スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ユーフラテス川のほとりで

[20100730]





もともとシリアに来る前は
殆どこの国に関して前情報を持っていなかった

ボスラやパルミラ遺跡などは勿論の事
ダマスカスが万年の歴史があるとか
ここが社会主義国家だという事や
ましてやこんなに人懐っこくて楽しい場所だとは


恥ずかしながら
ただトルコに抜ける前に通る、

という認識しかなかった







『8月の下旬に愛二とイスタンブールで落ち合う』


それに合わせて中東のスケジュールを組んでいる時
 
 シリアには大体一週間ちょっと居れればいいだろう
 2,3都市でそれぞれ2,3日滞在

それくらいならそんなに負担も無いだろうし
ゆっくり楽しめるだろう

大雑把にそう考えていた






















だからパルミラの後、
そのルートからさらに外れるデリゾールへ向かうと決断した僕は
明らかに前とは変わっていた


ヨルダンからシリアを抜けてトルコに向かうなら
まずヨルダンのアンマンからダマスカスへ北上
そのまま真北へ向かってアレッポという
トルコへの玄関口となる街まで向かってそこからトルコに入るのが
言ってみれば一番近道で進みやすいルートである

既にパルミラはダマスカスから北東へずれているので
このルートからは外れている

デリゾールはさらにそこから北東へ外れる
しかもダマスカスーパルミラ間の倍は離れている
そうなればシリア滞在予定日数を変えなければ
すぐにそこからアレッポへ戻るルートへ変更しなくてはならない

デリゾールはきっと一泊しかできないだろう



ダマスカス

パルミラ

デリゾール

アレッポ



日本の半分の面積があるシリアの東半分をぐるっと回るルート
それをパルミラ一泊にデリゾール一泊

一泊とは、その日に移動してきてそのまま観光して
次の日の朝までにはその街を離れて次の街へ移動するという事だ

今までなら絶対に疲れるだろうから選択しなかった
無理が出るだろう
行っても何も出来ないだろう






しかも何故デリゾールに行くかと言えばただ、


『ユーフラテス川が見たい』


という欲求だけ


きっと郊外都市で何も無いのんびりした街だろうけど
ただ、あの『ユーフラテス川』が見たかった









世界史の授業で一番初めに教えられた世界四大文明
そのうちのひとつメソポタミア文明を育んだチグリスとユーフラテス川

壮大な歴史の初め、今から遠く離れた『時』の話
現実離れしたイメージがそこに登場する全ての単語についた

その、ユーフラテス川がすぐ手の届く場所にある



となったら行きたくてしょうがなくなった



















まあ、と言っても理由としてはやはり弱い

のに、来てしまった


今、欲求を形にするバイタリティーに溢れているのだ、きっと
ゆうや君、ありがとう
























それにしても、やってきたはいいが本当に何も無い所だった


20100730 (1)


一番の大通りと思われる場所を歩くも車は殆ど通っていない
いや人も歩いていない
道ばっかりは広いが逆にそれが寂しい
ポツポツと小さな商店らしきが道沿いに並んでいるが
殆どがシャッターで閉まっている

シャッター通りとは世界中にあったのか





事前に調べていた宿に向かう為、大通りから一本横道に入ると
まあ、ゴーストタウンのように新聞紙やら葉っぱやらが道に舞っている

シャッターの前には今にも潰れてしまいそうな小さな木で出来た腰掛に
無精髭を生やしたオジサンが独り座ってブツブツと何か喋っている

珍しく開いている売店にはこれまた怪しげな数人のオジサン達が
店先にたかっていてこっちは大声で笑い合っている
店主は、、なんと子供ではないか
中学生くらいの男の子が白いタンクトップで愛想笑いをしている


お目当ての宿はさらに細い路地へ曲がった奥にすすけた看板を引っ掛けていた
路地は行き止まりで所々錆び付いてはげた緑色の鉄壁が道を埋めている

宿入口の扉は路地の一番奥
やはり重たい鉄扉になっていてバシッと閉められている
鍵を開けてもらうために扉の横のブザーを押さなくてはいけない
押す前に何故か一呼吸置いてしまう

上を見上げると灰色の無表情な4階建て程のビル
窓には鉄格子が見えて少しひび割れが見える





『とんでもない所にやって来てしまったかもしれない、、』





灰色の雲が心を襲いだす
得たいの知れない不安に包まれながらもブザーを押す

鍵をしなきゃいけないような治安の場所なのか??

思考がどうどう巡りする前にあっけなく扉が開く



入ればいきなり階段

上の方で声がするのでそのままリノリウムの階段を上る


重いリュックを背負いながら三階分ほど上って行くと
階段の踊り場に机があって中学生の男の子が座っている




まさかこんな所に受付??!




はい、受付ですけど

という感じで中学生が立ち上がる


軽く宿の中を彼に案内してもらい
最初の不安はどこへやらすぐにチェックイン









事前に頑張って調べてもデリゾールの安宿は三軒しか出てこなかった
どれも似たり寄ったりの値段設定だしあまり大差ないように見えた
わざわざそれを確かめる為にまたリュックを背負いながらあの街中へ戻りたくない


そしてなによりこの宿が綺麗であった事


踊り場の所から中に入れば大きなコモンルーム
20畳くらいはあるんじゃなかろうか

椅子も冷蔵庫もテレビもある
壁も天井も白く塗られて清潔感があり
床は何故か白と黒のタイルでオセロのようだったが
別に悪い気はせず、むしろ明るい雰囲気があった


オーナーという人にのちほどあったがその人を見て納得

彼は白いガウンのようなモノを羽織り
顔はいつも優しい笑顔を絶やさず
声は抑え目でゆっくり穏やかに喋った



20100730 (13)



何だかキリスト教会の神父さんのようなイメージを瞬間的に思い浮かべたが
イスラム世界のここでそんなイメージは失礼だと思い直す


新しい世界を訪ねる際には
固定のイメージほど嫌悪すべきものは無い

しかし、それは日に日に凝り固まろうとする思考を
変化に結び付けてくれる起爆剤になる

そうか、神聖であるという神父のイメージは
あまり神父に馴染みの無かった僕が勝手に抱いたか、
いつの間にか刷り込まれたモノであるという事なのだ、
というふうに
























無事に荷物を下ろすとすぐに外に出る


さっきの売店にたかっているオジサン達がまだ居たので
川はどっちか聞いてみる



もう不気味さは不思議と無くなっていた

リュックを下ろした安堵感と一度既に見ているというのは
随分と街の印象を変えた

さっき宿の中学生とオーナーの人だけではあるが
ここの人と話をしたのも大きいかもしれない
急に『普通の』街として眼に映る

これが情報として知っているだけと
実際に体験して経験として蓄積されるのとの
一番簡単な違いなのかもしれない






川までの道をのんびり歩いていると小さな橋を通った
まさかここではないだろうと思う

それよりも川岸に建つビルを見て
この街が本当に郊外都市というか何気ない街なんだというのを
しみじみと感じた

ただ遠めに見ただけだが
あれは間違いなく団地と呼んでいいだろう


20100730 (2)













少し離れてくると道が小奇麗になってきた
今まで区別なんぞなかった道がいつの間にか車道と歩道に別れている
しかも間には丁寧に植木まで植わっている

両脇にある家々は大きめの一軒家が並びだした


その中に一軒空き家になっている家があった
草木はぼうぼうに生えドアは外れ窓ガラスは割れている

壁にある沢山のペイントが眼に留まった
その顔が誰を指しているのかはすぐにわかった

ダマスカスや国境や至る所で見る事が出来る顔
今シリアを治めているアサド大統領だ


20100730 (3)



こんな所にペイントされているが
落書きや乱暴なメッセージが無い所を見ると、きっと肯定派であろう






こうやって町中で同じ顔を見る事が出来るのは
なんだか中国を思い出す


日本にいた頃に一番身近な社会主義国と言えば中国だ
その中国は日本からしてみれば不気味なイメージがあったりもする
その原因は何といっても政治の仕組みだろう

一党独裁体制

それが沢山の規制や検閲という部分にスポットを当てさせる
人民平等という社会主義の理想はなかなかピンとこない


もし僕がシリアが社会主義国だという事を初めから知って入国していたら
きっとイメージは幾ばくは違ったかもしれない



でも、僕はここで人懐っこいシリア人に沢山出会った
最大の都市ダマスカスでさえ僕とゆうや君が歩いているだけで
突然人だかりに囲まれる事もあったのだ

みんな好奇心旺盛で親切である



なんとなく社会主義に対する偏見が取り除かれたような気がしないでもない

冷戦が終わって随分とたっている中で
社会主義万歳などと言うつもりは毛頭無いが
それぞれの『主義』に対して持つイメージが変わった

主義にはそれぞれ唱えた正義が必ずあって
その正義の先に求める幸せの形は
方法は違うにせよ同じ形を求めているんじゃないか、という




簡単な話

意識せずとも違う主義の下に生活しているシリア人と僕
シリア人の人柄はとても人懐っこくて
そして僕もそれはくすぐったいけど笑いが出てくる

気がついたら肩組み合って笑い合ってるんだから


そしてそんな笑いっぱなしのシリア人たちを見てると
幸せで彼らなりの平和な生活を送れているんだろうな、と思える

























道は真っ直ぐ
すると大きな大きな吊り橋が見えてくる

明らかに街の規模からいえば異質とも言える

沢山の甲高い声が聞こえてくる
そしてそれにも負けないくらいの水が流れる音





ユーフラテス川





確かに大きな川だった

けど、それはこの街の規模に対してであって
向こう側が見えないくらいの大河、という訳でもない

それはそうだ河口付近ならいざしらず
まだ中腹なのだから

重要なのはこの水量が砂漠の中を干からびずに流れているという事





橋の欄干にはいかにもやんちゃそうな子供達がずらっと並んでいた

ちょっと面倒だな、、と思う
旅先の子供は危険だ



と、思った矢先に一人が僕の事を見つけ声を上げる




と、


雪崩の様にやんちゃ坊主どもが襲ってくる






何を言っているのかわからないが
みんなオレの話を聞けとどんどん声量が大きくなってくる
そしてみな自分を指さす

『俺を撮れ!俺を撮れ!!』


20100730 (10)




しょーがないから撮ってやると
別のやつがやってきて撮れという

しょーがないから撮ってやると
今度はそいつが別の奴を連れてきて友達を撮れという

しょーがないから撮ってやると
今度は俺を中心に友達を撮れという



20100730 (8)




きりがない

どいつもこいつも腕を伸ばしてきてベタベタ触ってくる
腕を掴んでこっちを撮れと言う


20100730 (6)



最初は面食らって抵抗するのに必死だった



20100730 (7)



けど、
みんなが止まらない所を見てると純粋さを感じてくる
そしてみんなが笑顔だから
何だかこんな事でグチグチしそうになっている自分が恥ずかしくなってきた

撮ってあげればいいじゃないか、それくらい
カメラを持ってるのは僕なんだから
それに一人でのんびりするのもいいけれども
全くほっとかれるなんてまた悲しいじゃないか

みんなで楽しんだらいいじゃないか



みんなが笑顔だ
そして僕もいつの間にか笑いながら写真を撮っていた


20100730 (9)





















そんな中一人珍しく真顔なのが居た

そいつはただ無言でカメラの前に入ってきた


20100730 (11)



撮ってやると何やらジェスチャーをする


『今から飛び込むから撮ってくれ』




みんなが盛り上がる



『撮ってやれ撮ってやれ!』



お、それは面白そうじゃないか
としている間に青パンツで無口な彼はすすっと欄干の上に立ってしまった

急いでみんなで欄干に寄る


20100730 (5)










と、すかさず彼は飛び込んだ


あのユーフラテス川へ




20100730 (4)































まあ、彼らにしてみれば家の近所にあるただの川だ
いや、僕からしてみたって今見下ろしているのはただの川にしか見えない

今となってはそうかもしれない
それとも言い方としては
全てはそうでしかないのかもしれない




名前はどうであれ、

この川は随分と昔から砂漠を潤し続け
皆の笑顔を作り出してきたのだ










名前は違いを強調させる



ただ、

主義も方法も違ったとしても
それでもその先の幸せの形が同じであれば
別に恐れる必要も嫌悪する必要も無い
そして特別に戯れる必要も尊敬する必要も無い



まずはちょっとずつ全ての相手を好いてあげるだけでいい

何かを知る前にそんな姿勢を持って居たら
きっといつか沢山の事を受け入れられるようになる





そして、

カラカラの中であろうとしっかりと水を海まで運び
周りを潤せる事が出来るかもしれない


20100730 (12)














コメントの投稿

非公開コメント

No title

藍、また進み始めたんだ。

土産話楽しみにしているよ!

Re: No title

>

なんとか、ですね。
頑張って書き続け、歩き続けます!
main_line
main_line
Profile
    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
    now : Quito ( Ecuador )
    latest update : 20120816
LAN Twitter
    旅の日記はなかなかリアルタイム更新とはいかないが、twitterならなんとか、、

     → follow me on Twitter

関連日記

共に旅立った同志達のブログ

sallan

I.G.
http://salig.blog37.fc2.com/

SHOGO
http://salshogo.blog37.fc2.com/


共に旅をするパートナーのブログ
ばーちーの、ちるり旅
http://jstyle623.blog129.fc2.com/

最新日記

 → check my all posts

カテゴリ
本 (0)
UAE (4)
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最新コメント
SAL
検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。