く人答えが違うが
大体を総合して一つの大通りを歩いて行く

途中停まっていた警察車両
オッキーが警察官に聞いてくれ
僕達の出した答えが間違っていなかったのを確認して再び歩き出す











歩けど歩けど大通りは果てしなく伸び続けている
日差しと微妙な上り坂が激しく体力を削いでくる

大通りらしく両側には大きな建物が続いている中
小さな店が立ち並んだ一角が見えてきた

転がり込むようにその中の一つのショップに入っていく



「ここはチベットコロニーですか?」



息が上がりながら何とか聞くけれども
誰も英語が分からないようだ

ただ、

『チベット』

という言葉に全く反応が無いという時点で
ここはそうではないという事だ



仕方無くまた大通りへ

一度期待しかけた為に心は余計にひ弱だ
三人の間の言葉もどんどんと少なくなってくる


20100710 (3)








先に見えてきたまた一つのショップ
その立て看板にあったメニュー
それを見て僕達の沈んだ空気はパッと弾けて
どこにそんな力が残っていたか足早にそこへ向かう

そのメニューは懐かしいチベット料理の名前が並んでいたのだ


そこの店員は確かにチベット系の顔をしていた
またしても息を切らせながら聞いてみる






ただ





その答えは僕達の飛び跳ねている心から力を一気に抜いた

再び大通りに戻る気力まですべて抜けてしまった僕達は
その店の椅子に座り込んだ


冷蔵庫から出されたきんきんに冷えたコーラ
店員さんが大きな扇風機を僕達に向けてくれた

びしょびしょに濡れたリュックの背中
汗で模様のついたTシャツ
力無くなかなか続かない会話

殆ど放心状態で大通りを流れる車の音を聞いていた














ここでコーラを頼んじゃあ意味無いじゃん
これで道に迷って辿り着かなかったら意味無いじゃん
最終的にトゥクトゥクに乗る事になったら意味無いじゃん

最初から乗ってたら、、、







そういう事じゃない

きっとこれこそ旅なんだよ


いつもそう思っていた

今もそう思っている






何故なら




こうやって歩いたからこそ誰かに道端で出会う事があるかもしれない
全く自分の想像しなかった所へ連れて行ってくれるかもしれない
何かに遭遇するかもしれない
全く自分の経験したこと無かった出来事を見せてくれるかもしれない

それにアンテナを立て
それを日常の中に発見する為に



だから



これが失敗では無い
成功、失敗というくくりはおかしいか


兎に角、力まずにそれを肯定的に捉えて歩いてきた

良いも悪いも置いておいて
こうやって歩いて行くのが好きなんだな

旅だからとかそういう事じゃなくて
性格としてそうなんだろう





そんな想いがやんわり頭にやってくる
そして失笑する

力まず肯定的にやってたと言いながら改めてこうやって思うって事は
きっと今僕はちょっと本気で疲れているんだろうな
それに気が付いて失笑した















いつまでもここにいる訳にはいかないので
重くなりそうな腰を上げる

ひんやりとするリュックにびっくりしながら背負い
また元の道を戻って歩いて行く


少しすると近代的な建物が現れる
電車の駅だ
結局一駅分歩いてきたみたいだ


駅から出てくる人を捕まえようとしているトゥクトゥクが
すぐさまやってくる

あっという間に道を走っているバイクタクシーや
他のトゥクトゥクが群がって来て口々に自分勝手な事を言う


もう十分に参っている僕は危うく叫びそうだったが
そんな中一台またバイクが僕達の所にやってきた

そのバイクは他のバイクとは違って
小さな子供を乗せている
運転手はシク教徒の大きなターバンを巻いている
彼は他のドライバーが叫ぶ合間を縫って僕達に話し掛けてくる

僕の頭はまだ混乱していて
すべてをいっしょくたに扱って何とかその場を切り抜けたい一心だった
ただその彼が他の人達と違う口調や空気を持っているのに気がついた

他のドライバーを無視してその彼に聞いてみる
そうすると丁寧な口調で話し始めた


「そこは僕の家からすぐ近くだよ
 この道を真っ直ぐ行くんだ
 バスに乗って行くといい
 バスで三つ目の駅だよ」


バスという単語が出てきたので何だか安心した
バスで三つ目なら、いつもなら歩いて行く距離だが
何だかこの人の親切に乗りたい気持ちと
もう体力が殆ど残っていないというので
その人ともっと話す事にした


「バス停はちょうどこの道の反対側
 あの木の下だよ
 あそこで待ってれば大丈夫
 そこから三つ目の駅」


とても親切に、降りる駅の名前に周りの特徴まで教えてくれた
バスの値段も教えてくれ
そんなに高くないのでその方法で行く事にした


ありがとうを言うと彼は走り去った
僕達は言われた木の下へ向かうために大通りを渡る

渡ってからそこへ向かうと
さっきの目立つピンク色のターバンが木の下にいるではないか

何とすぐに近くの距離なのにそのバス停まで
僕達がちゃんと来るように待っててくれたのだ



タイミングよくバスがやってきた


「このバスだよ
 さあ乗って!
 降りるバス停は三つ目ね
 僕もそこまで行くから!」


僕達がバスに乗り込むのを確認して
息子を乗せたピンク色ターバンの彼は
大きく音を立ててバイクで走り出した
















言われた所で降りる
ちゃんと彼は居た


僕達は少し喋りながら歩いた

何でこんなに親切にしてくれるのか
ついこの間出来たインドに対する暗い気持ちが
どうしてもこの親切心に対して戸惑いを持ってしまう



「今日は日曜日だからね
 仕事が無いから時間があるんだよ」


それが理由にしては随分と大きな親切である
何だかひ弱な心が溶け出してしまいそうだ

つい愚痴を言ってしまう


「そんな事があったのか
 確かにインドは悪い所もある
 でも、いい所もあるんだよ」


行動に現せている人の言葉は
やっぱり説得力がある




時間があったら是非遊びに来て欲しかったな
連絡先をあげるから何かあったら連絡してね

そうやって彼と息子は僕達に手を振ってさよならをした


20100710 (1)















それからまた暫く歩いた
彼に教えられた通り右へ左へ


そして





大通りの向こう側に

建物の上に仏教の五色旗がなびいているのが見えてきた


20100710 (2)





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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


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