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誤魔化しの無い場所

20120215












理想郷の様な弓場農場







新鮮な食材達を弓場農場のお母さん達が美味しく料理する

角笛の合図に呼ばれて食堂の席に座れば
その豪華料理をたらふく食べる事が出来る

三食きっちり

しかもお皿を流し台に持っていけば
お母さん達が洗いまでしてくれる


僕達は食堂に戻ってお茶を飲んだり
夜だったらピンガと呼ばれる
サトウキビの発酵酒を飲む事だって出来る



それらが全部『タダ』で出来るのだ



食事も支給
お酒も支給
タバコまで支給

さらには生活する部屋まで支給される












天下の回りもの『お金』


資本主義と言わず、発明されてから人類の歴史上
社会というシステムを支え続けてきたモノが
表向きここには存在しない

そんな共同体が存在するのか
日本ではにわかに信じがたいが
実際僕達はここに10泊して一銭も使う事が無かった

『使わ無かった』

というよりも
もっと正確な表現があるとすれば

『使う場所が無かった』

といえる


全てはこのコミュニティの中で
生産と消費が順繰りに行われ
『お金』という中間媒体を必要としていない




生活する為に仕事をしてお金を手に入れ
そのお金で生活に必要な物を手に入れ
その生活を維持する為にまた仕事をする

社会とはその歯車の上に成り立っている


そのサイクルから僕達は
この共同体の中に入って抜け出した

一度抜け出すと
生活する上でいつもつきまとう
一つの大きな支柱『金銭感覚』という物を
知らず知らずの内に忘れ去ってしまう

少し大げさに言ってしまえば、子供の頃から教え込まれる
殆どの物はお金によって『価値』というモノを測られ
お金を手に入れる事によって欲しい物が手に入る
というこの『金銭感覚』から初めて開放される

人生で初めてのような身体の軽さを覚えたりする











理想郷の様な場所、弓場農場










ただ、『理想郷』であって『楽園』とは違う


楽しむだけの場所では無い
ここは人々が生活をしている場所で
あくまで社会の一部分である共同体なのだ

共同体の中では先の様な開放感があるけれども
全くもってこの場所が世界の社会と距離を置いて
存在している訳では無い


ここ弓場農場には本もあるしテレビもあるし
インターネットもある
社会との関係を断つ事無く
むしろしっかりとコネクションを持っている

子供達は勿論学校に行っているし
留学をしている人達も居る


その為にはやはりお金を必要とする
社会との関係を保つ為の中間媒体としてのお金



さらに云えば

共同体としてお金という中間媒体を必要としなくなったとしても
生活に必要な物は必要な物である

それは人が生を全うする為には
必要なサイクルシステム
何もしないで遊ぶ訳にはいかない





だから自分達で食べる物は頑張って作らなくてはいけない
自分達が生活する場は頑張って作らなくてはいけない

そして外との関係を保つ為の物を作らなくてはいけない


ここは楽園では無く理想を追求した『農園』なのだ



20120215 (1)











自分が出来る事を












ここには強制というものは無い

でもみんなが出来る事をそれぞれがこなしている
そうしてこの理想の農園を守っている


ある人はトウモロコシ畑を担当し
ある人はマンゴーを、そして米やオクラや

畑だけでは無い

それらの食物を社会へ出荷する為の
パッキングや運搬する人
勿論自分達用に料理をする人達

さらには弓場農場内のインフラだって
ソーラーシステムを作ってみたり家を建てたり


それぞれが役割分担をして
弓場農場という小さな社会を回している


僕達もその共同体に入った以上何か出来る事を
小さいながらも歯車の一つとしてやらなくては
いけないのである

強制では無いにしても
僕達には必要な事なのである



それにしても不思議な事に
ここに来てみると『何か遣りたい』という気分になるのである






ちょうど旅をしていて

『仕事をしたい』
『何かケジメになるような日々を送りたい』

と思っていたというのもある


常にダラダラした日々を送っていたつもりでは無いのだが
どうしても日本と向き合っていると
この旅の日々というのは何故か引け目を感じてしまうモノだ

そんな旅や旅人のイメージを払拭したい
というつもりではいつもいるのだがなかなか難しいモノだ



ただ、そうで無いにしても落ち着かないものである

何もしていないのに
ただ食事を食べさせて貰い、自由に好き勝手やって寝て
そしてまた新しい一日を迎えるなど
どんどんと肩身が狭くなって逆に辛いというモノだ


この感覚も、こびりついた『金銭感覚』によるものだろうか

『タダより高い物は無い』

物を手に入れるにはそのものの価値に対する
何かしらの対価が必要になる
その手段がお金であるという


でも、やはりそれは弓場農場である
お金はそこには存在しない

僕達はその代わりとして『労働力』を提供するのだ


20120215 (4)







勿論飛び入りの僕達だから専門知識を持っている訳では無い
農園の人達のお手伝いをするのだ
ようは小作人として農園に住み込みで働く
という形になる


農園の仕事を手伝う代わりに他の全ては支給する


というのが弓場農場と旅人の間に交わされる契約である










簡単に手伝うと書いたが
果たして農園の仕事は想像以上にキツイ


前もって聞いてはいたので十分覚悟してきたつもりだったが
初日に一気に体力を使い切り
心の中で、

「勇んでやってきたはいいもののこれが毎日続くのか、、
 あと、何日やればこれから開放されるのだろうか
 来たからには一ヶ月でも居たい何て言った手前
 すぐに出るなんて出来ないし、、」

なんて思いながらクワを振っていた


20120215 (2)





シーズンによって収穫するものは変わってくるので
仕事内容も当然変わってくるのだが
僕達が行った時はちょうど色々な物の収穫時期の境目だったらしく
殆どが『草刈り』だった

悲しいかな確かに重要な仕事であるにはあるが
とても地味でそして何より辛い仕事だった



トウモロコシやオクラや芋や
色んな畑の雑草取りをした


もう見事な直射日光の元
汗だくになりながらの作業

こんな大層な作業をして
嵐なんかがやってきて一気にもっていかれたら
確かに愕然としてしまうよな

農家の人達の苦労を身に染みて感じるのである






仕事はまだ日が昇る前から始まる
何故ならその体力を奪っていく太陽の光をなるべく避ける為だ

朝の6時



20120215 (3)



農場中に響きわたる角笛の音が聞こえる
朝食の合図だ


まだ朝日にも染まりきっていない暗さの中
みんながゾロゾロ食堂に集まる

そこにはご飯に味噌汁にちょっとしたおかず
和食だけではなくて
パンも手作りジャムもヨーグルトもある


それを食べ終わって少し一息、とはいかない
みんな作業着に着替えて食堂の前に集合する

するとその日の仕事が割り振られる
男共は大概トラクターの後ろにくくりつけられた
荷台に乗り込む事になる

クワやら水筒やら必要な物を積み込んで
ガタガタと目的地の畑に向かう


そこからはひたすら作業だ


振り上げたクワに付いてきた土が目に入ろうが
クワを握る手にマメが出来ようが
直射日光が降り注いで真っ黒になろうが

前に進み続けなくてはいけない


実際はそんなスパルタでは無いし
調子が悪かったら勿論休んでもいいのだけれども
何だか久しぶりの労働で肩に力が入るものだ



朝の7時くらいから
12時の昼食休み一時間を挟んで
夕方の4時くらいまで

僕達はみっちり働く










でも、



20120215 (5)




それだけ汗を流したあとの



20120215 (6)




食事はやっぱり最高に美味しい









何も知らないに等しかった農業の事

オクラがどんなふうにして生っているのか
そんな事想像した事もなかった

作業を通して色んな事を知る

その知った物達が食卓に載ってくる
今まで当たり前の様に見ていた
様々な食材達が違ったふうに見えるモノだ







植物だけではない



ある日には僕達は豚の解体を見る機会があった

豚小屋は普段みんなが行かない建物の裏の方にある

折角だから見てきたらいい
教えられて向かうと一匹の豚が出されていて
本当に悲鳴の様な鳴き声を上げている

周りの豚も今から何が起こるのか分かっているようで
大声を上げている


20120215 (7)



「大丈夫、彼は豚の解体のプロだから
 豚も苦しまないよ
 下手な人がやったら何度もナイフを刺さなきゃいけなくて
 すごく苦しんで大変な悲鳴を上げる
 あの悲鳴を聞くのは本当に辛い」


そう豚小屋の前で見ている僕達に教えてくれる
言い終わらない内にナイフは豚の心臓を突く


あっという間の出来事だった
暴れる豚の合間を縫う神業

豚の悲鳴は明らかにその瞬間変わった
力みまくっていた声はすっとその力を無くし
すーっと鳴き声が消えていく

見てみると心臓から血がまさに吹き出して
地面を赤く染めていく

豚は足に力が入らないのかフラフラして壁にぶつかる
そして最後には自分の血に滑って倒れ込む
顔を赤い地面に押しつけ

「これは何だ?」

という感じで自分の血を舐める

そうしてだんだんその目を閉じて
動かなくなってしまった


20120215 (8)






すぐに解体場へ連れていかれ
手際良く裁かれていく


20120215 (9)



さっきの言葉がよみがえってくる

「豚は苦しまない
 彼はプロだ」

変な動物愛護の生易しい言葉には聞こえない
実感を持って、彼が苦しまないで良かった
そう感じた


あっという間に僕達のいつも見られる
肉屋さんでみる形に分けられていく


20120215 (10)





そうしてその日の夕食や次の日の食事に
その肉が食卓に載ってくるのだ




20120215 (11)














自然、


『頂きます』


という言葉にも力がこもる




黙祷にも想いを馳せる




そして



汗水出し切った身体中に
彼等が染み込んでいく



















これが弓場農場のサイクル




そして、

社会ではお金に隠される事がある
生きるというサイクルの生が見れる場所



理想郷というよりも


もしかしたら


誤魔化しの無い場所


というべきかもしれない





20120215 (12)











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非公開コメント

うはー

ブログUPしすぎ!そんなブログ書く暇あったら
観光するか移動しなさい。

Re: うはー

> salig

移動したら書く事増えちゃうじゃん!
このぉ、そっちこそいっちょ前に慈善活動しちゃって。俺もやるかんね!
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Profile
    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
    now : Quito ( Ecuador )
    latest update : 20120816
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