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3380-クライミング2日目-

20120301







ベースキャンプ前のキャンプ地コンフルエンシア



ここを通る登山者は必ず入山許可証のチェックと
常駐の医師によるメディカルチェックを受ける事になっている

前日に一般的な人達よりもずーーっと到着が遅かった僕達は
医師に翌日の朝にメディカルチェックを受けるように言われた
その時刻朝8時


ちなみに今日のトレッキング予定は
今登山中一番距離が長いというベースキャンプまでの20キロ弱

昨日のトレッキングよりも距離が長く
そして最後に『勇敢な谷』という名がついた
如何にも辛そうな急斜面を登る


初日の一番勢いがある時に見事に自信を打ち砕かれた僕達は
完全にビビって朝一で出発しようとしているので
メディカルチェック後にすぐに出発出来るように
朝6時起床して朝食を済ませ
パッキングもある程度済ませておく

だって昨日の登山口からここコンフルエンシアまでの
平均所要時間というのが4時間というところを
僕達は8時間かかったのだ

そしてこれから行こうとしているBCまでは
平均所要時間8時間という
果たして僕達は何時間かかるだろうか



20120301 (1)


















、、と、云う僕達の緊張と不安

なにものもこれを解消する事が無いと思っていたが
なんと医師によって解消された



勿論彼の『治療』によるものでは無い

もし治療であれば
僕達の自信まで雲散霧消する事など無かった



















医師は終始険しい顔をしていた


表情が緩む時があるとすれば
それは苦笑いする時だけだ






まず昨日の経過を説明するのだが
平均の倍以上の時間がかかった事実を相当重く受け止めている

言い訳になるしかないのは分かっていたのだが
やはり荷物が重いという事は自業自得であって
どちらにしろ彼の心配の種は順調に育っている


「君達、経験も無く、そしてこの状況だよ
 ここからBCまでは昨日よりも距離が長くて辛い」


それでも行くのだ、

自信はすでに全く消え失せてはいるのだが
そうバカの一つ覚えの様にただ僕達は繰り返す


「ここから進路を北東にとるとフランシアという山がある
 そこからはアコンカグアの有名な南東壁を見る事が出来るし
 そこも4000m以上はあるから十分楽しい登山になるぞ」


ここで進路変更?
アコンカグア断念?

いや、まさか!?
プライドはすっかりズタズタだけれども
意地だけはまだ巣食っているらしい


「でもねぇ。。」


医師は本当に困り顔だ
とりあえず、という感じである機器を取り出した
指先にはめて血液の水分量をチェックするものらしい

まずは愛二がはめる


ピピピ、、


という音
ただでさえ険しい医師の顔が更に深みを増す

どうやら本来すぐに数値が表示される筈の液晶盤に
エラー表記が出るらしい
僕達の心拍数は一気にあがる


医師は機器をこすってみたり愛二の手をこすってみたり
機器の電池を変えてみたり最終的には機器を予備のに変えたり
色々試してみてようやく数値が表示される




83




「ウーム、、」

次は僕の番
無言で医師は僕を手招きする





86




「ウーム、、」


医師は口を開いた


「今日はここにもう一泊しなさい
 ここから先に行く事は私が許可しません」






















なにーーー!!!








話によればこの数値が90以上ないと
先に進められないという


そんな馬鹿な!

絶対に僕達を先に進めない為の口実だ!!

いや、確かに自分達自身、心配な面は多々あるけれども
ほぼ有志で受けているような印象のこのメディカルチェックで
ボクシングみたいなドクターストップが存在するなんて信じられない






しかし、医師はなおも僕達を追い詰める



「君達、昨日水をどれだけ持ってきた」


事前にネットや登山レンタル用具店の人に言われた通り
一人4リットルの水を担いできてきた

登山では気が付かない内にどんどん身体の水分量が失われてしまうので
沢山水を飲まなくてはいけないという
特にアコンカグアは乾燥地帯にあるので余計らしい
それが一日4リットルという数字


「一人4リットル持ってきました」


久し振りに堂々と言える、という感じで
誇らしげに喋る


「それで、どれだけ摂取した?」


ん、、
えー、、

実際1リットル程しか登山中
僕達は結局摂取していなかった


「それじゃダメだ、全然ダメ」


また思いっ切りカウンターパンチ
もうこちらはボロボロである

ドクターストップかけた医師自身が
なぜ僕達をここまでおとしめるのであろうか
もう泣いてしまいたい























結局僕達はコンフルエンシアにもう一泊
する事になってしまった

ただでさえ素人であるので上に行くまでに時間が掛かってしまう
天候が安定しない今
アタックの予備日を余計に取っておきたい中での
この仕打ちはなかなか僕達には堪えた

いやむしろ、このまま登山を進められるかも怪しい


今日中、身体を安めると同時に柔軟や体操をし
そして兎に角水を飲みまくる事

そうして夜にもう一度血液中の水分量をチェックして
それからまた次の判断をするという








トボトボとレンジャー室からパッキング途中の
僕達のテントの元に向かう

空っぽのテントにくしゃっとした僕達の荷物は
余計に僕達の悲しさを助長する



何だかぼーっとする感じ

たった一日だけだけれども初めての登山が始まったという緊張感と
想像以上の体力的疲労が僕達に急に睡魔を起こさせる



昨晩のいつ振りか記憶に無いくらい久し振りのテント泊
十分に寝れたというには程遠い

今やっと太陽が山の上に顔を出して熱を身体に与え出している
僕達は半分ヤケもあったかもしれない
仕舞った寝袋にマットを出して再び寝る事にした



20120301 (4)





































夜は寒くて寝れないテントであるが
昼は逆に熱を思いっ切り太陽から貯めてしまって
熱くて仕方が無くなる

昼前にのそのそ起きだすと汗びっしょりだ



昨日使用した既にトンデモ無い異臭を放っている
靴下を持って外に出る

コンフルエンシアには山を水を引いた場所があって
そこで水を汲む事が出来る
という事は洗濯も出来てしまう

乾燥しているという事と日差しが強い事も相まって
あっという間に一時間もせず乾いた



20120301 (5)








ちなみに水汲み場近くには粋にもベンチとテーブルがあって
僕達はそこで昼食を作ってのんびりする事にした

まだまだ今回の登山行の食事に慣れていない僕達
昨日の夕食は本当に酷かった
だってなんと僕達、塩を持ってくるのを忘れたのだ


塩なんてどんな料理にも欠かせない
いや美味しいどうこうの前に
ナトリウムは摂取しなくてはいけないミネラルである

それをこの先厳しい登山を二週間も塩無しで続けるなんて
素人の僕達でい垢?剖蜘海靴浸�造任△?

そりゃあ医師にボロクソ言われてしまう

と云っても今更取りに帰る訳にはいかない
僕達は試行錯誤をして今ある食材で
やりくりしなくてはいけないのである


という訳で後半の登山の為に残しておこうと思っていた
コンソメを早くも使用する事に

ただのコンソメパスタなのだが
前日の夕食と今日の朝食が不味過ぎたのだろう
相当美味しく感じられてしまった

きっと山にはまったら
食事にお金がかからなくていいだろうな
下界の食事がどんなものでも美味しく感じられてしまうだろう



20120301 (7)











食事が済むと今度は身体を動かしてみようという事になる

半日身体を動かしていないだけで
すっかり重たく感じる

明日の予行練習という事で
昨日の半分くらいの荷物をリュックに詰めて
目の前の丘を登ってみる



いや、辛い

すぐが切れてしまう



何だか、もう自信を維持する気ももう起きないらしい
スグに二人して弱音を吐く

ただ、丘の上からの景色は
10分ちょっとで登ってみた割りにはなかなか眺めが良くて
僕達の山への意欲を留めるのに充分だった



20120301 (3)





















丘を降りてまたベンチにてくつろぐ

さて何をしようか
昨日までテントを張っていた数組は
既に出発していて誰も居ない

暇を持て余すようにしてベンチで日向ぼっこ
一体僕達はここに何しにきたのだろうか
なんて事は考えてはいけない筈だが
どうしても考えずにはいられない



ふと、一人誰かが歩み寄ってくる
大きな荷物を持っても切れ切れ

どうやら上から降りてきた人らしい


「上は天気が悪くてね、アタック断念して降りてきたよ
 次の機会かな」


もう自分の中で沢山の時間を悔しさに充てて
納得の出来る答えを探したのだろう
その言葉には妙にサバサバした印象が強く押し込まれているようだった





程無くしてまた一人がやってきた


「アタック挑戦したんだけどね、上は強風でダメだった
 すごいぞ上の風は、風100mはある」


もともと人懐っこい、友達の多そうな人だが
が大きく切れてしまって身体が辛そうだ
もっとゆっくり話してもいいというのに


「いや、本当はBCから一気に登山口に降りて
 今日中にバスにのってメンドーサに戻ろうと思っているんだけどさ
 すっかり寝坊してしまって、、」


登山口からメンドーサに戻るバスは一日に3本しか無い
しかも最終便は登山口に停らず3キロ先の町にしか停らない

それはつまりやっとこさ登山口に帰りついても
そこからさらに道路を歩いていかなくてはいけない
という事になってしまう


この時間に彼はここにいるという事は
間違い無く彼は最終便のバスになってしまう
いやむしろその最終便も
道路を歩いているうちに抜かされてしまうかもしれない

彼はそれを理解しているようだが
何故かここから急ごうとしない
何よりも相当疲れている


彼の姿は僕にはとても興味深く写った
将来の自分の姿を投影しているのだろうか

失敗したとしても初めてアタックに挑戦した人間に出会う事が出来た
そして彼は今、長い日々と道中を経てこうして僕達の目の前にいる

登山が好きと自ら言う彼が心身共にかなり疲れているのだ


すっかり緩んでいた僕の心は
一気に引き締められる感じがした
























夜のメディカルチェックの時間がやっとやってきて
僕達は緊張の面持ちで向かった

さあ、という感じで彼は例の機器を取り出す

例によってまた反応が悪くて
ピピピという音を鳴らす




95




愛二が安堵の表情を
次は僕の番

ピピピという音と共にすぐに表示された数字





89





、、89!!
まずい!

いや、1くらいならさすがに勘弁してくれるんじゃないのか
しかしこの医師の事だからやっぱり厳しい事を
言ってくるかもしれない

そんな事を一瞬で考えていると
なんと数字が変化していく






、、90、、





、、91、、

















無事に僕達はハードルをクリアして
医師の通行許可を得る事が出来た

それにしてもこの数字の変化は不思議だった
どうもこの医師が操作しているのじゃないかと
思えて仕方が無かった



ただ、この医師

僕達が無事に数字をクリアしても
やっぱり安心した表情は見せてくれない

荷物のチェックだの
やっぱりまずはフランシアに登ってから考えた方がいいだの

と言ってくる


僕達を心配して言ってくれているのは勿論
承知ではあるのだが



医師はレンジャー室に僕達を連れていった
そこにはレンジャーの他に
今日トレッキングで登ってきた女の子達4人組が
楽しそうに笑い合っていた

屈強のレンジャー達も男達である
やはり僕達と女の子では扱いが違うのは仕方無いか





その暖かな輪の中に白ひげをすっかり蓄えた
仙人のような人が居て医師がその人に何事かを聞く

どうやらここの登山者をサポートする企業の人らしい
その人にロバの手配を頼んでいる





他の山にもある事だがアコンカグアには
登山口からBCまでロバで荷物を運ぶというサービスがある

僕達も最初はそのサービスを使うつもりだったが
準備がバタバタしてしまって後回しにしてしまったら
手配出来なかったのだ

「男なら何の手伝い無く登るのだ!」

なんて言い訳じみて言い聞かせていたが
昨日の限界越えの登山行にすっかりネをあげてしまって
ロバをここで手配出来るならしようという事になった



20120301 (6)






が、





なんともそのロバが高いのなんの
一日60キロからで125USドルという事


くそー!足元みやがってー!!


勿論そんな大金持っている訳も無く僕達はロバを諦め
また素人らしくガチンコで明日勝負する事にした
















やはりレンジャー室から自分達のテントまで
トボトボと歩いて行くと後ろから医師が声を掛けてくる


「本当に行くのかい?」


さすがに同情の色が見える表情
僕達の返事は勿論イエスだ

どうであっても、そうでしかない


「気を付けなよ
 グッドラック」


色々とやりあっただけに
最後のグッドラックのセリフは
十分心に沁みるモノだった



20120301 (2)

























アコンカグア登攀2日目
コンフルエンシア (Confluencia) : 3380m , stay


aconcagua2.jpg




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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
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