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日陰の中へ -マラソン当日4-

水がおいしい
身体の隅々まで伝わっていく



今までは走りながら飲んでいた
だからきちんと口で受け止める事が出来ずに
道路に撒き散らしながら

そしてあんまり飲んだら身体が重くなったり
横っ腹が痛くなったりしてまずいかな
そういう気持ちもあって
そんなに摂取していなかった






今自分は歩き始めてしまった
自分に休憩を与えよう
そういうつもりで歩いていた


水も今回のマラソンで初めて沢山
本当にごくごくと音が出るように飲んだ



給水所には何個かに一つ
水とは別にスポーツドリンクみたいな飲み物がある箇所がある

まだ尚吾と走っていた時
一番最初に給水所で水を取った時
尚吾が水だと思って取ったのはスポーツドリンクだった
走りながら飲むから身体中に溢れて
ベトベトになって気持ちが悪い

そんな事を言っていた
それから給水所で水を取る時は
ちゃんと水か確認して取るようにしていた




今目の前にある給水所は両方とも置いてあるみたいだ
兎にも角にも何か自分の身体を助けてくれる物を摂取したい
そう思ったら今まで避けていたスポーツドリンクが
何て素晴らしい物が置いてあるんだろうか
っていうくらい眩しく見えてきて

水をコップ一杯しっかり飲んだ後に
またスポーツドリンクを取り上げて飲んだ
そしてその後
ベトベトになった口の中をすっきりする為に
また水を取って今度は半分程飲んだ

何かを沢山身体に取り込みたくて一生懸命だった






飲みながらどうするか考えた
どうする自分
これからすぐ走り出すか
それとも本当に歩いてこのまま行ってしまうのか
または走ったり歩いたりを繰り返すのか


早くしないと足はすぐに動かなくなる
今流し込んだ水が
身体中を蝋のように伝って
そして纏わり付いて
固まって動かないようになってしまう




この給水所は32キロ地点
あと10キロ

決めている間にもしかしたら足が本当に固まって
歩く事すら出来なくなってしまうかもしれない
そしたら完走する手段は無くなってしまう



もういい

今は走る事だけ
前に足を踏み出す

その繰り返しの作業に一刻も早く戻ろう


それからだ
それから考えよう
歩いているだけじゃよく今の自分の足の状態も判らない
実は走れるかもしれないし








気持ちではそううそぶいているけれども
身体はそうは思わないみたいだ
紙コップをゴミ箱に捨てる動作が無意識に遅く丁寧になる



マラソンの給水所の周りは大変に汚い
何故ならみんな走りながら紙コップを取るそして飲む
だから水は飛び散り
そしてみんな走りながらそこら辺に投げ捨てて行く

ボランティアの人は次から次に来る人の為に
延々水を入れ続け
そして散らかった紙コップを片付けるのだ

大変な作業





ただこの32キロ地点の給水所は少し様子が違う
その道路に散らばっている紙コップの量が極端に少ない
そして捨てたゴミ箱を見てみると沢山の紙コップが

先を見ると自分と同じようにきちんとゴミ箱に入れている人がいる

その人は歩いている
よく見渡してみると
今まで気が付かなかったが歩いている人が結構いる

そうかみんなこの距離辺りから歩き出してしまっているのか
だからみんなゴミ箱にいれる余裕が出来てきて





何かとても気が楽になって
少し肩の力が抜けて
自分のペースでゆっくりやろうかなって
別に今はもうタイムとか誰かよりとか
そんな事は何処かに落としてきてしまっていて
そういうふうに考えてはいたけれども
改めてそれを認識して


そしてその気持ちから出発した
走り出そう






足に力を込めて
前に押し出す






何とかさっきのスピードまで持っていこうと
徐々に動きを速くしていこうとする

足の動きは
身体の動きは
段々とさっきと同じ動きに

走る動作が身体の中で完成される




ある段階まで来ると
イメージと記憶の中の走る動きとピタリと重なる

そうすると急にスイッチが入ったみたいに
さっきまでの辛かった記憶が黒い雷雲のように
頭の中に広がって一面覆われてしまう

トラップを仕掛けられて
見事にはまってしまった
そんな感じだ



そしたら身体の中のダメージも見事に再現されて
急激に足が重く感じる







また止まってしまった








何キロ何メートル進んだか
そういうレベルの話ではない

たったの十歩くらい
それですぐにまた歩き出してしまった




このマラソンは1キロ毎に表札が経っていて
距離を知る事が出来る

今まではあんまり気にしていなかった
目に留まったら
あぁ今これくらいなんだ程度に


でも今その赤地に白く数字が書いてある
その表札がとても待ち遠しい





まだまだ33の白い文字は見えてきそうに無い





前を歩いていた
もうそれなりに歳を取ってきている人
その人は何とか走り出し
そして走り続けて
身体を傾かせたと思ったら
カーブで見えなくなってしまった

自分はまだまだ方向転換の準備をするまでには
随分と距離があった




どうしようか
足はどうやら当分いう事をきいてくれない

ずっと歩き続けるのか

今の状態だと歩き続けるのも一苦労だ
歩き続けてでも何とか完走しよう






そうか完走だけはしなくては

今ここまで来ると
昨日まで頑張ってイメージしていた
ゴールの時の映像
それがより具体的に頭の中で描けるようになってきた

大会の雰囲気
フィニッシュの時の疲れ具合
足の状態
自分の今の服
天気





その時をイメージすると
元気が出てくる


やばいその時だけは走ろう
走ってゴールラインを切ろう
じゃあ何キロ先から走り出すか

5キロか
いやあと10キロ弱でこの状態で半分走り続けるのは
ちょっと流石に無理かもしれない

じゃあその5キロを二回に分けるか
これから少し歩き続けて
よさそうな所で走り出し
そしたら気合入れて自分を追い込んで
折り返し地点までは行けるんじゃないか

それからきっとまた力尽きて
歩いて
2,3キロ前辺りで
最後なんだから出し切る感じで
もうどうなってもいいって
そういうつもりで走り出したら
それくらいは走れるだろう

きっと





今まで一歩一歩を足し算してきたこのマラソン
それがいつの間にか後何キロだろうって
引き算になって

何となくこのマラソンが終わりに近づいているのを感じさせる






そうやって考えたら
今歩いているのはとても大事な時間に思えてきて
さっきまでは沿道からの声援に答えられずに
とても辛かった
その気持ちが跳んで行き
今堂々と歩いていられる


周りを見渡す余裕も出てきた



自分は今どんどんと抜かされていく

いたいたこんな人

この人も

殆ど自分が抜かして行った人だ
記憶にある


何か惨めになるけれども
でもしょうがない
今の自分の身体の限界は30キロだったんだ

そういうふうに受け止めた


そう考えると
走り抜けていく人に後ろから声を掛けてあげたくなる
自分のペースで
そしてきっと完走するんだぞって


中には自分の倍以上の歳の人も通り過ぎていく
信じられない
びっくりして
それから身体が大事な事
健康という事
当たり前のその重要性を改めて感じる

自分もああやって人生を挑戦し続けて
過ごしていけるんだろうか

その体力
必要だな
もっと鍛えようかな





そうやって元気な姿を想像して
活力を自分の中に探し出そうとした

今自分は歩いている人にもどんどんと抜かされて行く

そんな弱々しく進んでいったら
何時まで経ってもダメだ
せめてもう少し
歩くのも速く
もう少し

せめて前をずっと歩いている
その人よりも速く歩こう





やっと速さというモノを自分の中に取り戻そうと
自分の足を確認しながら試行錯誤している時
ふと名前を呼ばれているような気がして周りを見渡した

左の沿道か
前のコースか

全然どこにいるかわからない

まさかと思って右のゴールに向かうコースを見ると
今自分の中には全く想像すら出来ないようなスピードで
駆け抜けて行くサトがいた

そしてあっという間に
会話をするどころかこっちが返事をする事も出来ず
走り去ってしまった


すごい
本当にすごい
もうすぐゴールしてしまうじゃないか

また一回
サトと自分を比べてしまった事を
心の中で謝った



今までレベルが違いすぎて
視界に入ってこなかった隣のレーンを見ると
さっきまで一緒に走っていた
その人達がゴールに向けて
ラストスパートをかけているのが見える

本当に走れるんだ

きっとこのペースだと
一回も止まらずに走り続けているんだろう

この人達には
どこで一回歩いて
どこからまた走って
また休んで


そんな感覚は当然のように無いんだろうな



確かに前までマラソンは走るんだから
走り続けるのは当たり前に思っていたし
そうするもんだと思っていたけれども
今実際に走っていて
そんな事自体がもうすごくて





みんなすごい
感心して

サトもみんなもすごい





そういえば愛二と尚吾はどうなったんだろう
自分はもう歩いてしまっている
いつ愛二に抜かれてもおかしくない

咄嗟に後ろを振り返る


何かその動作に違和感を覚えて
そういえばこのマラソンで後ろを振り返るのは初めてだな
てかマラソンは本当に前を向いて
走り続けて
そういうスポーツなんだな


とか思いながら探す
けれども見当たらない


もしかして二人も歩いているんだろうか




どちらにしても今は歩き続けなくては
前に向き直る
そうすると今日ずっと付き合ってきた景色が
また視界に戻ってくる


でもその一瞬の視界の転換は
自分に折り返し地点のような
気持ちの新鮮さを与えてくれたみたいだ

少し足が軽くなったような
もしかしたら走れるんじゃないだろうか


余裕が出てきたので
少し立ち止まって走る為にストレッチをしよう




今まで止まったといっても
走るのをやめて歩き出しただけで
まだ一度も立ち止まってはいなかった

だからこんなに身体全体が棒のようになって
五本の棒がただ紐で括り付けられているような
だらんとして重く垂れているモノになっているとは思わなかった

走れる気がしたのに
一体これはどういう事だろう

でも兎にも角にもストレッチを
そう思って電柱をつかって腿を伸ばそうとする
そしたらすごく重くなってて
足を上げるのが一苦労で
楽になる感じも無く
下ろすともっと足が重くなった気がして

それだけで疲れてしまいそうで
やめよう
何か今全然意味のある事じゃなさそうに思えて


動いたらさっきよりも辛くなってる気が
やばい今すぐに歩き出そう




そしたら不思議と歩いている時の方が楽に感じた
ストレッチは結局全然出来ていない
どうなんだろうか

きっとストレッチが少しでも効いたんだろうけれども
でも止まるのはもうよそう
そう思った




むしろ走ったりした方がもっと楽になるんじゃないか
そんな事を考えて走り出そうとする

けれどもそれは流石に無理みたいだ





これはあと二回走るなんて無理だな
一回走って
歩いて休んで
また最後走る

最後が走れなくなってしまう
大事なのは最後走る事だ



考えてみると歩く事は休みではない
頭ではそう考えていたが
歩くのも結局は身体に負担がかかっている

いつもは足を動かす一番単純で基本的な動作
だからなかなか日常生活では感じる事が無い
そうなのに今歩くその負担をとても感じる

一歩一歩
歩くだけできちんとダメージを受けている
その実感が身体の中にある




二回は厳しそうだ
最後の走りに集中するしかない




そうしたらもうそこの地点まで歩き続けていくしかない
そこまで何とか早く行こう
リズムを整えて
走る為の準備を

地面を踏みしめて
しっかりと蹴って
前に出す

それを意識して歩こう
そしてなるべく速く






周りには自分の目の前で歩き出す人もいた
歩いている人が走り始めたりした
自分はそこにただいて
いろいろな現象が起っているのを
ただ眺めているだけのような錯覚に陥った

そうなると足が立ち止まりそうになる

その度に気持ちを奮い立たせて
前に向かう





ここらへんのコースは練習の時に唯一走っていない所
だからとても長く感じて
なかなかつかない折り返し地点の想像をして奮い立たせよう
そうするけれどもその想像は実を結ばない




曲がりくねった道をいくつも通り過ぎ
とても広くて真っ直ぐな道に出た

多くの人が歩いている
走っている人ももうそのスピードは
今にも止まってしまいそうだ

何か住宅街の中だ
道は広いのに
周りの家々も一軒家ばかりなのに
さっきまでの強い日差しは見当たらない

沿道には木々が立ち並んでいる
青紫の日陰の道を
沢山の人が黙々と前に進んでいる



そのずっと先に

何か背の高い影が見えた




どうやらそこが二つ目の折り返し地点





やっときた



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Profile
    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
    now : Quito ( Ecuador )
    latest update : 20120816
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