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激しく眩しく -マラソン当日3-

前を向きながら走っている




でも無意識に隣の往路を
走ってくる人達の顔を見ていた


いろんな顔がある

人種もバラバラ
年齢もバラバラ

表情はその顔の造形の違いに関係無く
楽しそうなら笑顔で走り
辛そうなら顔を歪め
喜怒哀楽を顔に載せている


表情は決まりが無い
それでもみんなが識別できる






そんなみんなが
またそれぞれ思い思いの動作を

手足の動かし方
頭の向き
音楽を聞きながら
コスチュームを着てポーズをとっていたり



違いを感じると
その数の多さがよく感じ取れて
本当に沢山の人が今自分のように
いろんな事を経てきて
いろんな事を考えて
そして
それを頭の中に抱えながら
足を前に出す
その行動に包み込まれている








往路にみんなの顔は見えない
みんなどの辺りを走っているんだろうか

みんなどんな気持ちで今走っているんだろう
足は身体は
どんな感じなんだろう




そして自分は
今どんな状態だろうか





足は前よりも軽く感じてきた
というより足を前に出して走る
その動作が当たり前になってきて

普段歩くのが当たり前で
走るのはその上の負担

でも長い間走り続けていると
歩く事を忘れて
走る事の負担が当たり前になって

それに気が付いたら身体が軽くなった感じがして
そうしたらまだまだ走れるじゃん
その次の負担
もうちょっと速く走ってみようかなって

真っ直ぐ前を見ていた視線は
いつの間にか空を見上げていて
真っ白に照らされている疎らの雲
その全体を覆うギンギンの青
それが視界の殆どを占めて


今にも跳んで行きそうな

きっとこれがランナーズハイってやつなのか







これは走りきれちゃうんじゃないか




そう思ったら
段々と欲が出てきて
結果のタイムの事を考え出して







マラソンの申し込みのフォームに予想タイムを記入する欄があった
何の知識も無いから
適当に5時間って記入した

サトが4時間を切る
リミットが6時間半

じゃあその間くらいかな
そんな程度
むしろ自分の中では走りきれるの当たり前だったし
でもマラソンは流石に何もかもがうまくいく訳じゃないだろうから
これでもかなり控えめに記入した



後々トレーニングをしていくうちに
何てタイムを記入してしまったんだろうって
ずっと思っていた

完走するのも危ういし


そんなヤツが予想タイム5時間なんて
なんかそう思ったらすごい恥ずかしくなって









それが走りながら意外にいい予想タイムなんじゃないか
そんな感じがしてきていた


いやむしろこのタイム切れちゃうんじゃないか
ちゃんと5時間が控えめのタイムになって
予想タイムより早く完走できて
すごかったねってなっちゃうんじゃないか

想像した通りの図になるんじゃないか



いやもしかしたら誰よりも
むしろサトよりも早く着いちゃったりもするんじゃなかろうか

なかろうか
なかろうか


まさかまさかの展開が待っているんじゃないのか




そしたら何て言おうか
やばい考えなきゃ

もう笑顔で完走している図しか想像できなくて
何かすごいねって言われて
そんでいやいやとかいって照れてみたりして

うわ
気持ち悪いけど
こんな事考えてること自体
でも悪い気はしないな


とか何とか



そういう事を一通り考えて
自分に冷静になれ
まだまだ折り返したばっかりだぞ
って言い聞かせる


けれども
そうやって戻ってきて
現実に自分の身体を見渡して

まだまだ元気な足を見つけると
またその想像の中へ飛んでいってしまう




ほうほう
もうこれはいってしまっていいんじゃなかろうか
走っちゃいましょうか


もう自分の中では完走できるのが当然
その不安は自分の中で弾けてどっかに散らばってしまった



速さを求めよう











そんな事を考えていた
そしたら隣に気配を感じた


最初は自分の想像の中に浸って
その視線は空を見上げていて

いつの間にか周りが
見えてはいたけど
集中の外側にいた


だからサトがいる事に当分気が付かなかった



あれ

何でこんな所にサトがいるんだろう
まさか本当に追いついてしまったのか

予想ではもうちょっと時間がかかってる筈だったんだけどな




そしたら

全然追いつけなかったよ
速いね

って
それだけ言い残して
駆け抜けて行ってしまった







全然理解できません
どういう事だろう

今までサトの前を走っていたのか


愛二もいた

尚吾がすぐ後ろを走っているらしい
どうやら自分は今まで一番先を走っていたらしい
何時の間にそんな事になっていたんだろう

ちょっと嬉しい半分
要は今みんなに追いつかれ
そして追い越されているという事実






サトはもう驚異的なスピードで見えなくなろうとしている
愛二もそれに付いて行くといって先に行ってしまった


想像ばっかり膨らんで
実は疲れが足にきていてスピードが落ちてきているのかな





なるべく足の
特に膝の負担を減らしたい為に地面ぎりぎりを
なるべく足を上げないで
そして大股にならないように走っていた

少し着いていこうと思って
その一歩の幅を広げてみる



でもその距離は全然縮まらない
むしろどんどんその姿は小さくなっていく


いや
あれは無理だ
あのまま走っていったら
今度は完走できるっていうその自分の思いが
飛び散ってしまう


絶対に後であれは後悔する
自分には今あれは厳しい



ついさっきまでの自信が恥ずかしくなって
ごめんなさいって


でも追いつく事をやめたら
その事が自分の中で余裕を生む結果に繋がって
ここで我慢できた
だからやっぱり完走は出来るだろう

さっき急激に縮んだ自分の完走予想タイム
それが少し伸びたくらい
そういうふうに感じた











視界が狭くなり
視線を落とすと住宅街に入った事に気が付いた
沿道には沢山の人が
家のベランダから声を張り上げている人もいる
子供達が手を差し出してランナーとタッチしようとする


周りはお祭り騒ぎ
道路の上にロープが渡され風船が括り付けられている場所がある
ここは22キロ地点
ちょうど半分
そういうサインが見える

沢山の人が走っている人に声を掛けてくれる
そこにはバンドも


そういえばこんな所さっきも通ったな
風船に見覚えがある
けれどもこんなに人いたかな



時間が経ったんだ
みんなは日曜日の午前中を満喫しだしたんだ
そのみんなの休日
その生活の一間を借りてイベントが行われている

そしてその中のある時間を
その人達の人生の中をちょっと通り過ぎて行く

僕達はそれを繰り返して前に進んでいる





よく聞くとポールとかスミスとか
沿道から声を掛けている

最初は知り合いがちょうど通っているのかと思っていた
でもそれにしてはその回数が多すぎるな
そんな偶然起こりすぎだし


そしたら気が付いた


ランナーは今ゼッケンをつけて走っている
そのゼッケンにはニックネームをつける事が出来る
僕達はそのニックネームにSALを使った

ただ愛二は自分のミスでAijiになってしまったのだが
すまん



そうかそれを見てみんな声を掛けていたのか
ニックネームをゼッケンに載せるなんて
ただの自己満足で記念にするくらいの気持ちだったのに
すごいすごい
妙に感心してきてしまった



そうしたら沿道の人の声が
さっきよりももっと気になってきて










今何ていったんだ
もう一度
もう一度ちゃんと聞くから言って下さい




Well done, SAL!
Keep going!




SALって言ってるよ
すごい興奮してきて
あー気持ちがいい

そういえば日本人
日本語以外でSALって言われた事無かったから
その口からまさかその単語が出てくるなんて想像もしていなかったし
実際その発音がどうなるかも知らなかったし


そうかそうか
ちゃんと英語でもサルっていうのか

いやぁ
最高です


僕はとても気持ちがいいです
ありがとうって
手を挙げて答えました



それからは子供の手にもタッチしまくって
応援に答えたくなって
沿道の人達の言葉が応援に聞こえてきて
一緒になって盛り上げたくなって







住宅街を抜けた
道も広くなって人も疎らになって
少し寂しくなった

また一人の世界が


どこかでみんなで遊んで
みんなとバイバイして別れて
一人家路を
みんなといた興奮の熱を一人では抱えきれずに
ソワソワして
妙に孤独感を感じる

そんな感じ



またどこまでも走っていかなくてはいけないのか
よし頑張ろう
みんなありがとう









そうやって考えて
またさっきまでの調子が良かった時の
走り方の確認をしようとした

さっきはどう走っていたっけ
ちゃんと今出来ているかな


そうだあの時は空を見上げていたな





雲はまたどこかに行ってしまって
全然見当たらない

太陽は高く昇り激しく燃え
先に見えるビル群のガラスと戦っている


そのビル群の真ん中に
世界で住宅としては一番高い建物が見える
その遠近法
その距離感を感じた時
急に今これから走らなくてはいけない距離
その感覚が襲ってきた




膨大に長い距離に感じた

襲ってくる
足に襲い掛かってきた

急激に足が重く感じてきた
呼吸が荒くなった









まずいんじゃないか
今どれくらいだろう

距離を計算しだす
ペースを計算しだす

今25キロを越えている
あと19キロくらいもある
それよりもスタート地点の所までもまだまだある


今この状態
大丈夫か



さっき飛び散った不安が
かたかた集まりだして
また姿を現そうとしている

その過程は恐怖感を伴ってくる



そうなったら走り方も不自然になってきて





完走しなきゃ
何とか
その方法を考えなくてはいけない

ただ歩くと足が固まっちゃって
次また走れるようになるとは思えない


一回練習の時に
膝が壊れてそのあと歩く事も出来なかった
その時の記憶ばかりが頭を支配して


ダメだ
歩いたらダメだ
いやでもこれは走り続けるのは無理かもしれない

じゃあどこから歩くか
どこから歩き出したらリミットの6時間半以内に
ゴールに辿り着けるだろう




とりあえずスタート地点
つまり30キロ地点まで
そこまでは行こう
そこからだったら最悪ずっとゴールまで
歩き続けても完走は出来るんじゃないか

とりあえずそこまで
そこまで行こう


そこまでは追い込もう




一回その不安に支配されると
足は全くいう事を聞いてくれない







辛さと戦っていると
時間が遅く過ぎていっているのか
またいつのまにか通り過ぎていってしまっているのか
なかなか判断がつかない

ふと視線が足元を見ている事に気が付いて
上を見上げようとしてみた

そしたらさっきのビルの麓まで来ていた



何とかここまでこれたみたいだ
でもその事は安心を自分に与えてくれなかった

逆にそれまでの距離を
自分で把握してしまい

その間の走った距離分の辛さ
疲労感が襲ってきて
身体の重みをさらに増した




思うように動かない
身体が固まろうとする




ゴールドコーストの中心街を今走っている
とても活気があって
人も沢山いて
食器の音が聞こえてくる
道路に面しているレストランでみんなが昼食を
観光客が珍しそうに眺めている

切れ目がなかなかこないマラソンの列
コースを横断しようとして
沿道で待っている人も結構いる

その中の何人かが自分の方を見て動き出した
どうやら自分の後ろにスペースがあるみたいだ
その人達は自分が走り去るぎりぎりの所を狙って道路を横断してくる

すごい近い
ぶつかりそうになる
むしろ前を通ろうとしているんじゃないのか

やめてくれ
止まってしまう



その事に気が向いているのも辛くなってきた



沿道からは
人が名前を呼んで声を掛けてくれる

嬉しい
でも身体がついていかない

さっきまでの答える気力が無い
何回かは答えきれず
答えても何とか腕を半分まで上げる程度


今自分は30キロ地点まで走りきる事
その事で頭が一杯だ





一回辛くなると
そこに容易に落ちていってしまって
なかなか戻ってこれない






肩は大きく揺れ
走る時の振動は
膝が全然吸収してくれずに頭まで響いてくる

さっきまできちんと結わえてられた髪の毛は
上下左右に大きく揺れだして
それすら重く感じられる






初めに曲がったカーブまで来た
あの時とは全然景色が違う
もう辿り着くんだけれども
あと少し

気持ちを込めなくちゃ
気合を入れなきゃ

身体の限界
精神で



頭の中で叫ぼうとした


足を

足を前へ出すんだ


前へ前へ前へ前へ前へ



一歩踏み出す度に思いっきり頭の中で叫んだ
そしたら口から出そうになった
そういう時に人は叫ぼうとするんだろう

でも叫んだら疲れちゃうからな
少しでも体力を温存しておかなきゃ

そんな下らない所ばっかりはよく考えが回ってしまう



そうやって叫んでいた
頭の中で


でも叫ぶのも疲れてきた
頭の中なのに
そんな事ってあるんだ

頭で考える事も疲れるんだ



それも本当に出来なくなってきてしまった



あー
あー
あー




そんな時友達が沿道から声を掛けてくれた
何とか必死に答えた
もう髪の毛はボサボサで
身体もへろへろで

そしたら愛二がすぐ前にいると


愛二



ずっと一人の中に篭っていた自分が
その時久し振りに外の世界に気が向いた
やっぱり下を向いていた自分は
やっとこさ前を向く事が出来た



気が付いたら愛二が目の前にいた
すごい辛そうだ
自分と同じように身体を大きく揺らして
どうやら自分のペースよりも遅い
どんどん近づいてくる






今自分のペースを変える事は出来ない
そんな事をしたら一瞬にして止まってしまう
話しかける事も今極限でなかなか出来ない

まさに極限だ
今極限を感じているんだよ



追い越すことになった
その時に一言だけ





俺30キロ地点まで行ったら歩くわ





それしか言えなかった
何でそんな事だけ
気の利いた事の一言でも言ったらいいのに
全然ダメだ
バテバテだし

でもそれで立ち止まる事も出来ず
でも心の中ではいろんな事を考える事が出来た
愛二何とか一緒にゴールしよう

それまでそれぞれいろんな方法を使って
何とか





見えてきた

さっきスタートした地点




今までの何倍もの人が沿道にいる
こんな所で止まりたくない
何とかここは走って抜けて行きたい

声援が聞こえる



SAL!



わかった
何とか次の給水所まで

何とか




でもそのストレートは本当に長くて
沿道の人達もずーっと途切れなくて
その直線はとても長く感じる







どれだけ経ったか
もう頭の中はぐちゃぐちゃで
複雑に絡まっている
そしてそれぞれの糸は緊張して
力一杯張っている







人だかりが見える



給水所



見えた瞬間に身体の力が抜けた
何とかそこまで走り
そしてコップを手にして

そして






止まってしまった

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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
    now : Quito ( Ecuador )
    latest update : 20120816
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