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4370-クライミング7日目-

20120306













いつも寝起きの描写から始まる
このアコンカグアのブログ

実際は就寝時間中も僕達は戦っている





よく高所では寝付きが悪くなるというが
それは事実である


原因は枕が替わる、というか無い
というのもあるかもしれないが
やはり一番はその寒さである

マットを敷きその上に
マイナス30度は大丈夫という分厚い寝袋にくるまっているのだが
それだって地面からヒタヒタと迫ってくる冷気には
完全に逃れる事は出来ない

初めは疲れですっと寝てしまうがスグに身震いで目が覚める
ライトを付けて時計を確認すると一時間程しか経っていない
そのうち時計を確認するのもやめてしまうが
それでも何度も何度も目が覚めて寝返りを打つ

寝返りを打つのは寒さだけではなくて
固い地面のせいもあるかもしれない


そうして延々もぞもぞやっている
そのうち『いつかのタイミングにか寝入って時間が経っているに違いない』
と思って時計を確認するもキッチリ寝返りを打った回数×一時間
しか経っていない

すっかり狼狽してしまうが
十分に疲れて沢山休みたい筈なのに
早く朝が来て欲しいと願っている自分を発見して
ビックリしてしまうのだ

だって、足は確かに休めているかもしれないが
全体的には寝て起きての繰り返しは非常に疲れる




そうして朝まで格闘し続ける



では、何故寝坊してしまうのか
それは朝になってようやく太陽が顔を出してきて
ちょっとずつ暖かみを与えてくれるようになるからである

やっと温もりを感じながら寝れそうになるからである


なのに山は早朝に出発しなくてはいけない
そりゃあ歩いている最中につい寝てしまいたくもなる


こんな非効率な事を
山では日々繰り返していかなくてはいけない
疲れは溜まっていく一方だ




















さて三度目にもなるベースキャンプでのテント泊


もう慣れてきていい頃合である
確かに僕は朝の5時半に起床する事が出来た

が、それはどちらかと云えば
今までで最悪の結果であった




昨晩の事だが今までに無い強風が吹き荒れた
冗談抜きで台風並みであった

この日の天候に由ったのか
はたまたこのベースキャンプの場所の特性なのか
兎に角テントは常に形を歪め隙間風が奇妙な音を立てる

寝れたものでは無かった

しかも合間合間に雨も吹き荒れる
今日に限って荷物を無造作に置いてしまっていた事が
僕の脳裏を占拠して一向に離れない

我慢できずに外に飛び出して
大きな石をリュックの上におもしとして置く
それでも頭は心配で仕方無い


 荷物は吹き飛ばないだろうか
 リュックはビショビショに濡れてしまわないだろうか
 テントは風速何mまでもつのだろうか


みなさんも経験がおありでしょうが
寝床に横になった状態で一度思考に捕われてしまったら
それは時間が経てば経つほど
収まるどころか勢いを増していってしまう



いつもの寝返り地獄に暴走する思考にもとりつかれて
僕は5時半に朦朧としながら起きたのだ

















しかし結果としてはよかったのかもしれない

何故なら僕達は今日
かなり攻め気なプランを立てていたからだ


行ったり来たりしたここベースキャンプ(Plaza de Mulas:4370m)を遂に離れ
残っていた半分の荷物をキャンプカナダ(Camp Canada:5050m)まで上げる
そして今度はさらに上のニド(Nido de Condores:5570m)へ半分荷物を上げ
キャンプカナダまで降りてきて泊


何度かの寝坊の為にシワ寄せがきた
強行スケジュール
いつもなら逃げるようにふて寝してしまう所だが
幸いにも早朝に起きれた訳である












朝一からすっかり疲れきった感じでパッキング
テントを畳んでいると仙人が別れを告げにやってきた


「僕はこれからコンフルエンシアに降りる
 君達の安全と幸運を祈っているよ」


昨日初めてフランス隊のロベルトに聞いた事があるのだが
実はシーズン中、山に篭っている企業やレンジャー達は
来週3月15日をもって全て撤収するというのだ





完全撤収





ガツンと響く言葉

企業ならいざしらず、なんとレンジャー達まで居なくなるという
別に登山者達はそれ以前に立ち去らなくてはいけないという訳はないそうだが
(それもスゴイ話だが)
その代わりに何が起こっても誰も助けてくれませんよ
という事である

これは完全素人の僕達にはまさに死活問題である


というか、今ここで知った事に愕然とする


たまたまロベルトや仙人に会って教えてくれたからいいものを
下手したら何も知らないままプランを立て上に登っていた事になる
(というか知らないままベースキャンプまでは登ってきていた)

そういうのもあって
僕達は今日は何としても強行軍を敢行しなくてはいけないのだった














仙人が立ち去って少しするとまた声を掛けてくる人がいた
しかも日本語である


「今日出発ですよね?
 沢山お菓子の余りがあるからよかったらどうぞ」


サンタクロースの様に
お菓子がびっちり詰まった大きな袋を背中に背負い
やって来たのは水田監督だ
























誰?






と、言うなかれこの御人はかの早稲田大学山岳部の監督である
(ちなみに日本人隊で初めてアコンカグアに登頂したのは
 早稲田大学山岳部である)

アコンカグア遠征に来ている所であった


部員達は今まさに頂上アタックをしている所だという
監督はベースキャンプにて天候の具合などをチェックして
連絡している所に僕達が乗り込んできたのだ




監督自身も昔にアコンカグアに登頂した事があるという
れっきとした登山家である

昨日初めて会ってお話をしたのだが
少し話していてドギマギしている自分がいるのに気が付いた

何故かと云えば
僕はこれが人生で初めて『登山家』と云われる日本人と
顔を合わせて会話したからである



それに気が付くと質問したい事がそれこそ山ほどあって
そんな自分を自制するのが大変だった
だってどう考えても監督と会話するには僕達は素人すぎる

監督を狼狽させたのは間違い無いだろう
ただただ恐縮の一言である



しかも聞いてみれば有名山岳部であろうとも
そうやすやすと海外遠征は出来ないという

この遠征も4年振りだったそうだ


日々から山に時間とお金を掛け
辛いトレーニングにも耐え
多く無いチャンスをやっと掴み取り
はるばる日本から大きな期待と緊張を抱いてやってきた
山岳部の部員達

そんな可愛い部員達を見守っている最中に
やってきた完全勢いだけ素人の僕達


「今、旅をしていて
 途中たまたま出会った人が登ったのを聞いてやって来ました
 高所登山ですか?
 いえ、本格的な登山は初めてです」


なんて言ってみなさい
監督でなくてもきっと登山家はみんな怒り狂うだろう


それなのに監督は僕達が出発する前
部員達用に大量に持ってきたカロリーメイト等の行動食を
僕達の為に持ってきてくれたのだ

監督の心中は全く穏やかであったとは云えないだろうが
それでも広い心と全くもって大人の対応をして頂いた

さすがという他は無い
このようなお方が、やはり監督という職につくのであろう














恐縮しながらも懐かしい日本のお菓子に色めきたつ
いくつかを拝借して水田監督に御礼を述べ
僕達は遂にベースキャンプをあとにする


20120306 (2)














昨日、初のプラスチックブーツで
見事に足のかかとに出来たマメが非常に痛んだが
それでも昨日よりは軽い荷物のおかげで
少し早くキャンプカナダに到着

すぐに荷物をパッキングしなおして上のニドに向かおうとしていると
日焼け止めクリームを顔に塗りたくった背の高い男が話し掛けてきた

今日はよく話し掛けられる


「聞いた話なんだが3日前
 ここに荷物を置いていった人が盗難にあったんだって
 リュックもナイフで切られて中身を盗られてたとか
 君達も気を付けて」


それだけ言うと立ち去っていった
僕達は顔を見合わせる










盗難!?









今まで愛二と二人でよく話していた事がある


「こんな山で盗難なんてある訳無いよな
 だって盗ったら荷物、余計に重くなっちゃし」


笑って言っていたけどよく考えたら有り得ない話じゃない
特に食料は別だ



頂上アタックをするにはまず天候の善し悪しで
可能かどうかが変わってくる
そしてご存知山の天気は変わりやすい

その最たるが頂上であって
アコンカグアの頂上は周辺で一番高いのだから
それはつまり風の吹きさらしにあっているので余計である

その為に登山者はスケジュールの中に『予備日』を設ける
そしてその為の余裕を持った食料を持って行く


だが天候は本当に運である
予備日を使い果たしてしまう事もある
そうすると、


折角ここまで登ったんだから挑戦したい


となるのは仕方無い、それが人というものだろう

食料の事よりもそっちを優先してしまう人だって
それは中にはいるだろう

餓死する訳にはいかないから
確かに『食料を少し拝借』なんて人がいても
おかしくはないかもしれない

















だが、


だからといってどうしたらいいのか
注意といったってこんな標高5000mにコインロッカーなど
ある訳がないだろうに

それにこの荷物を一度に持って行くなど
僕達には既にその選択肢は無い

さらにはコンフルエンシアにもベースキャンプにも
僕達は既にそこに荷物を置いてきてしまっている


という事で僕達は予定を変更する事無く
半分の荷物をキャンプカナダに置いて上がる事にした
盗られたらその時は天気と一緒、運が無かったという事だ



























ずっとベースキャンプから見えていた山の稜線
空との境界線


いつもあそこから人影がポツっと小さく現れて
斜面を下ってくるのを見ていた
逆にフッと消えていく米粒の様な人影も見ていた

キャンプカナダに来てもまだその境界線は遥か上の方に見える
しかしその手前に他のキャンプサイトが見当たらない
という事はあの稜線と空との間を通って行かなくてはいけないのだ




程なく休憩して僕達は登り出した

その『空』に向かって


20120306 (1)
























空へ向かって登る


幻想的な言葉であるが
崇高なものの為には大きな代償が必要なように
この行程は大変なモノだった

ベースキャンプからキャンプカナダまでの傾斜を遥かに凌ぐ傾斜
そして全く縮まらない距離感




空はやっぱり空だ




気が付く、

空とは、どんなに背伸びをしても僕はちっぽけな存在であるというのを
分からせる為にいつも同じ様に頭上にあるのではないか




例によって肩で息をする

けれどもその肩は重たい荷物によって押しつぶされているから
どうも上手く呼吸ができなくてどんどん辛くなって
立ち止まって座り込んで荷物を放り出したくなるのだ



30分以上も後になってキャンプカナダを出発した例のカップル
そしてさらに後になって出発した日焼け止めの男

彼等はゆっくりゆっくり一歩を踏みしめて歩いてくるというのに
グングンと迫ってきてあっという間に僕達を抜かして行った

動揺を隠す余裕も無く
そしてそれに対処する余裕すらも無い

順調に歩を進め
やはり小さな点となって空に消えていく彼等を
僕達は地べたにうずくまりながら呆然と見上た
























進んではすぐに止まり
思い直して足を前に出してみるもやはりすぐに崩れ落ちる

そんなのを繰り返してやっと『境界線』に辿り着いた


境界線は直前まで境界線だった
それくらい傾斜に差があったみたいだ

ここの場所は後で知ったがスペイン語でそのまま
『傾斜の変わる場所』と呼ばれているらしい


つまりここは全くもって目的地では無かったのである
むしろ中間地点にも達していなかった

境界線を乗り越えると
いきなり目の前に大きな空間が広がって
遥か先に小高い丘の様なモノが見えた

随分と前にここを通り抜けていた筈のカップルと日焼け止め男は
すぐ右の大きな空間を迂回する道を歩いている



へこたれそうになるのだが
いや、もしかしたらあの迂回路を通らず
今真っ直ぐに突き進めば遅れを取り戻せるではないのか

相手と比較する事で救われようという何とも卑屈な考えだが
兎にも角にもどんな理由であろうとも
今止まってしまいそうな足を前に出す必要があった







しかし、何故迂回路があるのか
僕達よりも明らかに経験値が多い彼等が遠回りをしているのか

その理由について考察する余裕は無かった



そして僕達は右の迂回路を順調に進んでいく彼等を横目に
這いつくばるようにして歩く事になった

誰も通る人がいないと見えて足場は悪く
そして最悪な事に遠目に見えていた丘は
近くに来ると『勇敢な谷』をもしのぐ峠であったのだ




右の迂回路は徐々に高度を上げていって
最終的には大きな傾斜を経験する事無く峠の上に入り込んでいる

僕達は峠の足元から一気に登らなくてはいけない


最後にこの仕打ちは相当に堪える


いつもこの最後の仕打ちで
僕達は思いっ切り時間をロスするのである
まあ、自業自得なのであるが


















僕達がニドに着いた頃にはすっかり日は暮れる時間だった
しかし最高の景色が僕達を待ってくれていた

今まで日の入りと云えば
太陽は山の向こう側に隠れてしまうばかりだった
でもここニドまでやってくると
そう、もう隠れる山々は僕達よりも下にあるのだ


20120306 (3)




向こう側に真っ赤になった空が見え
目線と同じ高さに雲が立ち上がって
さながら炎のようだった

何時振りだろうか夕日を見たのは



振り返ると美しいと有名なアコンカグアの南東壁が
それも燃え上がるように染まっていた

無事に今日の強行スケジュールのピークを乗り切った僕達に
アコンカグアがご褒美をくれたようだ



20120306 (4)

























アコンカグア登攀7日日
ベースキャンプ (Plaza de Mulas) : 4370m - キャンプカナダ (Camp Canada) : 5050m , 3.5 hours
キャンプカナダ (Camp Canada) : 5050m - ニドコンドレス (Nido de Condores) : 5570m , 4 hours
ニドコンドレス (Nido de Condores) : 5570m - キャンプカナダ (Camp Canada) : 5050m , 1 hours



aconcagua7.jpg







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No title

出た監督!!盗難なんてあるんだ!!なんかショックだな。
あかーーーいーー夕日☆

Re: No title

> tsubasa
やっとこさブログがかけてるんだが、きっと監督は読んでくれていないんだろうなあ。。
盗難あるんだってさ、ひどいよね。こっちは満身創痍だってのに。
そして夕日は、この写真、非現実的に赤いんだけどさ、実際もほんとこんな感じなのよ!

長いよ

読みきるのが大変だ。

俺も書いたらこんなんになるんかなぁ?

Re: 長いよ

> salig
長いのは今に始まった事では無い。
だからこそ読者が減っていくのだ、きっと。
でもね、なんだかアコンカグア登山記はごまかせん。。
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    ふらふら何処かへ酒飲んで本読んで人と話してぼーっとして海に入って空飛んでバスに乗ってまたふらふら何処かへ、、何処へ?うーん。。とりあえずの試行錯誤継続鍛錬。

    2009年5月、日本を後にし、ゆっくりだけどそのうち加速予定。

    未熟ながらもなんとか自分の言葉で世界を書き起こしたい。ただいまその道中。


    name : LAN
    now : Quito ( Ecuador )
    latest update : 20120816
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