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ノリシロ -マラソン後-

通り過ぎてきた42キロ

その時のスピード感とは全く違う
人の流れに任せて会場の中を歩いて行く

当たり前の動作としてではなく
自分の悪い癖みたいな感じで
足をかくかくと前に出している




頭はまだぼんやりとしていて
視界の端の方は白い靄がかかっている



幌で作られた通路を通っていくと
ある開かれた広場に出た

そこには沢山の椅子が並べられていて
人々がぐったりとした身体を労わって
でも何かをやり遂げたという活気に満ち溢れて
誰かと楽しそうに話している




そこを何となく見渡していると
サトがいるのが見えた
友達もいるのが見える

その子は身体はとても小さいが
ずっとバスケをしていたみたいで
身体を動かす事がすごい好きみたいで
いろいろなマッサージや
身体に関する知識を披露していた

友達は椅子に座って足を揉んでいる
サトはその隣に立ってその足を見て何かを喋っている



ここにいる人達はみんな通り抜けてきた人達

お疲れ様

まだ距離がある
声もまだ出しづらく心の中でとりあえず声を掛ける





近づいていくと
突然座るという動作を思い出して
急激に座りたくなってきた



向こうが気が付いてくれた
いろいろな労いの言葉をかけてくれる



お疲れ様
走りきったね



いろいろこっちも話しかけたいが
最初に飛び出した言葉は
やっぱりというか悲しいかな




疲れたぁ




ぐたぁとして
それを口に出したら身体がフニャフニャになって
実際疲れてはいたけれども
むしろ有り得ないくらい
でもまだ把握し切れていない頭は
どれだけ疲れているかを知らないはずなのに
とりあえずで口に出してしまっている

さっきまで何て言おうか一生懸命考えていたのに
結局出てきた言葉は疲れただった



サトが椅子を勧めてくれた
いや大丈夫だよ
って一応断る

だってあんなに走ったサトはぴんぴんして立っている
そんなんで座っていいのか


と思いつつ
頭の中は座りたいという思いで一杯だ
座ったらもう当分立てなくなるぞ
って言い聞かせてみてももうダメだ


座ってしまった





身体は重い
パンパンに膨らんでいた頭の中から見れば
随分と落ち着いてしまって
さっきまで飛び跳ねていた思考は
風が止まったみたいにゆっくりと下の方に溜まってきている

何かさっきからずっと
自分が地面の方にどんどん近づいていって
そのうちめり込んでしまうような
そんな錯覚に陥っている

しかもそれになかなか抵抗が出来ない




身体も思考も口も重たい




でも何か喋らなきゃ
このままじゃ目までつむってしまって
真っ暗な底無し沼に落ちていってしまう







当然のようにサトは驚異的なタイムを持って
フィニッシュしていた

あのまま走りきったみたいだ

口ではすごい疲れたと言っていたが
その顔は生き生きとしていて
身体も逆に嬉しそうに元気一杯に見える


隣で足を万遍なくマッサージしている小さい子はどうやら
途中のポイントでタイムを越えてしまい
何回も拒否したが
遂に車に乗せられてゴールポイントまで送られてしまったらしい



いつも一生懸命喋るその子は
すごい悔しそうにそれを伝えてくれた

確かに自分より早く帰っていた事にかなりビックリはしていたが
まさかのその答えを全く予想していなかった

そういう可能性をすっかり忘れていた


何て言うべきか全然出てこなかった

そして自分も充分その可能性があった事を
改めて思い返して
そして身震いがした
今当たり前のようにここにみんなで座っているが
そうはならないその可能性は五分五分だ

いや五分五分どころではない
今まで通ってきた道を考えると
いつそうなってもおかしくなかった

そしてそれが現実になったと想像したら
きっと今ここから見えている景色は全く違うんだろうか



彼女の目を通してそれを感じようとしたが
それは叶わなかった
けれども必死に伝えるその言葉の節々から
滲み出てくる悔しさは
充分に沁み込んできた






ランナー向けに設置された
マッサージテントでマッサージを受けた

前ほどではないが気になっている膝の症状を説明して
ベットの上に横になる

どうやら突然長い距離を走るとなるらしい
よくマラソンを走る人がなるそうな


そうかただ怠けていただけか
ちゃんと身体を鍛えなくちゃいけないんだな
日頃きちんと自分の身体は衰えていってしまっているんだ





横になるとその姿勢がとても新鮮で
走りきった後の
興奮の熱が冷めだして
空っぽの中に少しくすぶっている熱が

夢を見すぎた朝のような感覚にさせる


横で何か説明してくれているが
どうしても頭の中で響くだけで
そのままどこかにいってしまう





マッサージが終わって外に出る

さっきのウイニングロードとでも言うのか
その場所に行ってみんなの走ってくる所が急に見たくなった


何か自分が走っている時の
その感覚
情報
それを客観的に手助けしてくれるモノが欲しかった

そして
同じ所を通って
それをやり遂げる自分の仲間達の姿を
その幸せな瞬間を共有したかった






その広場を出ようとすると
タイムを計測するために靴に付けていたチップを回収する所があった
渡すとさっき沿道で見たTシャツとメダルを渡された

自分がやってきた事の証
それによって自分にもたらされた物

そういうのは今までの人生で余りなかったな
そういう事に気が付いた

今までそういう事に対して固執してこなかったし
多分そういうふうに思おうとしていたふしもありそうだ
そういう考えだったから
そうやって手に入れた物を
誇らしげにすぐ身に着けたり
これ見よがしに家に飾ったり
あんまり理解が出来なかった
というより自分はしないだろうな
って思っていた


でも今手の中にあるそれらの物は
確かに自分の成し遂げてきた証であり
自分のいろいろなモノ

時間や

精神的にも

身体の何分の一かをもぎ取って
ぶつけた結果手に入った物

言うなれば自分の分身みたいな物
そうなったらとても愛しくなってきて
絶対に離したくない物になって


そしてそのもぎ取った身体の一部分を
元に戻すように
すぐに身に着けた


そうしたらすぐに幸せが襲ってきて
満足感に包まれる







それを来てみんなのいる所へ向かう
向こうの方にみんなが見える

Tシャツとメダルを見て
お疲れ様
って言ってくれる

両手を挙げたりして
それに答えたりする

だんだん気分が高揚してきた



ふと横を見ると
疎らに数人のランナーが
多分ゴールをもう意識しながら走っている

そうか今自分がいる所はさっき自分が眺めていた沿道なんだ
そう思うと不思議な気がしてきた



友達によるとどうやらもう愛二は通り過ぎたみたいだ
最後は走ってきたみたいだ


しまった
なんでマッサージなんか

でももうどうしようもない
その貴重な瞬間はあとで会った時に取っておこう
てか最後はやっぱり走ったんだな
みんな考える事は一緒だな

お疲れ様
愛二




このマラソンには僕達の他にも
学校の友達で沢山の人が参加していた

その人達を待つ

カーブから人影が見える度に目を凝らす


沿道には他の学校の友達が
マイクとギター
さらにアンプとスピーカーまで持ってきて
知り合いが通ると歌を歌ってその背中を押している




暫くすると見覚えのある黒いTシャツが見えてきた
間違いない尚吾だ

走っている

結局みんな最後は走って終わろうとしたんだな
みんな見栄っ張りだな本当に
自分に厳しくて
求めていて


今回のマラソンは想像以上に大変な壁だった
それをやり切る瞬間がやってきたんだ
みんなでやり切ったんだ

自然に声が出る

尚吾は左手を挙げて答える

ここがゴールでないのが悔やまれる
でもいい
その顔を見れただけで

お疲れ様
尚吾





沿道で声を掛けていると
向こうからみんながTシャツを着てやってきた

みんなで歓声を上げて抱き合う
みんな笑顔だ
疲労感は活気によって温かく包まれる

みんなで一緒になると
長い間独りで戦ってきたみたいな
それがやっと一緒になったような安堵感がやってきて
みんなはずっと後ろ盾になっていて
一緒に走っているっていう事が背中を何回も押してくれた




さぁまだやってきていない友達がいる
沿道に乗り出して先を見る

みんなにその思いを
その感謝を
伝えなくちゃいけない




一人一人
道の先から

遠い遠い道を辿ってきてやってくる


前日の夜に明日のスタートの時間を電話で聞いてきた人
制限時間関係なく10時間くらいで道を辿ればいいやと思っていた人
前日のパーティーのノリで急に参加申し込みした人
直前にみんなで軽い調整の為に走った時に5キロくらいで足が痛くなった人


はっきり言って
本気で完走するつもり無いでしょ
何て言い合ってた
そんな人達が
しっかりと足を踏み出してやってくる


さっきの完走は叶わなかった子が
走り寄って手を取って併走している
一生懸命に声を張り上げて気持ちを盛り上げている

反対側の沿道からは
スピーカーで大きく張り上げた歌声が流れてくる



それはとても感動的な映像で
自分の通ってきた道のりの辛さの記憶とその映像が
さっきまで空っぽだった心に注ぎ込まれて
熱く膨れてくる

溢れそうになるその感情は
声となって
手を叩く事によって
吐き出されて


そうすると手を挙げて答えてくれたり
頷いてみてくれたり



そうやってみんながゴールという場所に集まってくる





最後の場所
やり切った

でもみんなとても清々しくて
何かこれでは終われないような
そういううずうずした感情が表情に見え隠れしていて

そういう感情からか
みんなは口を動かし続けて
話し続けて



マラソンは最後でも
これからまた歩んでいかなくてはいけない
その足を使って家まで歩いていかなくてはいけない




何かの塊として日々は捉えることが出来るけれども
そうやってそれぞれが終了を迎えたりするけれども
その塊が端と端を決めているだけで
その塊はただ自分が設定しているだけで

これからも足を前に出し続けていかなくてはいけないのは確かだ

でも何か塊として考えた
その端に辿り付いた時の感情
アップダウンの末の達成感

それは次へのノリシロになる
そしてその鍛えられた身体は次のステップを自分に見せてくれる



そうやって新しい事を経験して
自分と向き合って
落とし込んで

ぶつけていく



その繰り返しのトレーニング






さぁ次は何をしてやろうかな








でももうマラソンはいいかな

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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
    now : Quito ( Ecuador )
    latest update : 20120816
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