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あなたに会いに来た訳じゃない

[20100719]





大きな大きなベットの真ん中で
寂しさを誘ってくる空虚な間を埋めるように
手足を大きく伸ばして寝転がり天井を見上げている

室内は柔らかなオレンジ色の照明が包み
綺麗な白い壁一面がそれに染まっている


極め細やかなレース
それを覆う荘厳な模様の付いたカーテンに
さらに贅沢にカーテントップまでついている

きちっとした机まであり電話も付いている
『フロントに用がある方はダイヤル9を押して下さい』
という紙が添えてある


中級クラスのビジネスホテルレベルではないか

実際ここはホテルであり
払った3泊分の値段は仰天するような金額で
一ヶ月半滞在したインドの全ての宿代を当てても
ここのホテルの方が高いのではないかと思える



その金額を払ったという衝撃だけではなく
オマーンからバスでドバイに入って見上げたネオンに輝く高層ビル群
それを見た時から続いているだろう心臓の鼓動は
今横になってもまだ鳴り続けている


『来てはいけない所に来てしまったかもしれない』

そんな想いがやってきては

『今ここにいる事がすべて。これをどうするかは自分にかかっている』

そんな想いが前者を打ち消そうとする



20100720-2.jpg





























オマーンでのメインイベント
グランドモスクを見た感動に浸りたい気持ちを抑え
ドバイ行きのバスが発着するターミナルにやってくると
まだ一時間と少し時間があった

待合室にはクーラーが効いていて快適だ
大きな荷物を持った人達がベンチに座りながら
唯一大音量で部屋を覆うテレビに顔を向けている

僕もそれにならってテレビを眺めながら
これからのルートについて漠然と思いに耽ける



これから大都市ドバイに向かう訳だが
実は殆ど何も決まっていないし調べてもいなかった

少し旅が長くなってきて
『なんとかなるだろう』
の精神がいやらしく心の奥に芽生えだしてきてしまっている

それでも大都会だから失敗すると痛い目に遭うと思い
ドバイの中で辛うじて安宿と言われるものをメモはしてあるが
所詮そのメモも名前と電話番号があるくらい

自分でも今これからまさにバスに乗って行くのに
よくこれだけでやってきてのんびりベンチに座っていられるものだと感心する


20100720-1.jpg





ドバイは言わずと知れた大都市でその物価は他の比較にならない
安宿というのも殆ど存在しないといっていい
砂漠の上に突如として現れた資本主義な街であり
太古の昔からの瓦礫の上に腰をかけて悠久の歴史を感じる場所も無い

こんな貧乏旅行者が行った所で何が楽しめる訳でもない

何の利点があるのか


当然旅人の間では評判が悪い
というか意味がわからないという感じ

にょきにょき建つ高層ビル群
経済というもののうねりをその眼ではっきりと捉えられる可能性はある
しかし、それには多額の出費を覚悟しなくてはならないし
デメリットの方が遥かに大きい

次のルートが立てにくいし
そのドバイバブルは先日の金融危機の為に一時の元気をなくしているし
なにより



暑い



暑さをしのぐ為には色々な方法があるが
都会となればその方法は限られてくるし、何よりもお金が必要になる

我慢の限度を超えているし
何よりどこでも暑いのだからいつも我慢しなくてはならない
じゃあ、何しに行くのだ

と、なってルートから外れていく







それでも、なぜドバイを選んだか
しかもなんと僕はドバイに一週間いる予定を立てている

ドバイの次はヨルダンのアンマンに飛行機で飛ぶ事にしている
すでにチケットも買った
その日があと一週間先なのだ



その理由は二ヶ月前








ネパールのカトマンズにいる時に
宿の近くで知り合った刺繍屋さんがいた

その兄ちゃんはとても気さくな人で
いつも独り三畳くらいの空間でミシンを回し
前を通ると白い歯を見せて笑顔で挨拶してくれた

日本人の彼女がいる彼は
僕の旅の話に興味を持ってくれた

僕が中東に行く話をすると
以前彼はドバイに行って仕事をした事があって
その時の知り合いがまだいるから是非紹介する、と言ってくれた

その友達はドバイのバブルを謳歌していて
庭にプールがある一戸建てに住んでいるという

「是非そこにお世話になったらいい」

そうやって言ってくれた



経済発展著しいドバイ
そこで裕福な生活を送る家にお邪魔してそれを拝見する

これ以上無いドバイ観光だと思った



オマーンにいる時
すぐ近くまで来たので彼に連絡した

彼が友達に数回連絡を取ってくれたのだが、なかなか繋がらないらしい
結局オマーン滞在を切り上げる時が迫ってきたので
その友達の連絡先を頂き、連絡がとれないまま僕はドバイへやってきたのだ

そう、『なんとかなる』と思っていたのは
数個の安宿の連絡先の他に、その友達の連絡先もあったからだ













結局変な確信から調べ物を怠り
バスが最終目的地までやってきて降り
夜なのにどこかに太陽があるようなむっとする暑さに
一気に汗を噴出しながらバスから自分のリュックを引っ張り出し
バスが走り出した後、道端に座っていた時に
このバス停がドバイの街の一体どこなのか調べていないという事実を知る事になる

結局今まで通り過ぎてきた街は国際バスが発着する場所は殆どの場合
大きなバスターミナルに着く訳だが
今いる場所は何気無い道路脇でバス停の立て看板すらない
むしろ遠くに高いビルのネオンが見えるが
この場所は暗くて『街の裏側』という感じ

しまった、と思っても後の祭り



白タクの兄ちゃんが話しかけてくる
最初半分あしらうように頭ごなしに拒否していたが
冷静に考えるとどうしようもない事に気が付き
その兄ちゃんと話す事に

結局控えてきた安宿に電話を掛けてくれるというので
どこにいってもタクシーの値段を変えないという条件で
予め値段を交渉して乗り込んだ



車の中は快適だった
クーラーは効いているしシートもふかふかだ
いつ振りに見たか、車内で携帯電話を備え付けられ
ハンズフリーで喋れる様になっている

彼は予め僕が示していた宿の番号に連絡してくれ
丁寧にも僕がわかるように英語で会話した
きちんと宿の名前を言って電話に出た男が話すには
今日は宿は一杯だという

考えてみれば当然か

ドバイに殆ど無い安宿(といってもやはり高い)
しかも今の時間はすでに日が落ちて時間が経っている
みんなが泊まりたがる場所だ
この時間ならなくなってても仕方ない


結局白タクの兄ちゃんが始めに押していたホテルに向かう事になった
タクシーに乗りながら値段交渉
最終決定権は彼には無いとはわかっていたが
何だか不甲斐無い自分のイライラを何かで解消したかった




宿についてみると何とも豪華なホテルではないか
ドアマンがいてロビーは狭いけれどもソファが数個置いてあり
両側にはレストランとバーがありかなり活気がある

正面のロビーにはきちっとスーツを着た初老の男
白タクの兄ちゃんが僕のリュックを背負いながらその男に話し掛ける


「一泊220ディルハム(約4500円)ね」


淡々と言われる所に威厳を感じさせる
本来なら冷静に対応すべきでありお客もそういう方々がくるのだろう



だが、



貧乏旅行者にそんな余裕はホコリ程も無い
誇りも無い

初め白タクの兄ちゃんは190くらいと言っていたのだ
それで自分の紹介だったら170までいけると言っていたのだ
あわよくばそこから当初泊まる予定だった100当たりまで、
いや120くらいまでなら強引に値段交渉しようと思っていたのに

スタートが220!!
てかやっぱ物価高!!!

辛い現実をその場に立ってやっと実感するという惨めな気分になる



だが、ここで折れてはどうしようもない
さっきタクシーからホテルに入るその一瞬でさえ
ムッとする暑さにやられた

もうあそこには戻りたくない
もうベッドに横になりたい



気を取り直して初老の男に話しかける



、、、が、値段交渉など
こんなシャンデリアのあるような立派なロビーのホテル相手に
こんな冷静なスーツを着た初老の男性相手に
したことないからどうするのか全くわからない
すぐに言葉が詰まって数字をたどたどしく言うばかり
相手はそれでもゆっくりと対応するからまた動揺して狼狽する



「1、120、、。」

「いいえ」

「じゃ、じゃあ、130、、。」

「いいえ」

「1、1、13、、、」

「220です」

「、、さ、三泊するからまとめて、、」

「一泊220ですから、三泊で660です」




あー


わかっている、自分が間違っているのは分かっているのだが
今までこびり付いた旅のホコリが上手く払えない
これが世界観の違いというやつか、、
僕はハッキリと別の世界に沈み込んだのか







でも、、

ふと、気付く


彼はあしらっているようでいて意外と自分にずっと対応している
明らかに風貌として相応しくなかったら
追い出すかほぼ無視か他の者に対応させるはず

と思ってふと横にずっと立っている白タクの兄ちゃんが目に入る




はああ、そうか
そういえばそういうのあったな



白タクとホテルの結び付き
すっかり忘れていたこの兄ちゃんの事

彼は中間手数料をホテルからもらえるかどうかずっと見届けているのだ
ホテルも彼をあしらわない所を見ると長い付き合いのようだ

という事は僕をちゃんと客(カモ)として見ているという事だ

こんな所にリュックサックを背負って夜中に押しかけてくるアジア人なんざ
きっと日本人かどっかの若造で
いろいろ渋りはするが金は結局持ってる奴だと思っているんだ


別に根本的な解決に結びつくような事じゃなかったが
なんだか急に元気がでてきて戦う意欲が出てきた



まずは一旦ロビーを離れて白タクの兄ちゃんを引き連れて隅に向かう





「おい兄ちゃん、話が違うじゃねえか」

「お、俺は知らん、、」

「確かに自分170って言ってたよな」

「いや、前は確かにそうだったんだけ、、」

「前は知るか!お前に170って聞いて来たんだ」

「そう言われても仕方無い」

「こっちは仕方があるんだよ!もういい、俺は出る」

「いや!それは困る!
 それに外はすごく暑いし他に安くていい宿なんて
 ここいらには全然無いぞ!」







、、と、記憶は確かではないがこんな流れを経たのちに
確かに兄ちゃんが焦り出している

10とか20ディルハムなんてちょっとじゃないか
なんて話しかけてくるのを無視する
、、と、彼はついにしなだれて小さな声で話し掛けてきた

全然聞き取れなかったが
彼はそのまま一人でロビーに向かって初老の男と話し始めた







僕はドアマンの横に立ちながら彼が戻ってくるのを待った
ガラスドアの近くから室内の快適な温度と30度は違うだろう外気がやってきて
足元に巻きついてきてそわそわするが体が動かない

あー、俺、疲れてる


そんな狼狽など露知らずという感じで
白タクの兄ちゃんが上気だって小走りにやってくる






「200!200だ!」

「だから170と言ってるだろう」





と言いつつ動かぬ事山の如しだった値段がついに動いたので
僕はカウンターを隔ててまた初老の男と対峙するになった





「一泊200にしてしんぜよう。フン」

なんて言っているように背中がのけぞっている
こんちくしょう、こちとら200だって納得しないぞ
と、再び強気に行きたいところだったが向こうが少しでも譲歩を見せたので
こちらも柔らかく出る必要がある

、、がやはりそこからは値段が下がりそうも無い
けれどもさっきの遣り取りと違ってたまに彼の目が泳ぐ


僕は横に立っている白タクの兄ちゃんの方を向く
目が合う
彼はウン、と首を縦に振ったように僕には見えた
僕の想いを受け取ったように見えた

兄ちゃんは初老の男に視線を移して何事かを喋り出した
遣り取りが続く

それを見守る


そして兄ちゃんは僕に視線を戻した





「180と言っている」

内心そこまで下がったのを嬉しく思いながら

「だから、170だ、自分で言ったろう」

ちょっとひどいなと思いつつ
僕はそれを捨て台詞にして荷物を持ってドアへ向かおうとする



片手で持ったリュックの重みが肩にずしっとくる
あー、外に出たくない、という想いと共に
強引にそれを引っ張って足を前に出す








すると、兄ちゃんが走り追いかけてきた
前に立ちはだかる

なんだかどきっとしてしまう
淡い期待、それを信じると怪我をするから振り切ろうと必死になったのに
結果的にそれが目の前に現れる
自分の忍耐が報われる瞬間、だけど今許したらまた悲しい目にあう、と
それでもまだそっぽを向こうとしてしまう矛盾
悲恋ドラマに出てくるヒロインのようじゃないか
したら白タクの兄ちゃんは俺のヒーローか?!
こらこらいくらゲイにモテるからって
まさか実はそんな潜在的嗜好を今までの彼らは敏感に僕の中に感じ取っていて
その開花を待ち望んでいたとか
ばかばか、そんな潜在的嗜好あってたまるか
いや、嗜好などというのはその時の思い込みから始まるのであって、、


そんな思考のじゅんぐりがまた心拍数を上げさせる


彼が顔を近づけて囁き声で言ってくる








「俺のタクシー代はいらない」

「え?」

「俺のタクシー代は30ディルハムだった。
 だからそれを貰わないから一泊180ディルハムでここで三泊。
 そしたら170ディルハムと同じ事になる。」








冷静に考えると一泊170ディルハム(約3500円)だってばか高いのだが
流れでずっと言い張っていた値段だし何より実際にそこの値段に落ちたのだ
今更何を言えよう

というか、僕は感動すら覚える感じで
こんな客(カモ)の為に奔走している兄ちゃんを見た




そして二人で手を繋ぐようにして並んでカウンターへ戻っていった
(あくまで手は繋いでいない)


いつの間にか二人のカタキのようになってしまった初老の男
品が良さそうに見えていた顔も今では冷徹にしか見えない

二人でカウンターに肘を付いて一泊180で手を打つ旨を話した













書類とお金の遣り取りはあっという間に、というかあっけなく終わった
さっきまでの煩わしさが嘘のようだ

ただ、さっきのように白タクの兄ちゃんを見やると
二人の間に何故か寂しさを覚える風が吹く

僕達は特に言葉を交わす事は無かったが
握手をして彼はドアへ向かい
僕はエレベーターに乗り込んだ


















何やらダイハードのようなスピードのような
いや、これが犯人と人質がおちいるというストックホルム症候群というやつか?
都会に来たら人と会話する事も全然なくなって
淡々と過ぎていってしまうんだろうと勝手に思っていた矢先だっただけに
何だか充足している


白タクの兄ちゃんに会いにドバイに来た訳では無い
ネパールの刺繍屋の友達に会えていればこんな疲れる事も無かった
なのに不思議な事に初めからこの兄ちゃんと会い
あんな遣り取りをする為にドバイにやってきたような
そんな満足感に包まれている

『運命』とかそういう類の正体は実はこの満足感の事かもしれない












ボーイが部屋まで案内してくれる
荷物を持とうというのを強引に拒否し部屋に入る

入れば見たこともない豪華な部屋
浴室は真っ白でシャンプーやらなにやらが付いている
僕が持ち歩いているバスタオルの三倍以上の大きさのふかふかのタオルがある
しかも二つ

すかさずリュックを隅に立てかけて
大きなクイーンサイズのベッドに飛び込む





どうしよう





ドキドキがとまらない
確かに金額からしたら妥当の部屋だが
明らかに自分とは不釣合だ
部屋の内装、金額共に


白タクの兄ちゃんの顔が頭を過ぎる


もう払ったものは仕方ない
遊び倒すしかない












とりあえず今日は冷房も電気もつけっぱで寝てやろう



そんな事しか思い付かない荒んだ貧乏心に呆れながら大きく寝返りを打つ













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気持ちは分かるが

長い

Re: 気持ちは分かるが

> sal ig

その気持もわかるが、、、
俺は開き直ったぞ
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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
    now : Quito ( Ecuador )
    latest update : 20120816
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